※本記事はYouTube動画「アメリカは日本と同盟国を裏切るか?【豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス】」を基に内容を構成しています。
結論:アメリカの同盟国への「信頼性」が問われている時代、日本も他人事ではない
世界最大の経済・軍事大国アメリカ。長らく世界の安全保障を支える柱でしたが、トランプ政権の登場以降、その「予測不可能性」が同盟国に大きな不安をもたらしています。
ヨーロッパだけでなく、日本も例外ではありません。「アメリカは本当に守ってくれるのか?」という疑念が現実のものとして語られる時代になっています。
NATO第5条と「信頼の崩壊」の前兆
北大西洋条約機構(NATO)には「第5条:集団的自衛義務」という重要な条項があります。
- 1国への攻撃=すべての加盟国への攻撃と見なす
- 発動されたのは歴史上たった1度:2001年9月の同時多発テロの時のみ
しかし、近年はこの**第5条が果たして機能するのか?**という疑念が加盟国で広がっています。
トランプ政権が突きつけた「冷酷な現実」
トランプ前大統領の発言:
「今の同盟国が将来も同盟国であるとは限らない」
これは2024年、アメリカが開発する次世代戦闘機を輸出する際、性能を10%落とす方針を語った際の言葉です。背景には「同盟国が敵になる可能性もある」という警戒心があります。
ヨーロッパにとってアメリカは戦後からの「守護神」でした。しかし、そのアメリカからこうした言葉が出たことに、NATO諸国は深刻な不安を抱いています。
「ディール主義」と「国際協調」の崩壊
トランプ政権の外交姿勢は端的に言えば「すべては取引(ディール)で決まる」。
- 同盟関係すら条件次第で崩れる可能性
- 米国の国益に合わなければ高関税などで「罰」を与える
例:
- 相互関税(トランプ関税)はWTOルール違反の疑い
- 日本やNATO諸国にも高関税を課すなど、「同盟=優遇」ではなくなった
この結果、アメリカ主導の国際秩序(貿易・安全保障)は危機に瀕していると見る専門家も多いです。
問題の本質:アメリカの「予測不可能性」
トランプ政権が問題なのは「発言の過激さ」だけではありません。最も深刻なのは、
アメリカの行動に予見可能性がなくなったこと
同盟国が最も恐れるのは、「何をするか分からない指導者」と共に未来を託すことです。
安全保障というのは国の存続に直結するテーマであり、曖昧な関係では命を預けられません。
日米同盟も「例外ではない」
日米安全保障条約第5条の内容:
「日本の領土が武力攻撃を受けた場合、アメリカは自国の憲法と手続きに従い対応する」
しかし、これも**「本当に機能するのか?」**という疑問が今、浮かび上がってきています。
特に懸念されているのが、**中国・ロシアとの緊張が高まった時にアメリカが本当に軍事介入してくれるのか?**という点です。
ヨーロッパで進む不信と恐怖の現実
バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)はロシアの軍事的脅威に直面しています。万が一、ロシアが介入してきた場合、
- アメリカは本当に助けてくれるのか?
- NATO第5条は機能するのか?
こうした不安から、米兵の死亡事故に大規模な追悼式を開催するなど、アメリカへの“忠誠心”をアピールする動きも出ています。
対照的に結束する「対アメリカ」陣営
アメリカ主導の秩序が揺らぐ一方で、ロシア・中国・北朝鮮の結びつきが強まっています。
- ロシアと北朝鮮:包括的戦略パートナーシップ条約(武力攻撃時の相互支援)を締結
- ロシアと中国:2022年に「無制限のパートナーシップ」宣言
- ロシアは中国に潜水艦関連技術を提供中(米政府も認める)
こうした動きは、アメリカの同盟関係の揺らぎを見透かした上での戦略的な連携とも言えます。
なぜ「裏切る可能性がある」のか?心理的背景にも注目
人は「自分の基準」で他人を判断します。
- 他人を信じられない人 → 自分も嘘をつくと考える傾向
- トランプ氏のように他国を信頼しない指導者 → 他国からも信頼されない
つまり、「他国を裏切るかもしれない」と考えるリーダーは、同じように裏切る可能性があるというロジックが成り立つのです。
日本が取るべき現実的な姿勢とは?
- 日米同盟の価値を見直す
- 曖昧な「信頼」ではなく、戦略的利害が一致しているのかを冷静に分析する
- リスク分散と独自防衛力の強化
- 完全依存型の同盟からの脱却
- 自衛隊の機能強化、国内防衛産業の育成
- 外交多角化の加速
- インド、オーストラリア、ヨーロッパ諸国との関係深化
まとめ:アメリカは「裏切る」のではなく、「変化している」
アメリカが日本や同盟国を「裏切る」のか――この問いの本質は、「アメリカが以前とは違う国になりつつある」ということです。
世界秩序の中心にいたアメリカが「利害優先、予測不可能、短期志向」に傾く中で、日本を含む同盟国は、「信頼」に甘えず、自国の安全保障をどう築くかを真剣に考える必要があります。
同盟に頼る時代から、自らの足で立つ時代へ――
その一歩が、今問われています。
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