サウジアラビア・ビジョン2030に暗雲|NEOM建設遅延で2029年冬季アジア大会が正式延期

本記事は、YouTube動画「【サウジアラビア】ビジョン2030NEOM建設に遅れ!2029年冬季アジア大会が正式に延期に!」の内容を基に構成しています。


目次

ついに正式決定した冬季アジア大会の延期

サウジアラビアで2029年に開催される予定だった冬季アジア大会が、正式に延期されることが決まりました。以前から建設の遅れが指摘されていたものの、今回、アジアオリンピック評議会が延期に合意したことで、この問題が事実として確定した形になります。

開催地として予定されていたのは、サウジアラビアが国家プロジェクトとして進めている巨大都市構想「NEOM」の一角に位置する砂漠のスキーリゾート「トロヘナ」です。

砂漠地帯に人工雪でスキー場を作るという極めて野心的な計画でしたが、結果として工事は間に合わず、国際大会の開催延期という事態に至りました。


ビジョン2030とNEOM構想とは何か

サウジアラビアは、原油依存からの脱却を目指す国家戦略「ビジョン2030」を掲げています。その象徴ともいえるのが、紅海沿岸に建設中の超巨大都市構想「NEOM」です。

NEOMは、従来の都市概念を覆す未来都市として構想されており、その中には以下のような計画が含まれています。

砂漠の中に建設される人工スキーリゾート「トロヘナ」
全長170km、高さ500mの直線型都市「ザ・ライン」
最先端技術を集約した観光・産業ハブの創設

これらはいずれも「世界初」「世界最大」といった話題性を強く意識した計画で、海外からの投資を呼び込むことを目的としていました。


トロヘナ計画と延期の経緯

今回延期が決定した冬季アジア大会は、NEOM内のトロヘナで開催される予定でした。トロヘナは、事業費190億ドル、日本円で約2兆9000億円という巨額の投資が見込まれたプロジェクトです。

この計画では、天然の雪が降らない砂漠地帯に人工雪を降らせ、ホテルの屋上にスキー場を設置する構想が描かれていました。さらに、周辺には高級リゾート施設や巨大な人工湖まで建設する予定とされていました。

しかし、現実には問題点が山積していました。まず、建設予定地は水資源が乏しく、200km以上離れた場所から水を引く必要がある地域です。加えて標高2000m級の山岳地帯で、地形は非常に複雑でした。こうした自然条件は、大規模建設を進める上で大きな障害となります。

さらに、計画段階で公開された人工湖の設計は、斜めにそり立つ構造となっており、重力や水圧に耐えられるのか疑問視されていました。専門家でなくとも無理があると感じる内容だったことから、当初から「計画通りの完成は難しい」「大幅な縮小や変更が避けられない」と見る向きは少なくありませんでした。

当初は2026年完成を目指していましたが、工事は大幅に遅延し、結果として国際大会の開催そのものが延期される事態に発展しました。


なぜ無謀とも言える計画が続くのか

では、なぜサウジアラビアはこれほど無理のある計画を次々と打ち出してきたのでしょうか。その背景には、深刻な構造問題があります。

サウジアラビアは脱石油を掲げていますが、現実には石油以外に大きな収益源が乏しい状況です。さらに、先進国と同様に社会保障費が年々増加しており、国家財政を黒字化するには原油価格が100ドル以上必要だとIMFなどは試算しています。

しかし、現在のWTI原油価格は60ドル前後で推移することが多く、財政は赤字基調です。加えて、原油増産を重視するトランプ政権の政策姿勢も、サウジアラビア経済には逆風となっています。

こうした中で、サウジアラビアは6000億ドル規模の対米投資も発表しており、国内外の両面で資金負担が膨らんでいます。その結果、政府は民間資金や海外資金の活用に積極的に動かざるを得なくなっています。

具体的には、王族向けの投資説明会の開催、外国人投資家による株式保有制限の緩和、メッカやメディーナといった聖地での外国人による不動産取得解禁など、市場開放を進めています。これらはビジョン2030を前進させるための苦肉の策とも言える動きです。


他プロジェクトへの波及と国際的信用への影響

トロヘナだけでなく、NEOM内の他のプロジェクトもすでに見直しが進んでいます。象徴的なのがザ・ラインで、当初170kmとされていた計画は、すでに2kmへと大幅に短縮されました。

それでもなお、この規模の建設が実現できるのか疑問視する声は根強く、さらにその中にサッカーワールドカップ用のスタジアムを建設する構想についても、実現性を疑う見方が広がっています。

国際大会の延期は、サウジアラビアの国際的信用に直結します。イベント開催を通じて国家ブランドを高めようとしてきただけに、今回の延期決定は大きな痛手と言えるでしょう。


まとめ|ビジョン2030は岐路に立たされている

2029年冬季アジア大会の延期は、サウジアラビアが進めるビジョン2030とNEOM構想の現実的な限界を浮き彫りにしました。壮大な構想で世界の注目を集める一方で、資金不足や技術的制約が次々と表面化しています。

今後も計画の遅延や中止が相次ぐ可能性は高く、2034年のサッカーワールドカップ開催についても不安視する声は少なくありません。華やかに見える一部の開発地区の裏側で、多くの計画が暗礁に乗り上げているという現実を、今回の延期は象徴的に示したと言えるでしょう。

サウジアラビアの未来都市構想が理想通りに進むのか、それとも大幅な修正を余儀なくされるのか。ビジョン2030は、今まさに重要な分岐点に立たされています。

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