本記事は、YouTube動画『サンタラリーに注目 ウォール街は強気 崩壊の前兆』の内容を基に構成しています。
サンタラリー期待で最高値更新。ただし本当に重要なのは「サンタが来ない」ケースです
動画ではまず、サンタクロースラリーへの期待が高まる中で、S&P500が6932.05と過去最高値を更新した点が語られます。年末年始にかけて株高を期待するムードは強く、いわゆる季節性の上昇局面に市場の視線が集まっている状況です。
ただし、この動画が強調するのは「上がるかもしれない」という楽観ではありません。
むしろ本題は逆で、サンタラリーが不発だった場合、それが景気後退や大きな調整の前触れになり得る、という警戒です。年末の薄商いで個人投資家が買い向かいやすいはずの局面で株が売られるなら、それは投資家心理が相当冷えている可能性がある。
ここが動画全体の問題提起になります。
そもそもサンタクロースラリーとは何か。なぜ起きやすいのか
サンタクロースラリーとは、その年の最後の5日間と新年最初の2日間、合計7日間にわたる短期の上昇相場のことだと説明されています。今年の対象期間は12月24日から1月5日までです。
1969年以降の55年間を振り返ると、この7日間でS&P500は平均1.3%上昇し、株高で終わる確率は79%だったと紹介されます。数字だけを見ると、確かに「起きやすい季節性」と言えます。
なぜこの期間は上がりやすいのか。動画では、機関投資家が不在になりやすく薄商いになる中で、個人投資家が積極的に株を買い向かう傾向があるからだと説明されます。
参加者の構造が変わり、個人に人気の銘柄に資金が寄りやすい。結果としてマグニフィセント7のような大型成長株が買われる可能性がある、という見立てにつながります。
サンタが来なかった年は、なぜ「前兆」になり得るのか
ここからが動画の核心です。サンタラリーは「上がったらめでたい話」で終わりではなく、むしろ「上がらない」方が重要だと語られます。
本来は個人投資家が強気になって買い向かう局面で株が売られる。これは景気の先行きに対して投資家が悲観的になっていることを意味しやすい、という考え方です。動画では実例として、サンタラリー期間に比較的大きく下落した年が挙げられます。
- 1979年は2.2%安
- 1999年は4%安
- 2007年は2.5%安
これらはいずれも、その後の景気後退や大きな調整局面と重なる年として示されます。
つまり今回も、もしサンタラリーが予想外に株安だった場合、2026年に景気後退へ向かう前触れかもしれない、という警戒が提示されます。
消費者心理が悪化。景気の先行きはすでに怪しいという視点
次に動画は、米国の消費者心理が一段と悪化している点を根拠として挙げます。
コンファレンスボードが発表した12月の米消費者信頼感指数は、予想91.7に対して結果89.1となり、予想を下回ったうえで5ヶ月連続で低下したと説明されます。
消費者信頼感指数は個人消費の先行指標とされ、1985年を100として算出されるため、ここが崩れ始めると消費の落ち込みを通じて景気後退の確率が高まる、という位置づけです。
さらに内訳として、足元の景況感を示す現況指数は116.8で、前月から9.5ポイント低下したとされます。事業環境と労働市場に対する悲観が強まっている、という整理です。
具体的には、事業環境は悪いと答えた人の割合が19.1%で、前月の15.8%から上昇しています。仕事を得るのが難しいと答えた人の割合も20.8%で、前月の20.1%から小幅上昇したとされます。
6ヶ月先の見通しを示す期待指数は70.7で、前月から横ばいながら11ヶ月連続で、景気後退の分かれ目とされる80を下回ったと説明されます。
内容面では、事業環境は悪化すると答えた割合が21.8%で前月の25.8%から改善した一方、仕事が減ると答えた割合が27.4%で前月の26.8%から上昇し、所得が減ると答えた割合も14.7%で前月の12.5%から上昇しています。
さらに家計の財務状況については、悪いと答えた人が25.4%、良いと答えた人が24.9%となり、2021年以来およそ4年ぶりに「悪い」が「良い」を上回った点が示されます。
動画では、消費マインド悪化が低所得層を中心に起きている可能性にも触れつつ、いずれにせよ消費マインドが崩れ始めていること自体は景気後退の前兆として捉えられるため、米経済の先行き見通しは暗い、という結論につなげています。
