本記事は、YouTube動画『日本の長期金利が上昇!何がおきているのか?ズボラ株投資』の内容を基に構成しています。
日本の長期金利が大きく上昇し、10年国債利回りが一時1.97%付近まで到達しました。20年国債、30年国債といった超長期ゾーンでも利回りが急上昇しており、市場では「日本に何が起きているのか」「これまでと何が違うのか」といった疑問が広がっています。
本記事では、動画内で語られている内容をもとに、日本の長期金利上昇の背景と、その裏にある金融構造の変化について、初心者にも分かる形で整理していきます。
日本の長期金利が急上昇している現状
動画の冒頭で語られている通り、直近の日本市場では長期金利が目に見えて上昇しています。
10年国債利回りは一時1.97%近辺まで上昇し、20年国債や30年国債も同様に大きく動きました。ここ数日はやや落ち着いているものの、これまでの日本では考えにくかった水準であることは間違いありません。
特に注目されているのが、日米金利差とドル円相場の関係です。
通常、日米金利差が縮小すれば円高方向に動きやすいと考えられます。しかし、今回の局面では日米金利差が縮小しているにもかかわらず、ドル円は円安方向に動いています。この「ワニの口」のような乖離は、市場参加者にとって大きな違和感を生んでいます。
長期金利上昇の正体は「国債が買われていない」こと
では、なぜ日本の長期金利はここまで上がっているのでしょうか。動画で強調されているポイントは非常にシンプルで、「長期国債が買われていない」という点に集約されます。
長期金利が上昇するということは、裏を返せば国債価格が下落しているということです。つまり、10年国債、20年国債、30年国債といった長期・超長期国債を、現在の利回り水準では「買いたくない」と考える投資家が増えているということです。
ここで重要になるのが、日本国債を誰が保有しているのかという点です。
日本国債の保有構造と金融機関の影響力
動画内では、日本国債の保有割合についても触れられています。大まかな構造は次のようになっています。
日本国債の約50%は日本銀行が保有しています。
残りの大部分は、銀行、保険会社、年金といった国内金融機関が保有しており、これらを合わせると全体の約40%を占めます。つまり、日本国債の約90%は日銀と国内金融機関が持っていることになります。
この構造を考えると、長期金利の水準を決める最大の要因は、国内金融機関が「どの水準なら国債を買うのか」という点であることが分かります。
現在、この金融機関が長期国債を積極的に買わず、短期国債を中心に運用していることが、長期金利上昇の直接的な背景になっています。
実質金利マイナスが国債投資を難しくしている
なぜ金融機関は長期国債を買わないのでしょうか。その理由として動画で詳しく説明されているのが「実質金利」の考え方です。
実質金利とは、名目金利からインフレ率を差し引いたものです。例えば、10年国債利回りが2%、インフレ率が3%の場合、実質金利はマイナス1%になります。この環境では、お金を貸す側、つまり国債を買う側は実質的に損をすることになります。
動画では分かりやすい例として、金利2%で1000万円を借り、その資金をインフレ率3%に連動する資産で運用すれば、実質的にはプラスになるという話が紹介されています。
これは借り手側が得をし、貸し手側が損をする状態です。
国債に置き換えれば、国にお金を貸している金融機関が実質的にマイナスになるため、実質金利がマイナスの水準で国債を積極的に買う理由は乏しいということになります。
YCC終了と金融機関の行動変化
これまで、この「割に合わない国債」を支えてきたのが日本銀行でした。イールドカーブ・コントロール、いわゆるYCCによって、日銀が10年国債を積極的に買い支えることで、長期金利は抑え込まれてきました。
しかし、YCCが事実上終了したことで、国債市場は民間金融機関の判断により左右される局面に入っています。
金融機関は長期的な安定運用が求められるため、一定量の国債を保有する必要がありますが、実質金利が大きくマイナスになる水準では、簡単には買いに動けません。
インフレが一時的か、定着するかという見方の変化
動画の中で重要な視点として挙げられているのが、「インフレが一時的か、それとも長期化するか」という見方の変化です。
これまでの日本は長期デフレが続いてきたため、「インフレはいずれ落ち着く」という前提で国債を保有することが可能でした。多少実質金利がマイナスでも、インフレが収まれば問題ないと考えられていたからです。
しかし、積極財政への転換や物価上昇の継続を背景に、「インフレがこのまま続くのではないか」という見方が強まっています。仮に今後10年間インフレが続くと考えれば、実質金利マイナスの10年国債を保有し続けることは、金融機関にとって極めて不利な運用になります。
このため、金融機関は「インフレ率をある程度カバーできる利回り水準」まで国債利回りが上昇しないと、買いに動きにくい状態になっていると考えられます。
どこが長期金利の天井になるのか
では、長期金利はどこまで上がるのでしょうか。動画では明確な水準を断言しているわけではありませんが、ポイントは「銀行や年金が納得して買える水準」に達するかどうかです。
日本銀行のインフレ目標は2%であり、10年国債利回りもそれに近づいてきました。ただし、インフレ率がそれ以上で推移する場合、金融機関はさらなる利回り上昇を求める可能性があります。逆に、一定水準まで利回りが上がり、金融機関が「ここなら買ってもいい」と判断すれば、長期金利は天井をつける可能性があります。
つまり、今後の長期金利の行方は、国内金融機関の投資判断に大きく左右される局面に入っていると言えます。
私たち個人に求められる意識の変化
動画の後半では、個人の行動にも話題が広がります。インフレが定着する社会では、「物価が下がるのを待つ」という消費行動は合理的ではありません。物価は基本的に上がり続けるものだからです。
そのため、個人としてはインフレに対応できる資産形成を意識する必要があります。動画では、インフレに連動しやすい株式投資が、資産を守る手段として有効であるという考え方が示されています。
まとめ:長期金利上昇は日本の金融構造転換の表れ
今回の動画から読み取れる重要なポイントを整理します。
日本の長期金利上昇は、単なる一時的な市場変動ではなく、実質金利マイナスとインフレ定着を背景にした構造的な変化です。YCC終了後、国債市場は金融機関の判断に委ねられ、インフレが続くという見方のもとでは、現在の利回りでは買われにくい状況が生まれています。
この動きは、日本がデフレ型経済からインフレ型経済へと転換している兆候とも言えます。金融機関、企業、そして個人に至るまで、これまでとは異なる前提で行動を考える局面に入っていることを、今回の長期金利上昇は示しているのかもしれません。
今後も日本の金利動向は、金融市場だけでなく、私たちの生活や資産形成にも大きな影響を与えていくと考えられます。


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