※本記事は、YouTube動画「【デンマークの働き方を日本は真似できるのか】」をもとに作成しています。
結論:制度のコピーではなく「マインド」の輸入がカギ
動画の冒頭でも語られている通り、デンマークの働き方をそのまま日本に導入するのは難しい。しかしながら、「やってみなはれ主義」「人間関係のあっさりさ」「フレキシキュリティに基づく柔軟性」など、マインドや文化的な価値観は日本にも応用が可能です。
制度ではなく精神に着目することが、日本企業が新しいカルチャーを作るヒントになります。
デンマークの「やってみなはれ主義」とは?
デンマーク人は「まずやってみる」という姿勢を非常に重視します。
これは歴史的背景から来ている部分もあり、例えばバイキングの冒険精神にも通じると言われています。社会全体が「失敗してもいいから挑戦する」ことを前提に設計されており、企業の文化にも浸透しています。
企業実習制度(インターン)も盛んで、採用も「とりあえずやってみよう」というノリで始まり、3ヶ月で合わなければお互いに別れるといった柔軟さがあります。
「フレキシキュリティ」制度の本質
デンマークの雇用モデルとして有名な「フレキシキュリティ」は、「雇用の柔軟性(フレキシビリティ)」と「生活の安心(セキュリティ)」の両立を意味します。具体的には以下のような構成です。
要素 | 内容 |
---|---|
柔軟な雇用制度 | 転職がしやすく、平均6回も転職する |
手厚い失業保険 | 安心して次のステップに進める制度 |
入社の敷居が低い | 実習やインターンからスタートしやすい |
企業実習中心の再教育 | ブルーカラーだけでなくホワイトカラーにも対応 |
ただし、職業訓練制度の質に関しては実際のところ過大評価されている面もあり、ジョブセンターが機能していないとの指摘もありました。
「主婦」が言いにくい社会
デンマークでは「主婦です」と言うことに対して違和感を持たれる文化があります。
なぜなら、福祉国家である以上、国民は社会に何らかの形で貢献しているべきという価値観が根強いためです。失業手当を受け取る場合も、2週間ごとに就職活動状況を報告する義務があるなど、「働けるのに働かない」は許
されない雰囲気があります。
サービス業と対等な関係性
日本では「お客様は神様」とされがちですが、デンマークではサービス提供者と受け手は対等な関係とされます。お店で買い物をする際も「買ってくれてありがとう」ではなく、「売ってくれてありがとう」という感覚が自然です。
これは労働への敬意が根付いている証でもあります。
硬質な多様性:なぜうまく機能するのか?
デンマーク社会では「多様性」が機能する理由として、「一定水準以上の共通認識と教育水準」があるからだという指摘がなされます。例えば:
- 大学進学率は6割だが卒業率は約3割
- 職業大学などの非アカデミックな道も尊重されている
- 手に職を持つ人(大工など)の社会的地位も高い
つまり、形式的な学歴よりも「職業への誇り」や「専門性」に対する尊重がある社会なのです。
あっさりした人間関係:組織の合理性
デンマークでは、職場の人間関係も非常にあっさりしています。飲み会や会社内イベントへの強制参加は基本的にありません。例えば、新入社員の歓迎パーティーすら行わない会社もあり、それを「アメリカ的すぎる」と批判されることもあります。
このような関係性は、職場を「機能共同体(ゲゼルシャフト)」と見なすという社会の価値観と関係しています。つまり、仲良くなることが前提ではなく、目的を共有して働くことが重視されるのです。
高い税金と安心の生活インフラ
デンマークは平均年収が1000万円を超える一方、税金は所得の50%、消費税は25%と非常に高負担です。年金保険も月額15万円に及ぶこともあり、日本では信じられないような水準です。
しかし、この負担に対して国民の多くが「納得して支払っている」と答えており、「もっと払ってもいい」という人もいるほどです。その背景には、無料の教育(大学まで)や手厚い医療制度といった「見返り」がしっかりと存在していることがあります。
若い世代とスタートアップ文化に可能性
動画内でも言及されているように、日本の若い世代やスタートアップ企業にはデンマーク的な働き方を実践できる土壌があります。フラットな組織、成果重視の評価制度、裁量労働など、柔軟なカルチャーが自然と根付きやすい環境です。
大企業においても、課長・部長クラスがマインドを持ち込むことで、部分的にでも実現する可能性があります。
まとめ:デンマークの「マインド」を参考に、日本の現実に合わせて変えていこう
デンマークの働き方は、制度のコピーでは実現しません。真似できるのは、「やってみなはれ」の精神や人間関係のドライさ、お客様との対等性といった「マインドセット」です。
- 制度を輸入しようとするのではなく、考え方を応用する
- 自分の職場、部署、家庭にできる範囲で少しずつ試してみる
- 経営者・管理職のマインド変化がカルチャーを作る鍵
小さな一歩から、次の「日本型カルチャー」は始まります。
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