本記事は、YouTube動画『【緊急事態】30年間、一度も起きなかった事が起きてしまった。』の内容を基に構成しています。
米国で、ここ数十年の常識では説明しにくい変化が起きています。動画では、米国の貿易赤字が急速に縮小し、しかも約30年ぶりの低水準に到達している点を「緊急事態」として取り上げています。貿易赤字が小さくなること自体は、一見すると良いニュースに見えます。しかし動画の主張は逆で、今回の縮小は景気の強さを示すというより、世界的なドル不足を引き起こしかねない危険な兆候だという立て付けです。
この記事では、貿易赤字とは何かという基本から入り、なぜ今この現象が起きているのか、そしてなぜ「ドル危機」という話につながるのかを、初心者の方でも追えるように丁寧に整理します。
貿易赤字が急縮小、しかも約30年ぶりの水準
動画では、米国の貿易赤字が「ここ数十年で最も小さくなっている」こと、さらにその縮小ペースが異常に速いことが強調されます。
貿易赤字は通常、米国が海外から買う量(輸入)が、海外が米国から買う量(輸出)を上回ることで発生します。米国は長年、構造的に輸入超過になりやすく、貿易赤字が続いてきました。
ところが最新データでは、貿易赤字が過去最低水準になったとされ、同じような低水準が見られたのは1999年のITバブル崩壊直前の時期だ、という比較も出てきます。さらに2008年のリセッション局面でも貿易赤字の減少が起きたという話があり、動画は「今回も何かがおかしい」と問題提起していきます。
ここで大事なのは、動画が言っているのは財政赤字ではなく貿易赤字だ、という点です。
財政赤字は政府の収入と支出の差で、貿易赤字は輸出と輸入の差です。動画では財政赤字は改善していない、むしろ悪化しているというチャートにも触れ、貿易だけが急に変な動きをしていることが強調されます。
そもそも貿易赤字は何を意味するのか
貿易赤字は、単純にいえば「輸入が輸出より多い状態」です。米国のように消費規模が大きい国では、国内で作る量以上に海外から商品を買う構造になりやすく、長期的に赤字が続きやすいと説明されます。
ここで動画がもう1つ重要な観点として出しているのが、GDPの見え方です。一般的にGDPは、民間消費、投資、政府支出、そして貿易収支(輸出から輸入を引いたもの)などで構成されます。
輸入はGDP計算上、差し引かれる側に入ります。つまり輸入が大きく減ると、それだけでGDPが表面上よく見えてしまうことがある、というのが動画の説明です。
ただし通常、輸入が減るときは需要も弱っていることが多いので、GDPも弱くなりがちです。今回について動画は、関税をめぐる特殊事情が絡み、輸入が減っているのに「経済がよく見える」ようなズレが生まれ、誤解を招いている可能性があると指摘します。
貿易赤字が動いた理由は2段階ある
動画は、今回の貿易赤字縮小を理解するには「段階を分けて考える必要がある」と進めます。ポイントは大きく2段階です。
段階1:2024年11月以降の貿易赤字拡大は「関税前の買いだめ」
動画では、貿易赤字が2024年11月直後から大幅に悪化し始めた、と説明されます。2024年11月に何があったのかというと、トランプ大統領が大統領選で当選したタイミングだ、という流れです。
就任は2025年1月で、政策が正式に動くのはそれ以降だとしても、市場や企業は「就任後に関税が強化される」ことを織り込んだ、というのが動画の見方です。
輸入に依存している企業や、国内で販売する商品を海外から仕入れている企業にとって、関税はコスト増につながります。そこで関税が本格化する前に、できるだけ多くの商品を前倒しで輸入し、備蓄しておく動きが広がった、という説明になります。
その結果、貿易赤字は数カ月悪化し続け、ピークは2025年3月だったと語られます。そして関税が実際に始まったのもその頃で、まさに「上がる前に買っておく」行動が輸入を膨らませ、赤字を拡大させた、という整理です。
ここで動画がたとえ話として出すのが、オイルショックの買いだめです。トイレットペーパーや食料品を一斉に買いだめすると、その直後は「もう買う必要がなくなる」ため、需要が急にしぼむように見えます。同じことが輸入でも起きた、というイメージです。
つまり、買いだめの反動で輸入が落ちれば、貿易赤字は縮小します。この部分までは、多くの人が納得しやすい説明だと動画も認めています。
段階2:問題は「2025年後半のさらなる縮小」、ここで登場するのがゴールド
