トランプ政権の国家安全保障戦略とは何か|モンロー主義への回帰と日本に訪れる大転換のチャンス

本記事は、YouTube動画『トランプの国家安全保障戦略とは?日本も大転換のチャンスを逃すな』の内容を基に構成しています。

目次

トランプ政権の国家戦略は何を変えようとしているのか

動画では、トランプ政権が発表した「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」が、アメリカの世界戦略の大きな転換点になっているという前提から話が始まります。この文書は、形式上は「November 2025」と記され、12月4日に公表されたものだと説明されています。

話者は、この戦略文書が単なる行政文書ではなく、「アメリカが今後どの地域を優先し、どの同盟国に何を求めるのか」を明確に示した指針であり、同時に日本にとっても「大転換のチャンス」を含んでいると強調しています。

とくに象徴的なキーワードとして登場するのが「トランプ・コロラリー・トゥ・ザ・モンロー・ドクトリン(Trump corollary to the Monroe Doctrine)」という表現です。

ここから動画は、アメリカ外交の原点である「モンロー主義(モンロー・ドクトリン)」の歴史に立ち返りつつ、現代版のモンロー主義が何を意味し、それが東アジア、そして日本にどのような影響を与えるのかを丁寧に解説していきます。

(モンロー・ドクトリン)とはどのような考え方か

まず前提として押さえておくべきなのが、19世紀に打ち立てられたアメリカの基本外交方針「モンロー・ドクトリン」です。これは第5代大統領ジェームズ・モンローの政策で、「ヨーロッパとアメリカの相互不干渉」を掲げたものでした。

アメリカ側の論理は非常にシンプルです。


アメリカは南北アメリカ大陸だけで自給自足できる。だからヨーロッパの勢力争いや植民地争いにわざわざ首を突っ込む必要はない。アメリカはヨーロッパに干渉しないから、ヨーロッパもアメリカに干渉しないでほしい——という考え方です。

現在の私たちは、20世紀・21世紀の「世界の警察」としてのアメリカの姿に慣れてしまっていますが、本来のアメリカは「世界の紛争に深入りしたくない内向きな大国」であったという歴史的事実が強調されます。

では、このモンロー主義で誰が困るのかと言えば、それはヨーロッパ側、とくにイギリスです。

アメリカがヨーロッパに干渉してこないということは、イギリスが南北アメリカ大陸に持っていた巨大な権益を失うことを意味します。スペインやポルトガルも同様に打撃を受けます。

さらに、アメリカという国はもともとイギリスから独立した国です。独立後も、アメリカ社会の中にはイギリス系の勢力が深く浸透していました。イギリスにとっては、アメリカにモンロー主義を貫かれては困るため、「アメリカをヨーロッパの戦いに引きずり出す力学」が歴史的に働いてきたという視点が示されます。

20世紀の2度の世界大戦も、もともとアメリカは参戦していませんでした。


しかし、ヨーロッパ、とくにイギリスが勝利を得るためにアメリカの力を必要とし、結果としてアメリカが戦争に巻き込まれていきます。その延長線上に、「世界最強の帝国」「世界の警察」としてのアメリカが成立したという流れです。

しかし、その過程で犠牲になったのは誰かと言えば、一部の資本家を除く大半のアメリカ国民であり、世界中の戦場に送られた若い兵士たちだった、という厳しい指摘がなされています。

トランプ版「門ロ主義」=トランプ・コロラリーの意味

そうした歴史を踏まえたうえで、今回の国家安全保障戦略の中で「トランプ・コロラリー・トゥ・ザ・モンロー・ドクトリン」という言葉が明示されたことの意味が説明されます。これは、19世紀のモンロー主義を現代的に焼き直した「トランプ流の追加条項」のような位置づけだと解説されています。

文書の要点として挙げられるのは、おおまかに次のような方向性です。

まず第1に、「国際機関よりも国家を優先する」という姿勢です。


国連やNATO、EUといった枠組みよりも、アメリカという国家自身の利益を優先させる。必要であれば国連からのコミットメントを減らしたり、脱退を含めて見直すことも辞さないというニュアンスまでにじませています。

第2に、「同盟国との負担分担を見直し、バランス・オブ・パワー(勢力均衡)を維持する」という方針です。
アメリカが一方的に安全保障コストを負担するのではなく、それぞれの同盟国が自国防衛の責任を引き受け、軍事費を増額することを求めています。

