目次
結論:化石燃料依存はなお高く、地政学・AIの影響でエネルギー不安が加速
2025年現在でも世界のエネルギーの8割以上が石油・天然ガス・石炭などの化石燃料に依存しています。
中東のホルムズ海峡が封鎖されれば、世界の石油供給の25%が止まるというリスクも現実味を帯びており、イランとイスラエルの衝突はエネルギー安全保障の核心的な問題です。
さらに、新たな要因として生成AI(大規模言語モデル)による電力需要の急増がエネルギー問題を複雑にしています。
1. 世界のエネルギー消費の構造:化石燃料が依然8割超
世界的には再生可能エネルギーが注目されているものの、2023年時点でエネルギー消費における化石燃料の比率は81.5%。過去最高の水準を更新し続けています。
エネルギー源別の構成比(2023年)
エネルギー源 | 比率(約) |
---|---|
石油 | 32% |
石炭 | 27% |
天然ガス | 23% |
原子力・水力・再エネ | 約18% |
中国・インドなど新興国の経済成長がエネルギー需要を押し上げており、再エネの拡大以上に化石燃料の消費が拡大しています。
2. 化石燃料の基礎知識:採掘から消費まで
石油
- 地下の油田から採掘
- パイプラインやタンカーで港へ輸送
- 精製所でガソリン・軽油・ナフサなどに分離
- 世界消費量の25%がホルムズ海峡を経由
天然ガス
- 同様に地下から採掘、主に火力発電に使用
- 液化天然ガス(LNG)にして輸送可能(−162℃)
- 日本を含む多くの国がLNG輸入に依存
石炭
- 火力発電と製鉄の原料として利用
- 特に中国が世界の石炭生産・消費の半分以上を占有
- 世界の発電の1/3は石炭によるもの
3. 生産国と消費国の分布:アメリカと中国が中心
石油
- 生産:1位アメリカ、2位サウジアラビア、3位ロシア
- 消費:1位アメリカ、2位中国、3位インド
- アメリカはシェール革命で世界最大の産油国に
天然ガス
- 生産:1位アメリカ、2位ロシア、3位イラン
- 消費:アメリカ、ロシア、中国
- ロシア産ガスは制裁で欧州依存が減少、アジアにシフト
石炭
- 生産・消費ともに圧倒的に中国がトップ(世界の5割以上)
- 安価かつ安定供給が可能なため依然として重要
4. ホルムズ海峡:中東エネルギーの命綱
- ペルシャ湾の出口に位置し、世界の石油の25%がここを通過
- イランはホルムズ海峡の北に位置し、封鎖を示唆するたびに価格が急騰
- 近年は「イランに封鎖能力はない」との見方もあるが、リスクの象徴的存在
5. 歴史的背景:1973年オイルショックから学ぶ
- 第4次中東戦争によりOPECが減産
- 世界的な石油価格の急騰と供給ショック
- 現代のOPECの影響力は当時ほどではないが、依然として価格調整には影響力あり
6. 地球温暖化とエネルギー:気候変動というもう一つの危機
- IPCCによると地球温暖化の主因は化石燃料の燃焼
- それでも現実には国益と経済が優先され、脱炭素は進みにくい
7. 日本のエネルギー事情:輸入依存度9割という脆弱性
エネルギー源 | 一次供給割合(日本) |
---|---|
石油 | 36% |
石炭 | 26% |
天然ガス | 22% |
再エネ・原子力 | 16% |
- 一次エネルギーの9割を輸入
- 為替(円安)や国際価格の上昇がダイレクトに影響
- 原子力再稼働や新設も進まず、長期的な課題は未解決
8. 生成AIと電力需要:エネルギー消費を押し上げる新たな要因
- AIモデルの学習・運用には膨大な電力
- IEA(国際エネルギー機関)によると、
- 2030年にはデータセンターの消費電力が945TWh
- 日本全体の電力消費を上回る水準
- GPUの消費電力は年間30%の増加
生成AIは技術革新の象徴であると同時に、新たなエネルギー課題の火種でもあります。
最後に:世界は「安定供給」と「脱炭素」の間で揺れている
2025年の現在、エネルギーは依然として化石燃料に依存しています。その一方で、生成AIの急拡大や中東リスク、気候変動問題など、これまでになかった要素が複雑に絡み合い、エネルギー政策は極めて難しいかじ取りを求められています。
日本のような資源輸入国にとっては、これらの問題が経済と安全保障の両面で重大な影響をもたらすことは言うまでもありません。
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