ウォール街は強気。だが予想は当たらない。むしろ逆指標として見るべきという主張
年末恒例として、ウォール街のストラテジストが来年のS&P500を予想する季節に入った、という話に移ります。今回のストラテジストのコンセンサス予想はプラス11%で、2019年以来7年ぶりの高い伸びが予想されていると説明されます。
ただし動画は、ストラテジスト予想は大抵外れる傾向があるため鵜呑みにしてはいけない、と釘を刺します。
理由は、金融政策、財政政策、規制緩和、地政学リスク、技術革新など、予測不能な材料が複雑に絡み合う株式市場において、12ヶ月後の指数水準を正確に当てること自体が現実的ではないから、という整理です。
加えて、足元の米国株はマグニフィセント7への集中度合いが極めて高く、わずか5銘柄が指数全体のパフォーマンスのおよそ半分を左右している、という指摘が入ります。
動画内で具体的に挙げられているのはNVIDIA、Apple、Alphabet、Microsoft、Broadcomの5社です。この5社の業績とバリュエーションを見通せないと指数の予想は成立しない。だから当たらないのは当然、という論理です。
一方で、予想の根拠を把握することは大切だとも述べます。コンセンサスがどういう前提で成り立っているのかを知っていれば、予想外のことが起きた時に投資戦略を大きく変更できるし、違和感があるなら事前に備えを練れる、という考え方です。
EPS成長率の前提が強気すぎる。期待が外れた時にPERが下がりやすい
動画は具体例として、ファクトセットによれば2026年のS&P500のEPS成長率がプラス14.3%と予想されている点を挙げます。プラス14.3%という高成長が実現するなら、PERがわずかに低下しても、プラス11%の指数パフォーマンスが期待できる計算になる、という説明です。
ただし、ここで重要なのは比較です。
2025年の予想EPS成長率がプラス11.5%、2024年の実績EPS成長率がプラス10.4%、2023年の実績EPS成長率がプラス0.5%だったことを踏まえると、2026年はかなり大きな伸びが前提になっていることが分かります。
この前提が崩れると何が起きるのか。動画は、EPS成長率が予想を下回った場合、期待が失望に変わることでPERが大きく低下する可能性が高い、と警戒します。つまり上がる余地を語るというより、下がる時の落差が大きい構造になっている、という見立てです。
さらに、景気がAIインフラ投資と資産効果による個人消費に支えられている状況では、株式市場が急落した場合、個人消費が失速し、景気が悪化しかねないとも述べます。
株価急落はハイパースケーラーにAIインフラ投資の縮小を迫り、それが景気に追加の逆風になる。楽観が前提で回っているからこそ、崩れた時の連鎖が大きい、というロジックです。
ストラテジストはなぜ強気に傾きやすいのか。過去データで見る「外し方」
動画はさらに踏み込み、ストラテジストは弱気予想を出しにくい構造がある、と説明します。2000年以降の25年間で、ストラテジストがS&P500の年間パフォーマンスでマイナスを予想したことは1度もない、という指摘です。
そして象徴的な例として、強気予想が大外れした年が挙げられます。
- 2001年は予想プラス22.9%に対して結果マイナス11.4%
- 2002年は予想プラス10.1%に対して結果マイナス25%
- 2008年は予想プラス12.8%に対して結果マイナス37.6%
なぜ景気後退の直前ほど強気になりやすいのか。動画の説明はシンプルです。
強気相場の最終局面で強気予想を示して当たれば手柄は自分のものになる一方、外れてもみんな間違っていたと言い訳が立つ。
しかし強気相場で自分だけ弱気予想を示して外すと、自分だけが間違った形になり、ストラテジストは職を失いかねない。だから強気に傾きやすい。
そのためウォール街の予測は、順張りの材料というより、逆指標として使ってほしい、というのが動画の強い主張です。
動画後半の具体例。短期売買、AIブームの見立て、コモディティ、ビットコインの扱い方
動画後半では、具体的な投資行動や視聴者質問への回答が続きます。
短期投資の例として、カナダの銀行株やパンアメリカンシルバーを41ドルで取得した、という話が出ます。