第3に、「重要なサプライチェーンを自国側に確保し、アメリカの工業・製造業を復活させる」という目標です。
これは単なる経済政策ではなく、国家安全保障の一部として位置づけられており、「経済安全保障」「産業の国内回帰」といった現在の潮流と重なります。

そして、最も重要なのが「安全保障の最優先事項は西半球(Western Hemisphere)である」と明記された点です。


西半球とは、経度0度のロンドンを基準に地球を東西に分けたとき、その西側に位置する地域を指し、スペインやアフリカの一部も含まれるものの、大半は北米・中南米のアメリカ大陸です。つまり、「南北アメリカ大陸こそがアメリカの安全保障の最優先対象であり、ここを守ることが第一」という姿勢を改めて打ち出したわけです。

これはまさに、「アメリカは本来、アメリカ大陸の防衛に集中すべきだ」というモンロー主義的な発想の現代版と言えます。

東アジアの位置づけ:アメリカにとって「第2の優先順位」

ただし、重要なのは「西半球が最優先」である一方で、「その次の優先事項として東アジアが位置づけられている」という点です。ここで言う東アジアには、日本・中国・韓国などが含まれます。

国家安全保障戦略の東アジアに関する部分では、アメリカは以下のような方向性を示していると説明されます。

  • インセンティブの高いパートナー諸国と協力し、中国との貿易関係のバランスを取り直す
  • 中国の「一帯一路」構想に対抗する形で、グローバルサウスにおける影響力競争を活発化させる
  • 台湾や南シナ海における中国の動きに対して抑止力を強化する

しかし、ここで重要なのは「アメリカ単独ではそれを成し遂げられない」と明言している点です。そのため東アジアの同盟国——とくに日本と韓国——に対し、より大きな役割と負担を求める、という方向がはっきり打ち出されています。

ヘグセス長官が示した「模範的同盟国」と「ただ乗り」の線引き

こうした流れを補強する形で、動画ではヘグセス戦争長官(国防総省の戦争部門トップ)による講演内容が紹介されます。韓国メディア「中央日報」に掲載された記事をもとに、彼の発言のポイントが解説されています。

ヘグセス長官は、韓国を「自国防衛に一層責任を負う模範的同盟国」と評価し、アメリカから特別な優遇を受けると述べたとされています。その一方で、「集団防衛のための役割を十分に果たしていない同盟国は、その結果を甘受しなければならない」とも語っています。

彼は、同盟の安全保障負担の分担こそが国家防衛の核心であり、「ユートピア的な理想主義の時代は終わった」と強調します。


さらに、「同盟国は子どもではない。自らの役割を果たすべきであり、アメリカが単独ですべてを負担することはできない。これ以上の“ただ乗り”は容認しない」とまで踏み込んだ表現を用いています。

ここから見えてくるのは、「防衛費を増額し、自国防衛のために軍事力を高める国は模範的同盟国として評価されるが、そうでない国は優遇されない」という、非常にシビアな線引きです。韓国・イスラエル・ポーランドなどが「模範例」として挙げられ、日本も同じ土俵で評価されることになります。

アメリカの真の狙い:西半球への中国浸透を阻止する

では、アメリカが東アジアにおける同盟国に負担を求める背景には、どのような戦略があるのでしょうか。動画で強調されるのは、「アメリカが本当に恐れているのは、中国が西半球に食い込んでくることだ」という点です。

アメリカは、中国が中南米や北米に影響力を広げることを決して許さない、という姿勢を鮮明にしています。具体例として、

  • ベネズエラへの強い圧力
  • 中国資本が関与しているパナマ運河を「取り戻す」といった主張
  • カナダやメキシコ経由で中国製の麻薬がアメリカに流入することを絶対に容認しない方針

などが挙げられます。

アメリカは「西半球から中国の勢力を排除する」という仕事は自分たちがやる。その代わりに、「東アジアでの中国の軍事的な拡張を食い止める役割は、東アジアの国々自身が担ってほしい」という分業構造を志向している、という見方が示されます。

言い換えれば、「前線は日本や韓国など東アジアの同盟国が担い、アメリカは後方支援や広域戦略で支える」という形です。

北朝鮮よりも「海」に目を向けよ、というメッセージ

興味深いのは、今回の国家安全保障戦略の中で「北朝鮮」にほとんど触れられていないという点です。従来よく使われてきた「朝鮮半島の非核化」という表現も見られないと指摘されています。

