本記事は、YouTube動画『【再放送】【営業マンは教えてくれない】がん保険に加入する前に知っておきたい5つのこと【お金の勉強 初級編】:(アニメ動画)第430回』の内容を基に構成しています。
周りが入っている「がん保険」、自分も入るべきなのか
動画は、会社員のリーマン先輩が駅前の肉まんを食べながら、がん保険のパンフレットを山積みにして悩んでいるシーンから始まります。高校時代の友人と飲みに行ったところ、自分以外は全員がん保険に加入しており、「今の時代は2人に1人はがんになる」と心配されたことをきっかけに、急に保険が気になり出したという流れです。
さらに、保険会社の窓口で「がん治療中には先進医療という選択肢もある」「それを受けようとすると、がん保険でないとカバーできない」と説明を受け、「お金を理由に最善の治療を諦めたくない」と不安が膨らんでいきます。
一方で、新人くんは「それって貯金や公的制度で賄える金額なんじゃないか」と疑問を抱きます。
こうして、「保険会社の説明だけで判断して本当に大丈夫なのか?」という問題意識から、両学長の解説動画を一緒に視聴する、という導入になっています。
この記事では、動画の内容をもとに、がん保険に加入する前に押さえておきたい5つのポイントを、初心者にも分かりやすく整理していきます。営業マンはなかなか教えてくれない視点も含めて解説しますので、これからがん保険の加入を検討している方は、判断材料として参考にしていただければと思います。
保険会社のセールストークは「情報が偏りやすい」
動画の冒頭で両学長は、まず次のように結論を示しています。
がん保険に入るかどうかの最終判断は人それぞれで良いが、その判断は「バランスの良い情報」を前提に行うべきであり、保険会社の言い分だけを鵜呑みにするのは危険である。
保険会社の営業トークは、基本的に「保険に入りたくなる情報」に偏りがちです。例えば次のようなフレーズは、多くの人が一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
- 「今は2人に1人ががんになる時代です」
- 「がんの治療にはとてもお金がかかります」
- 「先進医療を受けようとすると公的保険だけでは足りません」
- 「がん保険は3人に1人が加入している人気商品です」
これらは、全くのウソとは限りませんが、「どの数字をどう切り取るか」「どの制度を説明し、どの制度をあえて説明しないか」によって、受け手の印象は大きく変わります。
動画の主眼は、「保険会社のパンフレットや営業トークで不安を膨らませる前に、数字と制度を一度冷静に確認しよう」という点にあります。そのために、がん保険に入る前に知っておきたい5つの事実が紹介されています。
動画内容の詳細解説:がん保険加入前に知るべき5つのポイント
両学長が動画の中で挙げたのは、次の5つです。
- 「2人に1人はがんになる」は本当だが、若いうちはなりづらい
- がんの治療費は意外とかからない(自己負担は平均約100万円)
- 高額療養費制度の分かりにくさが保険人気を支えている
- 先進医療は「最先端医療」という意味ではない
- がん保険が特に流行っているのは北東アジア(日本・韓国・台湾)
ここからは、それぞれのポイントを順に詳しく見ていきます。
1つ目のポイント:「2人に1人はがんになる」はどういう意味か
保険の営業マンからよく聞くセールストークとして、「今は2人に1人ががんになる時代です」というものがあります。これを聞くと、多くの人は「自分も50%の確率でがんになるのか」と不安になります。
しかし、動画で説明されているのは、この数字の正体です。これは「一生涯のどこかのタイミングでがんになる確率」であり、「今後10年間でがんになる確率」ではありません。
年代別に「今後10年間でがんになる確率」を見ると、次のようになります。
- 20歳からの10年間:0.3%
- 30歳からの10年間:0.6%
- 40歳からの10年間:1.5%
- 50歳からの10年間:4.8%
- 60歳からの10年間:14.4%
- 70歳からの10年間:29.4%
この数字から分かる重要なポイントは、「若いうちにがんになる確率は非常に低い」ということです。
動画では具体的なたとえとして、「男子校の卒業生400人が20歳のときに同窓会を開き、その10年後の30歳で再び集まったとき、約1人ががんになっているくらいの確率」と説明しています。
