2025年5月16日、政府は「年金制度改革法案」を閣議決定し、ついに“106万円の壁”が撤廃される見通しとなりました。
これにより、これまで社会保険に加入しなくてもよかったパート・アルバイトの多くが、新たに社会保険(厚生年金・健康保険)への加入が義務付けられるようになります。
とはいえ、「じゃあもう働けないの?」「手取りはどれだけ減るの?」といった不安を抱えている方も多いはず。
そこで今回は、この法改正の内容と「週19.5時間以内」労働が抜け道になる理由を、わかりやすく解説します。
目次
結論:今後は「年収」ではなく「週の労働時間」が基準になる
- ✅ これまでの基準:年収106万円以上 → 社会保険に加入
- ✅ これからの基準:週20時間以上働くと加入義務
つまり、時給が高くても「週20時間未満」なら加入しなくてOKというルールになります。
背景:「106万円の壁」って何だったの?
パート主婦やアルバイトの方が、配偶者の扶養に入ったまま働くには、「年収106万円以下」に抑える必要がありました。理由は以下の2つです:
- 税制上の扶養控除が外れる
- 社会保険(厚生年金・健康保険)に加入義務が発生する
この“106万円の壁”は働き方を大きく制限し、多くの主婦が「フルで働けない」状況に追い込まれてきたのです。
変更内容のポイント3つ(2025年以降)
① 年収基準の「撤廃」
- 年収106万円未満であっても、週20時間以上働けば社会保険加入対象に。
- 逆に言えば、年収150万円あっても週19.5時間なら加入しなくていい。
👉 働き方=時間数が最も重要な判断基準になります。
② 企業規模の「撤廃」
- 今までは「従業員51人以上の企業」が対象。
- 今後は段階的に縮小し、2035年にはすべての企業が対象に。
年度 | 対象企業規模(従業員数) |
---|---|
2027年10月 | 36人以上 |
2031年頃 | 21人以上 |
2035年 | すべての企業 |
③ 時給の違いが「抜け道」に?
同じ年収でも、労働時間が20時間を超えないように調整することが可能です。
例1:時給1000円で週20時間 → 加入対象
- 月収:約8万6000円
- 20時間以上なので、社会保険に加入が必要
例2:時給1300円で週19.5時間 → 加入対象外
- 月収:約10万9000円
- 19.5時間未満なので、社会保険は不要
👉 つまり、時給が高い方が“抜け道”として有利になるのです。
加入で何が変わる? 手取りと年金のシミュレーション
▼週20時間以上働いて加入した場合
- 年収:106万円
- 年間の手取りが約15万7000円減少
- 将来もらえる年金:年額5780円アップ
元を取るには?
- 年金だけで計算 → 17年受給でトントン(65歳〜83歳)
- 健康保険料込み → 28年受給でトントン(65歳〜93歳)
👉 「手取りが減るが、長生きすれば得する」という計算です。
ダブルワークや個人事業所なら“逃げ道”あり?
✅ ダブルワークなら大丈夫
- 例:A社で週10時間、B社で週10時間 → 社会保険加入なし
- 1社あたり20時間未満なら適用対象外
👉 ただし、今後規制される可能性も指摘されています。
✅ 個人事業所はどうなる?
- 従業員5人未満 → 引き続き加入義務なし
- 5人以上でも「飲食店・宿泊業」などは2029年10月以降から適用
- ただし、「すでに営業している」事業所は除外される特例あり
いつからスタートするの?
新制度は最低賃金が1016円を超えたら順次スタート。
- 現在の最低賃金(例:東北950円程度)
- 上昇ペース:毎年40〜50円ずつアップ
- → 早ければ2025年秋、遅くとも2026年秋には導入される可能性大
まとめ:結局、どうすればいいの?
働き方 | 社会保険加入 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
週20時間以上 | 必須 | 将来の年金が増える、各種手当あり | 今の手取りが大幅減 |
週19.5時間以下 | 不要 | 手取りが増える、扶養に入れる | 将来の年金は少ない |
結論:今をとるか? 将来をとるか?
- 「今の生活費を重視する人」 → 週19.5時間未満に抑える
- 「老後の保障を重視する人」 → 20時間以上で社保加入もOK
いずれにしても、「106万円の壁」ではなく「20時間の壁」に変わったということをしっかり理解しておくことが大切です。
補足:雇用保険の“10時間”基準にも注意!
2028年からは、雇用保険の適用ラインが週20時間 → 週10時間に引き下げ予定。
今後、社会保険にも同様の引き下げが行われる可能性があります。
今後の対策
- 自分の労働時間・時給・年収を正確に把握する
- 雇用契約書で「週何時間働くか」を明記しておく
- ダブルワークや個人事業主での勤務も視野に入れる
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