むしろ別のニュースでは、「韓国に核保有を認める」方向性が示唆されているとも紹介されます。

これは、韓国に対して「北朝鮮との陸上戦だけを想定するのではなく、海へ出て広域的な役割を果たせ」というメッセージではないか、という解釈が提示されています。

ここで浮かび上がるのが、「海洋防衛」の重要性です。そして、その文脈で必ず名前が挙がるのが日本です。

海軍国家・日本に求められる役割と自衛隊の実力

動画では、日本の自衛隊、特に海上自衛隊の実力についても言及されます。
海上自衛隊は

・潜水艦戦力
・対潜水艦戦力
・機雷戦能力

といった水中・海中戦力の面で、すでに世界トップレベルの実力を持っていると評価されています。中国に対してこの優位性を保ち続ければ、中国が安易に海を越えて軍事行動を起こすことは難しくなります。

ここで重要になるのが「バランス・オブ・パワー(勢力均衡)」という考え方です。


軍事力で圧倒的に上回る必要はなく、「簡単には戦争を仕掛けられないだけのパワーバランス」を維持することが、平和と安定の前提条件になります。

動画の話者は、「軍事力の均衡があるからこそ、経済的な交流や文化的な交流が成り立つ」と指摘します。平和があって初めて経済・文化が成り立つのであって、その逆ではないという考え方です。

台湾有事と日本の「存立危機事態」——トランプ流から見たズレ

日本国内でも、台湾有事をめぐる議論が高まっています。動画では、高市早苗氏の台湾関連発言が例として取り上げられます。

高市氏の説明はおおむね次のような内容だと整理されます。


中国が台湾に侵攻し、台湾海峡やバシー海峡を封鎖するような事態が生じた場合、その封鎖を解こうとしてアメリカ軍と中国軍が衝突する。その結果として、日本の存立が脅かされる状況に至れば、初めて日本の「存立危機事態」として集団的自衛権を行使できる——という枠組みです。

これは、日本政府がこれまで採ってきた立場と大きくは変わらないものです。しかし、トランプ政権の国家戦略の視点から見ると、これでもまだ「消極的すぎる」と受け止められる可能性が高いと指摘されます。

もし中国軍が本当にバシー海峡を封鎖し、その海域を通る日本の船舶の航行まで止めるような事態になれば、それは「アメリカがどうこう」という以前に、日本の「個別的自衛権」の問題ではないのか——という見方です。

つまり、「まず日本が自分の権益と航路を守るために前面に立つべきであり、そのうえでアメリカの支援を得る」という発想が、トランプ流の安全保障観に近いということです。

東アジアとアメリカ:歴史的に見た地政学的つながり

動画はさらに視野を広げ、日米関係と東アジアの安全保障を歴史的に振り返ります。

アメリカと日本の間には太平洋という広大な海が横たわっていますが、「海しかない」とも言えます。海を渡る技術が発達すればするほど、日米の距離は実質的に近づいていきます。


19世紀半ばにペリーが浦賀に来航したことも、その一例です。

20世紀初頭の日露戦争では、東アジアでロシアが強くなりすぎることを恐れたアメリカが、日本を支援しました。その結果、日本がロシアを破り、東アジアの大国として台頭します。

ところが今度は、日本が「目の上のたんこぶ」になり、1920年代から日米の対立が深刻化していきます。それが最終的に1941年の日米戦争(太平洋戦争)として爆発してしまった、という流れです。

真珠湾攻撃で、アメリカはハワイという太平洋の重要拠点を開戦初日に大打撃として受けました。

アメリカは本気で「日本軍がアメリカ西海岸に上陸してくるかもしれない」と恐れ、サンフランシスコやロサンゼルスは守れないので放棄し、ロッキー山脈に防衛線を築く構想まで検討していたと紹介されます。

これほどまでに、東アジアの脅威はアメリカにとって重大な問題だったわけです。その反動として、戦後のアメリカは日本を徹底的に抑え込み、実質的な「占領状態」を長く続けてきました。

しかし今のアメリカには、もはや日本を抑え込み続けるだけの余力はありません。
だからこそ、「日本を同盟国として強く育て、中国を抑え込む役割を担ってほしい」という方向へ舵を切りつつある——これが動画の示す歴史的な位置づけです。