動画が最も重要だとするのは、貿易赤字が「当選前の水準に戻った」だけでなく、それ以上に縮小している点です。ここは関税の買いだめ反動だけでは説明しにくい、というわけです。
そして動画は、その意外な答えとして「ゴールド」を出します。金価格が市場最高値を更新し続け、1月末時点で145000ドルを突破している、しかも1年前のほぼ半額から倍増に近い動きになっている、と述べます。
では金と貿易赤字に何の関係があるのか。動画は、貿易統計の中で「ノンマネタリーゴールド(非貨幣目的のゴールド)」が非常に大きな影響を持っている、と説明します。
非貨幣目的のゴールドとは、中央銀行の準備資産として保有される貨幣目的の金ではなく、宝飾品や工業用途、メッキ、電子機器や医療機器などで使われる金を指す、という定義が示されます。
動画内のデータ説明では、輸出増加分の約70%が非貨幣目的のゴールドで占められている、と語られます。また、輸入の増加分も100%以上が非貨幣目的ゴールドによる、とされ、全体の貿易赤字縮小が「輸入が激減したから」というより「ゴールド輸出が増えたから」に見える構造になっている、と説明されます。
さらに、ゴールドの影響を調整すると、貿易赤字の変化は大きな数字ではなく、わずか3.2%にとどまる、とも述べられます。ここで動画の主張は、見た目の貿易赤字縮小が、金の統計的インパクトに大きく左右されている点に注意せよ、という方向に進みます。
非貨幣目的ゴールドは「価格が上がっても量が減りにくい」という性質がある
動画は、なぜ金がここまで影響するのかを、需要の性質で説明します。
工業用途や医療機器用途などの金は、必要な量が製品仕様である程度決まっており、価格が2倍になったからといって使用量を半分にできる性質のものではない、という考え方です。これを動画は「非弾性的」と表現します。つまり価格が上がっても、一定量を買い続ける必要がある側面が強い、というわけです。
一方で、個人投資家などが積立で買う金は、たとえば毎月100ドル、毎月10000ドルのように金額ベースで買うことが多く、価格が上がれば買える量は減ります。こちらは弾性的で、動画では「マネタリーゴールド(貨幣的な金)」の性質として説明されます。
ここまでを踏まえて動画は、金価格の上昇が貿易統計に与える影響が大きく、それが貿易赤字縮小の見え方を大きく動かしている、と結論づけていきます。
なぜ貿易赤字の縮小が「ドル不足危機」につながるのか
ここからが、動画のタイトルにある「ドル危機」の話につながります。動画のロジックを、初心者向けに順番にほどきます。
貿易は「モノ」と同時に「ドル」が動く取引でもある
動画は、あらゆる取引の半分は常にマネーだ、という言い方をします。あなたが何かを買うと、あなたは商品やサービスを受け取り、相手は代金を受け取ります。特に米国との取引では、代金の多くが米ドルで支払われます。
つまり、米国が輸入をするということは、海外にドルを支払っているということでもあります。逆に輸入が減れば、海外に流れるドルの量も減ります。
動画はここで、貿易赤字が縮小していることは「海外に出ていくドルの絶対量が減っていることを意味する」と説明します。これは一見健全に見えるかもしれませんが、ドルが世界の金融システムの中心であることを考えると、話が変わってくる、という流れです。
世界にはドル建て債務が巨額に存在し、しかも全体像が把握できていない
動画は、世界中にドル建て債務が大量に存在し、その総量や場所、満期、金利、どこで不足しているかを正確に把握している人はいない、と強く述べます。ここで登場するのがシャドウバンキングです。直訳すると「影の銀行システム」で、実態が見えにくい領域で信用が積み上がっている、という説明です。
さらに、部分準備銀行制度の話に入り、銀行預金がそのまま金庫に眠っているわけではなく、貸し出しを通じて信用が連鎖的に膨らむ仕組みが語られます。動画の例では、最初に100ドルがあっても、貸し出しと預金の連鎖で、見かけ上は合計300ドルのように増えていく、というイメージで説明されます。
このように信用が膨張しているとき、どこかで返済不能や破綻が出ると、今度は膨張が収縮に転じ、信用収縮が連鎖する、というのが動画の危機感です。
「借金誘導型」では、将来必ずドル不足になりやすい構造がある
動画は、借金には金利が伴うため、返済に必要なドルは「借りた額より多い」ことを強調します。100ドル借りたら105ドル返す必要がある、という例です。
