ベルギーの多様性が限界に。ブリュッセルを覆う“移民国家化”の真実

ヨーロッパの中心に位置し、「EUの心臓」と呼ばれるベルギー。

人口わずか1200万人ほどの小国ながら、その首都ブリュッセルは現在、人口の約8割が外国にルーツを持つ“移民都市”となっています。


本記事では、ベルギーがなぜここまで極端な多文化社会になったのか、そして今どんな「内部分断」が進んでいるのかをわかりやすく解説します。


目次

ベルギーの“多様性国家”の裏にある驚くべき数字

ベルギー統計局のデータによると、

  • 全国で「国外出身者」は約18%
  • 親が外国人という「移民二世」まで含めると約35%

しかし注目すべきは首都ブリュッセルの状況です。
住民の46%が外国生まれで、二世・三世まで含めると実に約70〜80%が外国ルーツという驚異的な数値。
つまり、ブリュッセルは“ベルギー人より移民が多い都市”になっているのです。

最も多いのはフランス人で、次いでルーマニア人、イタリア人、モロッコ人など。EU圏内からの移住者に加え、北アフリカや中東から来た人々も多く暮らしています。


国の内部でも真っ二つ?「北と南」の長年の対立

ベルギーには、もともと根深い国内分裂が存在します。


国は大きく「北部フランドル地方」と「南部ワロン地方」に分かれ、それぞれが異なる言語・思想・経済構造を持っています。

地域主な言語政治傾向経済の特徴
フランドル地方(北部)オランダ語保守・キリスト教系貿易・テクノロジー産業中心
ワロン地方(南部)フランス語リベラル・社会主義系旧重工業地帯で衰退傾向

19世紀には南部ワロンが産業の中心でしたが、20世紀後半以降は逆転。


現在では北部フランドルが経済を支える立場になり、「なぜ私たちの税金で南を支えなければならないのか」という不満が広がっています。


この経済格差+言語の違い+政治対立が、ベルギーを複雑な“二重国家”にしてしまっているのです。


政府が540日間も不在!?「分断政治」の象徴的事件

2010年の総選挙では、フランドルの独立を掲げる政党「N-VA(ニュー・フラームス・アライアンス)」が勝利しました。


しかし、北と南の政党が協力できず、連立交渉が難航
結果、540日間も正式な政府が存在しないという前代未聞の政治空白が生まれました。
これは「世界最長の政府不在記録」としてギネスにも登録されています。


さらに移民流入で“多層分裂国家”に

もともと国内が分裂していたベルギーに、さらに大量の移民が流入
現在の移民比率は以下の通りです。

  • フランドル地方:27%(約183万人)
  • ワロン地方:25%(約91万人)
  • ブリュッセル:78%(約98万人)

つまり、首都ブリュッセルでは10人中8人が外国ルーツという驚異的な状況です。


移民と治安悪化の関係:ブリュッセルで広がるギャング問題

ワロン地方では産業衰退による貧困が深刻で、貯金できない人が31%と北部の約2倍。


一方、フランドル地方では経済が好調なものの、アントワープ港が欧州最大の麻薬密輸ルートとなり、モロッコ系の「モクロ・マフィア」が暗躍。


そして、最も問題が顕著なのがブリュッセルです。

  • 2024年:銃撃事件92件
  • 2025年:57件(前年より減少も依然多い)

若者や移民コミュニティがギャングに巻き込まれるケースが増加。
イスラム系人口もブリュッセル全体の20〜25%を占め、新生児の名前ランキング上位が「アダム」「モハメッド」「イブラヒム」といったイスラム由来になっています。


逃げ出すベルギー人、増え続ける移民

2015年以降、毎年約3万5,000人のベルギー人が国外へ移住


一方で、毎年約15万人の外国人が流入しており、差し引きで約7万人が純増しています。
わずか1,200万人の国において、これは非常に大きなインパクトです。

しかもこの数字には不法移民は含まれておらず、推定では12〜15万人の不法滞在者がいるとされています。


2024年、新政権が打ち出した「史上最も厳しい移民政策」

ベルギー政府は2024年、移民政策を大幅に転換。

  • 収容施設の倍増
  • 不法滞在者の拘束を可能に
  • 社会保障の悪用を防ぐための言語統合テスト
  • 他国で難民認定を受けた人の再申請を禁止

など、欧州でも最も厳しい移民規制を導入しました。
ただし、政府内でもフランドルは「厳格」、ワロンは「寛容」と立場が異なり、統一した政策運営は依然として難しい状況です。


ベルギーが直面する“多様性の限界”

ベルギーはGDPの47%を税金で徴収する「超高税率国家」。


それでも公共サービスの質は低下しており、優秀層ほど税負担を嫌って国外流出しています。
言語・宗教・思想・政治・経済、あらゆる面で分断されたこの国が今後どうなるのか——。

多様性は本来、社会を豊かにするはずの価値観でした。
しかし、統合の仕組みがないまま「多様性だけが拡大」すれば、国はバラバラになります。
ベルギーは今、その“警告の先例”となっているのです。


まとめ:多様性の理想と現実、その狭間で揺れるベルギー

ベルギーの現状は「多様性の光と影」を同時に映し出しています。


EUの中心都市ブリュッセルが、移民によって文字通り姿を変えた一方、国内では南北の対立が深まり、政治も機能不全に陥ってきました。

本来、多様性とは共生のための手段であるはず。
しかし今のベルギーは、“共生”よりも“分断”が進行している国といえるでしょう。
この現実をどう乗り越えるのか。
それはベルギーだけでなく、移民を受け入れ続ける日本や他の先進国にとっても、避けては通れない問いとなっています。

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