これは「がんで亡くなる確率」ではなく、「一度でもがんと診断される確率」ですから、死亡リスクはさらに低くなります。
一方で、50歳以降はグラフが急激に立ち上がり、がんになる確率は年齢とともにぐっと上がっていきます。つまり
- 若い世代ではがんになる確率はかなり低い
- 年齢を重ねるほどリスクは高まる
という構造です。
この前提に立つと、「若いころから長期間にわたってがん保険の保険料を支払い続ける」という行為は、「確率は低いのに、長年手数料を払い続ける貯金のようなもの」とも考えられます。
両学長は、「30年間保険料を払い続け、30年後にがんになって給付金を受け取るのは、手数料付きの強制貯金のようなもの」と表現し、それなら自分で貯金しておいたほうが使い勝手も良く、合理的ではないかと指摘しています。
では、保険が「意味を持つ可能性」があるのはどのようなケースでしょうか。動画では「貯金が少ない若い時期に、たまたまがんになってしまった場合」が一つの例として挙げられています。
2つ目のポイント:がんの治療費は「イメージほど高額ではない」
次に解説されているのが、「がんの治療費は本当に高額なのか」という点です。
保険の営業マンは、「がんの治療には他の病気と比べて多額のお金がかかります」と強調することがよくあります。全く根拠がないわけではありませんが、動画で紹介されているデータを見ていくと、多くの人が「実際の金額」を知らないまま不安だけが膨らんでいる状況が浮かび上がってきます。
アフラックの調査によると、「がん治療に300万円以上かかりそう」と考えている人の割合は
- がんになったことがない人:32.1%
- 実際にがんになったことがある人:5.2%
となっており、「経験のない人ほど、治療費を大きく見積もっている」ことが分かります。
一方で、実際にがんになった人の多くは、「自己負担額は50万円から100万円程度で収まっている」ケースが多いとされています
。両学長自身も、親族をがんで亡くした経験や、お父様が肺がんで1カ月入院した経験を例に挙げつつ、「家計が破綻するような治療費はかからなかった」と説明しています。父親の場合、1カ月の入院でも自己負担は約5万円だったと具体的な数字も示されています。
もちろん、がんの種類や進行度合い、治療方法によって費用は大きく変動します。
「平均額だけ用意していれば絶対に安心」とまでは言えません。しかし、少なくとも「何百万円・何千万円単位で必ずお金が飛んでいく」というイメージは実態から大きくズレている可能性があります。
動画では、治療費の詳細データを紹介している「治療費.com」のようなサイトの存在にも触れ、「不安だけで判断するのではなく、一度数字を確認しておくと良い」としています。
3つ目のポイント:高額療養費制度が「見えない安全網」になっている
がんの治療費が「思ったよりかからない」背景として、動画で詳しく解説されているのが「高額療養費制度」です。
高額療養費制度とは、1カ月の間にかかった医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超過分が後から払い戻される制度です。日本では、公的医療保険によって自己負担は基本的に3割ですが、それでも大きな手術などをすれば、一時的な負担はかなり大きくなります。
動画では、次のような例が紹介されています。
- 大きな手術で医療費が100万円かかった
- 通常であれば自己負担3割なので30万円を支払う必要がある
- しかし高額療養費制度を利用すれば、平均的な所得の世帯では自己負担上限は約9万円
- 結果として、100万円の医療費でも実際の自己負担は9万円前後で済む
つまり、高額療養費制度があることで「莫大な医療費によって家計が一気に崩壊する」事態は、かなり起きにくい仕組みになっています。先ほど触れた「がん経験者の多くが50万円から100万円程度の自己負担で済んでいる」という事実も、この制度によるところが大きいと説明されています。
しかし、問題は「この制度の存在や使い方が十分に知られていない」という点です。
2018年の全国健康保険協会の調査では、高額療養費制度自体の認知度は約7割とされていますが、実際に必要な書類や手続き、給付条件などについては「分かりにくい」と答えた人が半数以上いたとされています。つまり
- 制度の存在はなんとなく知っている