もしドル供給量が増えないのに、返済額だけが増えていくなら、将来ドルが不足する方向に傾く、という考え方が出てきます。動画はこれを「ビルトインデフレーション」という言葉で説明します。本来は供給量が固定される資産の文脈で使われることが多い言葉だが、ドル供給が増えない状況が起きれば同じような圧力が働く、という主張です。
だからこそ、FRBがマネーサプライ拡大を続け、信用拡大が止まらないようにしてきた、という説明につながります。そして信用拡大と信用収縮が波のように訪れ、景気と不景気が交互に来る土台になっている、という整理です。
今回の本題:米国がドルの対外供給を急に減らすと、世界でドル不足が起きうる
ここで動画は物語の本流に戻り、「過去30年間で経験したことのないほど、米国がドルの対外供給を減少させる」ことが危険だと言います。
米国は長年、輸入を通じて海外にドルをばらまいてきた側面があります。海外はそのドルで債務返済をしたり、貿易決済を回したり、金融取引を維持したりします。ところが米国が輸入を急減させ、海外に流れるドルが細れば、世界的にドル不足が深刻化し、借金返済が滞り、信用不安が拡大する可能性がある、というのが動画の危機シナリオです。
このとき動画は、完全に同じ現象ではないが、近い例としてクレディ・スイスがドル不足で救済措置を受けた話を挙げ、米国以外の中央銀行はドルを刷れないため、最終的にはFRBのスワップラインなどに頼る場面が出る、と説明します。動画内では2022年後半にFRBからドルを融通してもらう形が語られます。
DXYと円安ドル高の話:ドル不足が進むとドル高が加速する可能性
動画は、ドル指数DXYを「完璧な測定ではないが、簡易的に事態を測れる」として言及します。貿易赤字が拡大すると、輸入増でドルが海外に流れ、海外でドルが溢れて相対的にドル価値が下がりやすい、という説明が出ます。
そして現在は貿易赤字が急速に解消しているため、今度は逆に、世界的なドル不足が強まってDXYが急騰する可能性がある、という警戒につながります。
日本の文脈では、すでに円安ドル高が構造的問題になっているとし、1ドル150円や140円台でも異常な円安だが、ドル不足が急速に深まれば、さらに急激なドル高が起きる可能性もある、と動画は述べます。
投資家としてどう備えるべきか:動画が伝えたい結論
動画は、今挙げたシナリオが「必ず起きる」と断定しているわけではありません。むしろ「一時的な現象として収まる可能性もある」とも述べています。ただし、ドル不足は非常に危険で、深刻化する可能性が低くないため、少なくとも現状を理解し、最悪の事態に備えてプランBを用意しておくべきだ、というメッセージが中心です。
もしドルが急騰し、流動性が枯れ、信用不安が広がれば、株価を含む資産価格が異常な速度で急落するリスクがある、と動画は警告します。一方で、こうした急変は燃え広がるのも速いが、うまく利用できれば大きな利益機会になる可能性もあるため、備える価値はある、という締め方になっています。
また動画後半では、運用戦略やファンダメンタルズ分析をLINE登録で見られる、無料限定ライブの告知、AmazonやNetflixを例にした「データによる産業支配」の話、2月8日21時のライブ告知、副業プログラム募集停止の案内など、チャンネルの告知パートが続きます。これらは動画の主題とは別枠ですが、発信者がどのようなテーマで視聴者との接点を作っているか、という意味では参考になります。
まとめ:貿易赤字縮小は良いニュースとは限らず、ドル不足の引き金にもなりうる
今回の動画が強調しているのは、米国の貿易赤字が約30年ぶりの低水準に縮小しているという事実そのものよりも、その背景にあるメカニズムです。2024年11月以降の赤字拡大は関税前の買いだめで説明できる一方、2025年後半のさらなる縮小には、非貨幣目的ゴールドとその価格上昇が大きく関わっている、というのが動画の見立てでした。
そして最も重要な論点は、貿易の変化が「海外に流れるドルの量」を変えることです。世界には巨額のドル建て債務があり、その全体像は把握しきれないまま信用で膨らんでいます。そこにドル供給の細りが重なると、ドル不足、信用収縮、流動性枯渇といった連鎖が起きるリスクがある、というのが動画の警戒ポイントでした。
何も起こらない可能性もあります。しかし、起きるときは急速に進むのが金融の怖さでもあります。貿易赤字の数字を「改善」とだけ捉えず、その内訳と背景、そしてドル循環の観点からも状況を点検し、投資判断が過去の常識で止まっていないかを確認することが大切だと言えます。


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