※本記事は、YouTube動画「【英国経済】4月の消費者物価指数が急上昇!今なぜ英国で物価が急上昇しているのか!」の内容をもとに構成しています。
結論:イギリスの物価は“複数の一時的要因”で急上昇。だが、高止まりの懸念も根強い
2025年5月21日に発表されたイギリスの4月消費者物価指数(CPI)が、市場予想を大きく上回る結果となり、前年比+3.5%(前月は+2.6%)、前月比では+1.2%と、インフレ再加速の兆しが見られました。
これはイースター休暇の需要増、水道料金の急騰、増税、サイバー攻撃による供給混乱など、複数の要因が重なった結果であり、短期的なピークの可能性もある一方、イギリス特有の構造的インフレ要因も根強く、高水準がしばらく続くリスクも存在します。
目次
データで見る4月のCPI:全項目が予想を上回る
指標 | 結果 | 前月比 | 市場予想 |
---|---|---|---|
総合CPI(前年比) | +3.5% | +0.9pt(前月:+2.6%) | +3.3% |
総合CPI(前月比) | +1.2% | +0.9pt(前月:+0.3%) | +1.0% |
コアCPI(前年比) | +3.8% | +0.4pt(前月:+3.4%) | +3.6% |
サービスCPI(前年比) | +5.4% | +0.7pt(前月:+4.7%) | +4.8% |
すべての項目が市場予想を上回る結果となり、特にサービス価格の上昇が顕著でした。
物価急上昇の要因①:イースター休暇による消費の集中
- 今年のイースター:4月20日(前年は3月末)
- 学校が春休みに入り、旅行・外食・サービス利用が一気に活発化
- この影響が4月の物価統計に反映され、前年比・前月比ともに上昇圧力
要因②:年金の物価スライド調整による間接的な価格押し上げ
イギリスでは4月に年金の物価スライド(インフレに応じた支給額の調整)が実施されます。
- 受給者の手元にお金が増えたことで価格転嫁しやすい環境に
- 小売業やサービス業がこのタイミングを狙って一斉に値上げ
要因③:水道料金が35年ぶりの大幅上昇
地域 | 値上げ率 |
---|---|
テムズウォーター(ロンドン) | 約30% |
アングリアンウォーター(東部) | 約30% |
水道料金は前年比+26.1%という驚異的な伸びを記録。これは1989年以来の高水準です。
要因④:スターマー政権による増税
- 雇用主の国民保険料率の引き上げ
- 企業は従業員を雇うコストが増加
- そのコストが商品・サービス価格に転嫁
- 同時に、過去に見送っていた値上げをまとめて実施した企業も多く、インフレ圧力が増幅
要因⑤:スーパーマーケットへのサイバー攻撃
4月末から5月にかけて、Marks & Spencer(M&S)やCo-opなど主要スーパーがサイバー攻撃を受け、物流・在庫管理に支障が出ました。
- 被害総額は3億ポンド(約600億円)
- チャネル諸島(イギリス南部の離島)では商品が消え、「食料品危機」と報道される
- この影響は5月のCPIに反映される可能性
英国経済への影響:利下げが難しく、景気圧迫の懸念も
イギリスはもともと構造的に高インフレ傾向があり、2022年にはCPI前年比+13%という水準を記録しています。
現在もなお物価上昇率が高水準であるため、イングランド銀行(BOE)も利下げに慎重姿勢を崩せません。
- 利下げを見送ることで景気の冷え込みが進行
- インフレと景気減速の板挟み=スタグフレーション懸念
まとめ:一時的要因に見えるが、根深いインフレは続く可能性
要因 | 内容 |
---|---|
季節要因 | イースター、年金調整 |
公共料金 | 水道・電気・ガスの急騰 |
政策 | 雇用主保険料の増税 |
その他 | サイバー攻撃による供給網混乱 |
一部の要因は一時的ではありますが、根本的なコスト上昇や供給網の脆弱性はすぐには解消されません。今後もイギリスではインフレが高止まりする可能性が高く、景気との両立に難しさが残る状況です。
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