この記事は、元動画のタイトル「【第二次インフレの波】2025年9月のファンドマネージャー調査の全貌と米国株・ゴールドの影響をデータ解説【プロの投資家は今こう見ています】」を基に記事を書いています。
最初に結論
プロのリスクテイクは強気に傾き、現金比率は3.9%まで低下、株式配分は7カ月ぶりの高水準。
半面で世界株は割高と答える割合が58%と過去最大級。テック大型やマグニフィセント7への集中が続く一方、ゴールドの平均配分は2.4%と極端に薄い。
最大のテールリスクは第二次インフレ。利下げ見通しが支える一方、下押し局面が来ると現金余力の乏しさから下げが加速しやすい。年末へ向けては楽観一辺倒に乗り過ぎず、分散とヘッジ、現金クッションの厚みを見直すのが現実解。
調査の要点(数字で一気に把握)
動画で紹介されたバンク・オブ・アメリカの月次ファンドマネージャー調査を、重要指標に絞って一覧化。
テーマ | 2025年9月結果の要旨 |
---|---|
センチメント総合 | 2月以来で最も強気寄り。株式配分が7カ月ぶり高水準 |
現金比率 | 3.9%まで低下。買い下がり余力が小さい |
世界株の割高感 | 割高と回答が58%で過去最大級 |
成長見通し | ソフトランディング想定が67%に上昇 |
FRB見通し | 9月を含め年内計4回利下げ観測が優勢(3回派も多い) |
最大テールリスク | 第二次インフレの波が最多。次点にFRB独立性懸念とドルのレジーム変更リスク |
ポジション過熱 | 最も混雑した取引はロング・マグニフィセント7 |
セクター配分 | テック、銀行、ヘルスケアをオーバーウェイト傾向 |
サイズ配分 | 大型から小型へのシフトが2023年12月以来で最大 |
地域・資産の外し | 英国株、リート、債券をアンダー寄り。エネルギー株も弱気配分 |
ゴールド配分 | 平均2.4%と薄い。追加買いが来ると価格弾性が大きい可能性 |
なぜ今は「強気だが脆い」相場なのか
1 現金が薄い
ファンドのキャッシュが3.9%。下落時に機動的に拾う資金が枯れやすく、値幅が出やすい。
2 指標は割高認識だが買わざるを得ない
58%が割高と答えつつ株式オーバーウェイトを維持。ベンチマーク負け回避のための“必要悪”の買いが続く構図で、下げの初動は一斉手仕舞いの連鎖を招きやすい。
3 テールリスクはインフレ再燃
第二次インフレを最重視。AIは長期的にデフレ圧力だが、当面は賃金や財政、関税環境などから債券利回り上昇を見込む向きが多い。株式の割高圧力と同時進行になり得る。
4 ブラックアウトの重石
10月は決算期で自社株買いのブラックアウト入り。下落の受け皿が薄くなる時間帯は値動きが荒くなりやすい。
セクターとスタイルの温度感
小型株へ資金シフトが拡大。テック、銀行、ヘルスケアの比重を高める一方、生活必需品は評価低下、エネルギーはアンダーが目立つ。ただしエネルギーは原油価格下落で悪材料が織り込み進み、逆張り妙味が生じやすい局面との見立ても紹介。
ゴールドの位置づけが軽すぎる
平均配分2.4%は、インフレ二波リスクを最重視する割に低い水準。もしプロが一斉に10%程度まで増やす流れが生じれば需給が一変し、価格は跳ねやすい。足元の過度な株式集中の反対側に、分散バッファとしての余地が残っている。
直近想定シナリオと価格変動の絵姿
シナリオA 楽観継続
利下げ期待とソフトランディング観測で指数は高原持ち合い。マグニフィセント7主導で指数は粘るが、バリュエーション拡大の余地は限定的。
シナリオB インフレ再加速で利回り上昇
長期金利の再上昇で成長株の割引率が上がり、ハイベータに調整圧力。現金比率が低く押し目を拾えず、下げが速く深くなりやすい。金は相対堅調。
シナリオC 企業業績が想定超え
利下げ見通しの織り込みに加え、EPS上振れが来れば再度リスクオン。小型株のベータが効きやすいが、過密ポジションの反動で循環的資源・ヘルスケアの逆襲も。
個人投資家の実務アクション(動画の示唆を踏まえて)
1 集中の緩和
指数とテック大型の比率が高い場合は、ヘルスケア、品質バリュー、小型の一部などへ段階的にウエイト分散。
2 クッションの確保
フルインベストは避け、現金や短期債、金の合計でポートフォリオの10〜20%程度を目安にバッファを持つ。現金3.9%というプロの脆さと逆張りの発想を。
3 ゴールドの再点検
インフレ二波のヘッジとして、現物・ETFいずれでも保有比率を可視化。平均2.4%という市場の薄さを意識し、保有目安レンジを自分の許容度で設定。
4 収益ドライバーの見極め
足元の上昇がバリュエーション拡大か、EPS成長かを分解。後者優位の銘柄やセクターを優先。
5 イベントドリブン管理
10月のブラックアウト期間、決算シーズンのガイダンス、長期金利の指標イベントをカレンダー化し、発注量と逆指値の距離を調整。
参考ポートフォリオの組み方の一例(長期・分散を重視)
これは投資助言ではなく、動画の示唆を踏まえた構成例。
アセット | 目安レンジ | ねらい |
---|---|---|
世界株インデックス | 35〜50% | ベース資産。大型偏重の歪みを希釈 |
テック大型と周辺成長 | 10〜20% | 成長の中核。ただし比率管理を徹底 |
小型株(米・先進) | 5〜15% | センチメント改善局面のベータ取り |
ヘルスケア・品質バリュー | 10〜20% | 逆風時の相対耐性と配当 |
コモディティ・エネルギー | 0〜10% | 逆張りのリスクプレミア狙い |
ゴールド(現物・ETF) | 5〜10% | 第二次インフレと地政学のヘッジ |
短期債・現金等 | 10〜20% | 調整局面の弾薬とボラ緩和 |
用語と背景の補足
ファンドマネージャー調査
グローバル大手機関の資産配分と見通しを定点観測する月次アンケート。投資家心理とポジションの歪みを早期に捉える手がかりになる。
混雑取引
多くの機関が同じ方向に傾いた状態。上昇時は勢いが出るが、反転局面では一斉に解消が走り、価格変動が大きくなりやすい。
ブラックアウト期間
決算前後の自社株買い制限期間。需給の下支えが弱まり、指数のボラティリティが高まりやすい。
まとめ
プロは強気に傾き、現金は薄く、テック大型に集中。にもかかわらず割高認識は過去最大級で、最大リスクはインフレ二波。つまり上はじわり、下は速いという非対称な相場つきになりやすい。ゴールドの薄い配分や小型へのシフト、ヘルスケアの見直しなど、分散の余地はまだ大きい。年末に向けては上昇に付き合いつつ、現金とヘッジで転倒に備える。今日からできるのは、持ちすぎた集中の点検と、クッションの補強だ。
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