「アメリカに守られる日本」から「自立した日本」への転換

こうした流れを踏まえ、動画では日本の進路についても踏み込んだ議論が展開されます。

かつては「アメリカにくっついていれば日本は安泰だ」と多くの人が考えていました。アメリカが世界最強の超大国であり、その庇護のもとで日本が安全を享受してきたという側面は確かにあります。

しかし、その代償として日本経済は長年にわたり抑え込まれてきた、という問題意識も示されます。アメリカの戦略上、同盟国である日本があまりに強くなりすぎることは好ましくない——その結果、日本の政治・経済にはさまざまな制約がかけられてきたという見方です。

ところが今、アメリカ自身が「世界中を一国で支配・管理し続ける体力」を失いつつあります。
その意味で、今回の国家安全保障戦略は、日本にとって「長年の縛りから解放され、自主独立に向かうチャンス」であるとも言えます。

将来的には、

・在日米軍の負担を段階的に減らすこと
・日米地位協定をより対等な形に改定し、日本の主権を強化すること

といった方向も現実味を帯びてくる可能性があります。ただし、その前提として、「時代が変わったのだ」という認識を日本人自身が持つ必要があると強調されます。

いまだに多くの日本人が、「アメリカに頼らず日本が自立するなんて非現実的だ」という前提から議論している。しかし、むしろ「いつまでもアメリカに頼り続ける」という発想のほうが、現状では非現実的になりつつあるのだ——という逆転した現実を直視すべきだ、というメッセージです。

ここで言う「自主独立」とは、中国軍と完全に対等な軍事力を持つことではありません。
日本から中国に侵略する意図はなく、「中国が海を越えて日本に攻めて来られない程度のパワーバランス」を維持できればよい。そのレベルの防衛力であれば、決して不可能な目標ではないとされています。

軍事だけではない「非軍事的侵略」への警戒

動画の終盤では、「軍事力」だけに目を向けるのではなく、「非軍事的侵略」への視点も必要だと指摘されます。ここで言う非軍事的侵略とは、人口侵略・経済侵略・文化侵略など、移民や経済的依存、情報・文化の浸透などを通じて、じわじわと国の主権や文化が侵食されていく現象を指します。

アメリカの国家安全保障戦略でも、ヨーロッパについては「文明存続の危機」というレベルで懸念が示されていると紹介されます。大量移民や治安・社会統合の問題など、軍事力とは別の形で国家の基盤が揺らいでいるという認識です。

それに比べれば、日本はまだ間に合う段階にある、と動画では語られます。
これまで「現実的」とされてきた政策や価値観が、じつは急速に「非現実的」になりつつある。そうした変化を有権者が認識し、日本の政治がその方向へ転換できれば、まだ日本は十分に自分の国を守ることができる——という希望も示されています。

まとめ:トランプ的門ロ主義の時代、日本はどう動くべきか

トランプ政権の国家安全保障戦略は、単なる政権内文書ではなく、「アメリカが何を守り、何を他国に任せるのか」を明確に線引きした宣言でもあります。

  • 最優先は西半球=南北アメリカ大陸の防衛
  • その次に東アジアが重要地域として位置づけられる
  • 同盟国には、防衛費の増額と自国防衛の責任を強く求める
  • アメリカは中国の西半球への浸透を阻止する一方で、東アジアでの軍事的抑止は日本・韓国などにより大きな役割を委ねる

この構図を前提にすると、日本に求められているのは、「アメリカに守ってもらうだけの存在」から、「自らの海と領土を守り、地域の安定に責任を持つパートナー」へと変わることです。

同時に、軍事力だけでなく、移民・経済・文化といった非軍事的な領域での国家戦略も問われています。
何が現実的で、何がすでに時代遅れなのか。
従来の前提をいったん疑い、「今の世界の力学の中で、日本がどう振る舞うべきか」を冷静に考えることが求められています。

動画は、「アメリカに頼らない日本の自主独立は非現実的だ」と考えるのではなく、「アメリカに頼り続けることこそ非現実的になりつつある」という認識の転換こそが重要だと訴えます。そのうえで、日本は中国と対等に戦う必要はなく、「海を越えて攻めてこられないだけのパワーバランス」を維持すること、そして非軍事的な侵食にも目を光らせることが、これからの核心的な課題であると締めくくられています。

日本にとって、これは厳しい要求であると同時に、「真の意味での独立」を取り戻す大きなチャンスでもあります。本記事を通じて、その問題意識と歴史的背景を理解することが、これからの日本の進路を考えるうえでの第一歩になると言えるでしょう。

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