以下の記事は、元動画のタイトル「【伝説の運用者】ピーターリンチ×バフェット|ティリングハスト流『負けない投資』5原則【S&P500超え】」を基に執筆しています。

結論
ティリングハストの投資哲学は、感情ではなく論理に従い、理解できる範囲で割安かつ堀の強い企業に長期投資することに集約されます。
短期的な値動きや流行に左右されず、誠実な経営と安定した事業に着目し、支払う価格よりも大きな価値を買うことで、S&P500を長期的に上回る実績を残しました。
ティリングハストとは
ティリングハストは、米国フィデリティの「ロープライスド・ストック・ファンド」を長年にわたって運用し、ピーター・リンチから「最も偉大なストックピッカーの一人」と評された人物です。
彼のファンドは、長期的にS&P500を年率3.7ポイント上回るリターンを記録。
弟子筋にあたるリンチや、同時代のウォーレン・バフェットと共に、「堅実で忍耐強いバリュー投資家」として知られています。
負けない投資の5原則
ティリングハストの投資哲学は、次の5つの原則に要約されます。
- 感情的になって投資してはいけない
- 理解できる企業にだけ投資する
- 不誠実または非常識な人物と関わらない
- 流行・過剰負債・コモディティ化企業を避ける
- 最新の“ストーリー銘柄”に飛びつかない
これらは単なる心構えではなく、長期的にリターンを積み上げるための実践的ルールとして位置づけられています。
感情に流されない「システム2」の思考
ティリングハストは、投資判断を「速く直感的に考える脳(システム1)」ではなく、「ゆっくりと分析的に考える脳(システム2)」で行うべきだと説きました。
人は驚きや変化に反応し、利益より損失に敏感に反応します。そのため、値動きの激しい銘柄ほど感情を刺激し、冷静な判断を妨げます。
彼は「退屈な銘柄を保有することこそが報酬をもたらす」と語り、短期的な刺激よりも長期的な安定を重視しました。実際、低ボラティリティ銘柄の方が長期的には高いリターンをもたらす傾向があると指摘しています。
「理解できる範囲」で投資する
ティリングハストの著書『小さく考えるが大金を生む(Big Money Thinks Small)』の核心は、「自分が理解できる範囲で投資せよ」という教えです。
マクロ経済や景気循環の動きから市場全体を読もうとするのは非常に難しく、歴史上最も偉大な経済学者ケインズですら、景気循環に基づく売買では成功できませんでした。
そのため彼は、情報の少ない小型株や地味な産業にこそチャンスがあると考えました。
多角化された大企業ではなく、単純で透明性の高いビジネスに集中することで、真の理解と優位性を得られるというのです。
経営者の「誠実さ」に注目せよ
どれほど魅力的なビジネスでも、経営陣が信頼できなければ投資は成立しません。
ティリングハストは「正直で常識のある人物とだけ投資せよ」と繰り返し説きました。これは、粉飾決算や過剰なストックオプション乱発など、株主を軽視する行動を避けるためです。
実際に成功した投資家の多くは、経営者の資本配分の一貫性、ROIC(投下資本利益率)の継続性、そして株主への誠実さを重視して企業を選別しています。
流行や借金依存企業を避ける
ティリングハストは、「流行に乗ることは破滅の近道」と警鐘を鳴らしています。景気や人気に左右される企業は、価格競争や債務負担で簡単に利益を失うからです。代わりに、競争優位性(堀)を持ち、外部環境に左右されにくい企業を選びます。
経済的な堀とは、価格決定力・ブランド・ネットワーク効果・スイッチングコスト・規模の経済など、持続的に高い利益率を維持できる構造のことです。
ストーリーよりも「数字」で見る
ティリングハストは「物語ではなく、利益を生む仕組みを見ろ」と断言します。SNSやニュースで話題の“ストーリー株”は期待先行になりやすく、実態が伴わないことが多いからです。
そのため、投資判断では「利益利回り(PERの逆数)」や「フリーキャッシュフロー利回り」といった定量的な指標を用いて、支払う価格と得られる価値のバランスを冷静に見極めることを重視しました。
日本株の実例:コスモス薬品
ティリングハストが魅力を感じた日本企業の一例が、ドラッグストア大手のコスモス薬品です。彼は2011年に同社株を購入しており、その後5年間で株価は6倍、長期では10倍(テンバガー)に達しました。
注目したのは、売上高に対する販管費比率が14%と、ウォルマートの19%を下回る圧倒的な低コスト体質でした。
また、高齢化による医薬品需要の安定、地方ドミナンス戦略、在庫回転率の高さ、自社PB商品の強さなど、堅実な堀を持つビジネスモデルが評価されています。
当時のPERはわずか10倍。利益に対して十分に割安な水準であったことも大きな決め手でした。
利益利回りで価値を測る
ティリングハストは、株価の割安・割高を判断する際に「利益利回り」を重視しました。これはPERの逆数であり、企業の利益が株価に対してどの程度の“利回り”を生むかを示します。
ケネス・フレンチの研究によると、利益利回りが高い(=PERが低い)銘柄ほど、長期的に高いリターンをもたらす傾向があります。彼はまた、シラーPERや超過利回りといった長期的なバリュエーション指標も参考にし、米国株が割高な時期には相対的に割安な市場に注目する姿勢を見せました。
売買を減らすことがリターンを高める
ティリングハストは「うまい投資家ほど手数が少ない」と語っています。
投資信託の統計でも、売買回転率が低いファンドほど超過リターンが高い傾向があります。売買を減らせば税金や手数料の負担も減り、複利の力を最大限に活かすことができるからです。
そのため、彼は「四半期ごとの決算確認以外では売買しない」ことを推奨し、感情による行動を徹底的に排除していました。
まとめ:Think Smallで勝つ
ティリングハストの投資は、派手さこそありませんが、再現性と持続性に優れています。
- 理解できる範囲で、小さく・深く・長く考えること。
- 誠実で常識ある経営を選び、堀のある企業を割安に買うこと。
- そして、短期のノイズに動かされず、静かに待つこと。
これらの基本を守ることで、彼は長年にわたりS&P500を上回る成果を上げました。
今の時代の個人投資家にとっても、「Think Small(小さく考える)」という教えは、最も確実な“負けない投資”の原則といえるでしょう。
コメント