- しかし、具体的にどう申請し、どのくらい戻ってくるのかはよく分かっていない
という人が多いということです。
この「分かりにくさ」が、結果として保険会社にとっては追い風になっています。高額療養費制度の詳細を知らない人に対して、「がんの治療には多額のお金がかかる」とだけ伝えれば、がん保険の必要性を強く感じさせることができるからです。
動画でも、「保険会社が高額療養費制度の存在を知らせずに、『がん治療には大金がかかる』というセールストークで保険を販売していたことが問題視された事例もあった」と言及しています。
4つ目のポイント:「先進医療」は最先端医療の総称ではない
次に扱われるのが、「先進医療」の意味についてです。
保険の営業マンからは「先進医療を受けようとすると、公的保険だけではカバーできません」「先進医療を受けられるように、がん保険で備えましょう」といった説明を受けることがあります。
この説明から、多くの人は「先進医療=最新・最高レベルの医療技術」とイメージしがちです。
しかし、厚生労働省が定義する「先進医療」は、一般的な意味での「最先端医療」とは少し違います。正式には
「保険適用の対象となっていないものの、保険適用できるかどうかを評価するために、厚生労働省が保険診療との併用を限定的に認めた医療行為」
を指します。つまり、
- 「最先端の医療だから先進医療」と呼ばれているわけではない
- むしろ、「保険適用にすべきかどうか検証中の医療行為」に付けられた名称
ということです。
動画では、実際に「大きめの病院で先進医療を担当している」というフォロワーの声も紹介されています。その中では
- 先進医療の適用患者は全体としてかなり少ない
- がんに限らず、先進医療全体で見ても患者は「めっちゃ少ない」
- 多くは高齢の患者である
- 良い医療はどんどん通常の保険診療に組み込まれていく
といった現場の実感が語られています。
厚生労働省の調査によれば、がん治療を受けている推定患者数は
- 入院患者:約126万人
- 通院患者:約183万人
- 合計:約310万人
とされています。一方で、がん治療でよく話題になる先進医療である「陽子線治療」「重粒子線治療」の実施件数は合計で8000件未満とされています。これは、がん患者310万人のうち約0.26%未満しか受けていないという計算になります。
確かに、これらの治療を自費で受けようとすると、自己負担額が300万円程度になるケースもあり、費用は高額です。しかし、「確率」として見たときには、先進医療を実際に受ける人はごく一部だということが分かります。
このように
- 先進医療の定義を正しく理解していない
- 自分が先進医療を受ける可能性や、その頻度を知らない
- 具体的な費用もよく分からない
という状態で、「何となく不安だから」という理由だけで高額な先進医療特約を付けることは、合理的な判断とは言い難いと動画では指摘しています。
5つ目のポイント:がん保険が特に流行しているのは日本・韓国・台湾
最後に取り上げられているのが、「がん保険がどの地域で特に流行しているのか」という視点です。
日本の保険の営業マンは、「がん保険は今や3人に1人が加入しているポピュラーな保険です」といった言い方をすることがあります。実際、2022年時点で、がん保険・がん特約の加入率は男女ともに約39%程度と言われています。この数字自体は事実だと動画でも認めています。
しかし、ここで重要なのは「世界的に見るとどうなのか」という比較の視点です。
動画によれば、がん保険が特に人気なのは北東アジア、具体的には日本・韓国・台湾です。
世界の多くの地域では、がんは心臓病や脳梗塞などと合わせて「重大疾病保険」のような形でまとめてカバーされており、日本のように「がん単体の保険」がここまで浸透しているケースはむしろ少数派だと説明されています。
つまり、
- 「日本でみんな入っているから、自分も入らないと不安」という感覚で選ぶと
- 世界全体で見ると、「みんなが入っていないタイプの保険」に入っていることになる
という、少し不思議な構図になるわけです。
両学長は、「北東アジアに住んでいる人だけが特別にがんになりやすいというデータを見たことはない」としたうえで、日本でここまでがん保険が浸透した背景には、「巧みなマーケティング戦略」があると指摘しています。
動画内での結論:がん保険は「絶対不要」とは言わないが、必要な人は限られる