利下げ観測の高まりを背景に短期的な株高が期待できること、そしてカップウィズハンドルの買いポイントをブレイクアウトしたことが理由として挙げられます。
売買タイミングの可視化が便利だとして、ムームー証券アプリの機能や、限定ETFの取り扱い、口座開設キャンペーンの投資レポート配布にも触れられています。
AIブームについての質問では、AI関連の中心銘柄はNVIDIAやBroadcomなどの半導体株に加え、MicrosoftやAmazon.com、Meta Platformsなどのハイパースケーラーが含まれると説明されます。
そして、これらは2023年から注目され始めたのではなく、2010年代半ばから注目されてきたため、すでに10年規模の相場になっている、という整理です。
さらに重要なのが、産業の成長と株価は必ずしもイコールではない、という話です。
2000年以降インターネット産業は成長したが、2001年の景気後退後、インターネット関連株はおよそ10年低迷し続けた、という例が出ます。
これと同じように、米国が景気後退に入れば、AI産業が成長する中でもAI関連株が低迷する可能性はある、という見立てにつながります。
景気後退を予想する根拠としては、パートタイム職の人を失業者とみなした広義の失業率が8.7%まで急騰しており、労働市場が明らかに悪化している点が挙げられます。
失業率は一度悪化し始めると景気後退に入る傾向がある、という歴史的な癖を根拠に、今回も回避できずAIバブルも弾けると思う、という主張です。
コモディティについては、金に限定したくないので表現をコモディティへ広げた、という意図が語られます。
次の景気拡大局面では金だけでなく、銀、銅、エネルギーなど様々なコモディティが値上がりすると予想しており、銀山株、銅山株、原油株なども投資対象になる、という視野拡大の提案です。
金については、短期的な調整はあり得るが、2035年から2040年頃までは長期上昇トレンドが続くという予想も述べられます。
ビットコインについては、投資判断はスタイルやリスク許容度によるため一概に言えないとしつつ、自分は買い持ちする方針だと語ります。
本人のポートフォリオでは、ビットコインは時代の潮流に乗れないリスクの備えとして、全体の1%から5%の範囲内で保有している、という具体的な比率が示されます。
また、ビットコイン比率が20%を超えるならハイリスクであり、米国が景気後退に入る前に見直しが必要かもしれない、という注意も入ります。
サンタラリーは上がるかどうかより、上がらない時に市場が何を織り込むかが重要です
動画の結論は、サンタラリーへの期待だけで強気になるのは危うい、という警告に集約されます。サンタラリー期間は統計的にS&P500が平均1.3%上昇し、79%の確率で株高になってきた一方で、サンタが来なかった年は景気後退や大きな調整の前触れになり得る、という見方が示されました。
1979年の2.2%安、1999年の4%安、2007年の2.5%安といった事例が、その説明を補強しています。
同時に、米国の消費者心理は予想91.7に対し89.1と弱く、5ヶ月連続で低下し、期待指数は70.7で11ヶ月連続で80を下回るなど、景気の先行きに赤信号が点滅している可能性が示されました。
ウォール街の来年予想がプラス11%と強気でも、過去には2001年、2002年、2008年のように強気予想が大外れした例があり、ストラテジスト予想は逆指標として扱うべきだ、という主張も強く打ち出されています。
最後に動画は、米国株がバブル局面にあるため天井の時期を正確に当てるのは難しいとしつつ、労働市場悪化を踏まえて年内にも天井をつけ、景気後退を伴う下落相場が始まる可能性を示唆します。
天井から平均15ヶ月後に底打ちしやすいこと、米国株の大きなトレンド転換が3月か10月に起こる傾向があることから、2027年3月頃の底打ちを予想し、S&P500の最大下落率はドル建てで50%、円建てでは60%を見込む、と述べます。
さらに2026年から2040年頃にかけてS&P500の年平均リターンは1桁台前半にとどまり、欧州株、新興国株、コモディティ、暗号資産などを含む国際分散投資の時代になる、という見通しで締めくくられています。


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