※本記事は、YouTube動画「イスラエルによるイラン攻撃の根底にある両国の歴史について解説します!」の内容を基に、初心者でも理解できるように詳しくまとめたものです。
結論:イスラエルとイランの対立は「宗教・歴史・地政学・革命」が複雑に絡み合った構造
2025年6月に始まったイスラエルのイラン攻撃。この出来事は単なる外交的摩擦ではなく、数十年にわたる対立の蓄積、さらには数千年にわたる宗教的・民族的歴史に根ざしています。
現在の直接的なきっかけは「イランの核開発」や「イスラエルによるイラン支援組織への空爆」などが挙げられますが、その根底には以下のような複雑な歴史があります。
- イスラエル建国の経緯とアラブ諸国との対立
- イラン革命後の政権交代とイスラム原理主義国家の誕生
- アメリカとの関係断絶、そして反イスラエル姿勢の強化
- ヒズボラやハマスなど武装勢力へのイランの支援
- 中東の覇権争いとシーア派・スンニ派の宗派対立
この記事では、イスラエル・イラン両国の歴史を振り返りながら、現在の緊張がどこから生まれたのかを丁寧に解説していきます。
イスラエル建国とアラブ諸国との長きにわたる戦争
ユダヤ人のディアスポラとシオニズムの勃興
紀元1世紀、ローマ帝国によってユダヤ国家が滅亡し、ユダヤ人は世界中に離散します。これが「ディアスポラ(離散)」です。
19世紀末、このユダヤ人がかつての祖国に戻ろうとする動き「シオニズム」が生まれ、オスマン帝国支配下のパレスチナに移住が始まります。
第一次世界大戦後の英領パレスチナ
1917年、イギリスは「バルフォア宣言」にてユダヤ人の国家建設を支持。パレスチナにユダヤ人の移民が加速します。一方、アラブ人も同地に居住しており、民族間の衝突が深まっていきます。
イスラエル建国と第一次中東戦争(1948年)
- 1948年5月14日:イスラエルが建国を宣言
- 翌日:エジプト、ヨルダン、シリア、イラク、レバノンの5カ国が攻撃開始
- 結果:イスラエルが勝利し、パレスチナ人はさらに土地を失う
以降、第2次(1956年)、第3次(1967年)、第4次(1973年)中東戦争が続きます。
- 特に**第3次中東戦争(六日戦争)**では、わずか6日間でイスラエルがガザ・ヨルダン川西岸・シナイ半島を制圧し、エルサレム旧市街も占領
- アラブ諸国は石油禁輸(オイルショック)などで対抗するも、1979年にはエジプトが和平合意(キャンプ・デービッド合意)し、反イスラエル連合は崩れ始めます
1979年のイラン革命と反米・反イスラエル姿勢の確立
王政時代:アメリカとイスラエルとの蜜月
イランはもともと親西側・親イスラエル国家でした。国王パーレビは近代化政策(白色革命)を進め、石油利権の大半をアメリカ・イギリスに明け渡していました。
しかし、国民の間では格差と伝統破壊に対する不満が高まり、1979年にホメイニ師によるイラン・イスラム革命が起き、王政が崩壊。
革命政権の登場と西側諸国との決別
- アメリカ大使館人質事件により両国は断交
- イスラエルとも関係を断絶し、「イスラムの敵」と位置づけ
イラクとの戦争と孤立
- 1980年、隣国イラクのサダム・フセインがイランに侵攻しイラン・イラク戦争勃発
- アメリカとアラブ諸国はイラクを支援。イランは孤立
- この戦争で約100万人以上の死者
革命の輸出と“抵抗の枢軸”構築
戦後、イランは「革命の輸出」を掲げ、中東各地の反イスラエル武装組織を支援します。
組織名 | 活動地域 | 特徴 |
---|---|---|
ヒズボラ | レバノン | 反イスラエル武装勢力、政治組織も保有 |
ハマス | ガザ地区 | イスラエルとの多数の衝突、ミニ国家化 |
フーシ派 | イエメン | シーア派主体、サウジとも対立 |
アサド政権 | シリア | イランと同盟関係、内戦支援 |
これらを通じて、イランは“抵抗の枢軸”と呼ばれるネットワークを構築し、イスラエルと対峙するようになりました。
核開発と現在の緊張
イランは近年、核開発を進めており、イスラエルはこれを「国家存続の脅威」とみなし、サイバー攻撃・科学者暗殺・空爆などで阻止を試みてきました。
イランはこれに反発し、ヒズボラ・ハマスなどを通じた間接攻撃を継続。両者の対立は**「代理戦争」**の様相を呈してきましたが、ついに直接衝突の可能性も高まってきています。
中東諸国と欧米の複雑な立ち位置
現在、アラブ諸国の多く(サウジ・UAE・ヨルダンなど)はアメリカやイスラエルと外交関係を持ちつつ、表向きはパレスチナ支持を表明するなどバランスを取っています。
中東の秩序構造は以下のように整理できます。
主な立場 | 国・組織名 |
---|---|
イスラエル支持・共存 | エジプト、ヨルダン、UAE、サウジなど |
イラン支持・連携 | シリア、ヒズボラ、ハマス、フーシ派など |
米国と敵対 | イラン、レバノンの一部武装勢力 |
まとめ:両国の対立は「宿命」か?
イスラエルとイランの対立は、宗教、民族、歴史、そして地政学的な要因が複雑に絡み合ったものです。
イランにとっては、自国の存立とイスラム世界再建のため。
イスラエルにとっては、自衛と国家存続のため。
双方にとって“妥協できない理由”が存在しています。
この構図が崩れない限り、単発的な停戦や調停では根本解決は難しいのが現実です。
コメント