ここまで5つのポイントを見てきましたが、両学長は「がん保険がどんな人にとっても、どんな場合でも絶対に不要だ」とまでは言っていません。保険が役に立つ人や、必要になる局面があること自体は認めています。
そのうえで、ベースとなる考え方として示されているのが
「基本的に必要な保険は3つのみ」というスタンスです。
- 火災保険
- 対人対物の自動車保険
- 掛け捨ての死亡保険
医療保険やがん保険などについては、「生活防衛資金すらほとんど無い場合、一時的なつなぎとして必要になることもある」が、「それより先に最低限の生活防衛資金として100万円程度を貯めることを優先したほうが良い」という立場です。
どうしても、「それでも不安だからもっと手厚くしておきたい」「万全に備えていないと安心できない」という人が、冷静に検討したうえで追加の保険を選ぶのは個人の自由です。ただし、その判断をする前に
- 年齢ごとのがん罹患率
- 実際の治療費の目安
- 高額療養費制度の仕組み
- 先進医療の定義と利用実態
- 日本でがん保険が流行した背景
といった情報を一度テーブルの上に並べて、広い視点から考えることが重要だと強調しています。
追加解説:日本の医療制度と「貯金」と「保険」のバランス
ここからは、動画の内容を踏まえつつ、がん保険を考える際の基本的な視点を整理します。
日本は、世界の中でも比較的医療費の自己負担が抑えられている国です。公的医療保険による3割負担に加え、高額療養費制度があることで、「家計破綻レベルの医療費」が発生するリスクはかなり軽減されています。
一方で、がん保険や医療保険は、月々の保険料を長期間払い続ける商品です。若い時期にがんになる確率が低いことを踏まえると、
- 若いころから長期間保険料を払い続ける
- その間、貯金がなかなか増えない
という状況は、「不安の解消のために多くを支払っている」状態とも言えます。
両学長が繰り返し強調しているのは、
- まずは貯金(生活防衛資金)を優先する
- そのうえで、どうしても足りない部分を保険で補う
という順番です。
がん保険を検討する際も、
- 自分の年齢とがん罹患率
- 現在の貯金額と、突然の出費に耐えられるかどうか
- 高額療養費制度を含めた、公的制度のカバー範囲
- 先進医療をどの程度現実的な選択肢として考えるか
これらを総合的に考え、「数字」と「制度」をベースに判断することが、結果的に家計全体を守るうえで合理的な方法といえます。
まとめ:がん保険は「不安」ではなく「数字と制度」で判断する
最後に、動画と本記事の内容を整理します。
がん保険に加入するかどうかは、最終的には個々人の価値観や状況によって異なります。しかし、その判断をする前に
- 「2人に1人はがんになる」という数字は、一生涯を通した確率であり、若い世代での10年間の罹患率は極めて低いこと
- 実際のがん治療費は、自己負担ベースでは50万円から100万円程度に収まるケースが多いこと
- 高額療養費制度により、1カ月の自己負担額には上限が設けられていること
- 「先進医療」は単に「最先端医療」の総称ではなく、保険適用を検証中の医療行為であり、利用者はごく一部にとどまること
- がん保険がここまで広く普及しているのは、日本・韓国・台湾といった北東アジアに特有の現象であり、巧みなマーケティングの側面もあること
といったポイントを、あらかじめ知っておくことが重要です。
両学長は、必要な保険として
- 火災保険
- 対人対物の自動車保険
- 掛け捨ての死亡保険
の3つを挙げたうえで、「まずは最低限の生活防衛資金として100万円を目指して貯めるべき」と繰り返し強調しています。そのうえで、どうしても不安が強く、「万全の備えがないと落ち着かない」という人は、数字と制度を理解したうえで、自己責任でがん保険を追加する、という考え方です。
大切なのは、「なんとなく不安だから」「営業マンが良い人だったから」といった理由だけで大きな固定費を増やしてしまわないことです。保険は一度契約すると、月々の保険料が何年もかけて家計から出ていきます。そのお金を、将来の不安のために使うのか、それとも今の生活や家族との時間、自己投資に回すのかは、本来私たち自身が選ぶべきテーマです。
がん保険を検討している方は、まず今回の5つのポイントを踏まえて、自分の年齢・貯金額・家族構成・働き方などを冷静に見つめ直し、「数字」と「制度」を土台に、自分なりの答えを出してみてはいかがでしょうか。


コメント