本記事は、YouTube動画「粉飾決算の真相【オルツ決算】~ゆっくり解説~」をもとに内容を整理・解説したものです。
目次
結論:オルツの破綻は「AIベンチャーの夢」と「現実の資金繰り」のギャップ、そして巧妙な循環取引による粉飾決算が引き起こしたものでした。
2024年10月に上場を果たしたAI企業「オルツ(Alt)」は、たった10ヶ月で破綻。これは歴代3位の速さで上場廃止となった事例です。表向きには夢のようなAIビジョンを掲げていましたが、その裏側では売上の9割が虚偽、広告代理店と販売代理店を使った循環取引スキームが展開されていました。
オルツとはどんな企業だったのか?
- 業種:AI開発スタートアップ
- 主力製品:AI技似録(AI議事録サービス)
- 上場日:2024年10月
- 上場時時価総額:170億円
- 社員数:23人
- 平均年収:約900万円
AIによって個人の意識や感情を学習し、自分の“クローン”を作って活躍させるという**PAI(パーソナルAI)**構想を掲げ、SFのような世界観で注目を集めました。
大手企業との取引実績(野村證券、JR西日本など)も紹介されていましたが、実態は広告に巨額を投じて認知度を「演出」しただけにすぎませんでした。
売上の9割が虚偽だった粉飾決算の実態
「売上60億円」のからくり
オルツは決算上「売上60億円」を計上していましたが、その約90%が虚偽であったと判明しています。
- 実際には販売代理店への委託料が、広告代理店から「戻ってくる」仕組み
- つまり、広告宣伝費として支出した資金が、売上として還流
- 研究開発費すら広告代理店経由で販売代理店に流れ、売上として戻っていた
これはいわゆる循環取引スキーム。広告代理店、販売代理店を経由し、会社が支出した金がぐるっと回って架空の売上として計上されていました。
上場前後の株式と投資家の被害
上場直後の株価と構成
- 上場時株価:約500円
- 最高値:700円超(上場から数ヶ月間)
- 編集時点(破綻発表時):ほぼ無価値(ゼロ円)
- 上場後10ヶ月で破綻(歴代3位の早さ)
株主構成と資金の流れ
- 社長が21%を保有
- 残りの大部分をベンチャーキャピタルが保有
- 上場で株が一般投資家に流れ、約350万株が個人投資家の手に
- 売上の9割が虚偽であることを踏まえると、時価総額170億円のうち実質価値は17億円程度
- 一般人に販売された株の総額:約17億円 → 実際の価値はごく一部 → 損害は15億円超
決算書から読み解く異常な支出構造
PL(損益計算書)
- 売上:60億円(大部分が虚偽)
- 営業損失:23億円
- 社員数23名で年収平均900万円 → 人件費2.4億円
- 広告宣伝費:46億円(売上とほぼ同額)
- 研究開発費:13~14億円(外注で実施)
→ AI開発企業なのに開発より広告に注力、という矛盾が明らか
BS(貸借対照表)
- 上場資金で現金は一時的に増加
- その他、買収による「のれん」などが資産として計上
- 負債や借入金は正確に計上されているが、資産側が疑わしい
CS(キャッシュフロー計算書)
- 営業CF:大幅な赤字
- 財務CF:ベンチャーキャピタルからの出資や借入で補填
- 結果:上場による資金調達も2年で枯渇する計算
粉飾決算の“スキーム”図解
以下のような流れで資金が循環していました:
textコピーする編集する広告宣伝費(オルツ)→ 広告代理店 → 販売代理店 → 売上としてオルツに戻る
↘
研究開発費を装った追加送金も
- 5年間で広告代理店に155億円支出
- そのうち137億円が売上として戻ってきた
- 結果的に赤字にはなったが、架空の売上で成長演出に成功
なぜバレなかったのか?
最初の監査法人には粉飾を見破られていたが、なんとオルツは監査法人を変更。
次の監査法人は問題点を見抜けず、そのまま上場を許してしまいました。
これは「監査法人ガチャ」とも言える問題で、日本のIPO制度や監査体制にも警鐘を鳴らしています。
企業理念とミッションのギャップ
オルツの掲げていた理念は以下の通り:
- ビジョン:自由の価値を高めるテクノロジーを実現
- ミッション:労働(ラボーロ)から創造(オペラ)へ
- バリュー:超創造的であれ、恐れを知らず、自分の価値を最大化せよ
この理念とは裏腹に、実態は創造ではなく粉飾にリソースを集中していた結果、理念とのギャップが浮き彫りになりました。
まとめ:オルツ事件から学ぶ投資と企業評価の教訓
今回のオルツの粉飾決算・上場詐欺とも言える一連の流れは、以下の点を強く示唆しています。
投資家としての教訓
- 売上や成長の数字に惑わされず、広告費や研究開発費の使い方にも注目する
- 社員数・人件費・契約数など実態と整合が取れるかチェックする
- 監査法人の変更など、不自然な企業行動には要警戒
- 特にAIやメタバースなど”夢のある”業種には冷静な分析が必要
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