レイ・ダリオが語る「ゴールド投資の本質」と個人投資家が考えるべき視点

本記事は、YouTube動画
『【金価格が上がってる今買っても大丈夫?】レイ・ダリオがゴールド投資の質問に回答』
の内容を基に構成しています。

近年、金(ゴールド)価格は歴史的な高値圏で推移しており、「今から金を買うのは遅いのではないか」「すでに高値掴みになるのでは」と不安を感じている投資家も多いのではないでしょうか。


こうした疑問に対し、世界最大級のヘッジファンドを創設したレイ・ダリオは、短期的な値動きとはまったく異なる視点から明確な答えを示しています。

本記事では、レイ・ダリオが自身のブログで回答したゴールド投資に関する考え方を整理しつつ、個人投資家がどう理解し、どう活かすべきかを丁寧に解説していきます。


目次

レイ・ダリオとは何者か

レイ・ダリオは、世界最大級のヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」の創業者であり、データと歴史に基づくマクロ分析で知られる投資家です。


彼は「オールウェザー・ポートフォリオ」という考え方を提唱し、あらゆる経済環境に耐えうる資産配分を重視してきました。

このオールウェザー戦略では、従来から金を約7.5%配分することが推奨されていましたが、近年ではその比率を10〜15%程度まで引き上げるべきだと発言しています。

金価格が大きく上昇している局面だからこそ、彼の考え方が改めて注目されているのです。


レイ・ダリオにとって金とは何か

「金属」ではなく「最も本質的なお金」

多くの人は金を「貴金属」「商品(コモディティ)」として捉えています。しかし、レイ・ダリオの見方は根本的に異なります。

彼にとって金は、最も健全で基礎的な「お金」です。

現代では、現金や預金、国債が「安全資産」として扱われがちですが、ダリオはそれらを本質的には「信用」や「負債」だと指摘します。


現金は中央銀行の負債、国債は政府の負債であり、いずれも信用の上に成り立っています。

一方、金は違います。
金は誰かの負債ではなく、それ自体で決済が完結する資産です。
印刷されることもなく、発行体の信用悪化によって価値が薄まることもありません。

この違いこそが、ダリオが金を特別視する最大の理由です。


なぜ金なのか

銀やプラチナ、インフレ連動債ではダメなのか

「インフレヘッジなら、銀やプラチナ、インフレ連動国債でも良いのではないか」という疑問に対しても、ダリオは明確に答えています。

銀やプラチナは確かにインフレ局面で機能することがありますが、工業需要の影響を強く受けるため、価格変動が大きくなりやすいという特徴があります。


また、価値保存手段としての歴史的・文化的な普遍性は、金ほど確立されていません。

インフレ連動国債についても、平常時には優れたインフレヘッジ資産であるものの、本質的には政府の負債である点は変わりません。


大規模な債務危機が起きた場合、その価値は発行体の信用に左右されてしまいます。

その点、金はどの国の信用にも依存しない、唯一無二の資産だとダリオは位置づけています。


金価格が上がっている今でも保有すべきなのか

この動画で最も注目されたのが、「すでに金価格が高い今でも保有すべきなのか」という問いです。

レイ・ダリオの答えは非常にシンプルです。
それは「価格が上がったかどうか」ではなく、

「市場の方向性がまったく分からないとして、ポートフォリオの何%を金に配分すべきか」

という問いを自分に投げかけるべきだ、というものです。

つまり、短期的な値動きに賭ける「タクティカル(戦術的)」な投資ではなく、長期的な資産配分という「ストラテジック(戦略的)」な視点で考えるべきだとしています。


金の適正比率は約15%

ダリオの分析では、金は歴史的に株式や債券と負の相関を持ち、特に株式・債券の実質リターンが悪化する局面で効果を発揮してきました。

その結果、ポートフォリオ全体のリスク調整後リターンを最も改善する比率が、約15%だという結論に至っています。

ただし、ここで重要なのは「金はリターンを稼ぐ資産ではない」という点です。
金の長期的な実質リターンは、現金と同程度で約1〜2%とされています。

つまり、金を組み込むことでポートフォリオの安定性は高まる一方、期待リターンは下がりやすいというトレードオフが存在します。


オーバーレイという考え方

レイ・ダリオは、この問題への一つの解決策として「オーバーレイ」という考え方を示しています。

これは、株式や債券の比率を削って金を組み込むのではなく、既存のポートフォリオの上に、追加で金を持つという発想です。

例えば、株式60%、債券40%のポートフォリオを維持したまま、別枠で金を15%保有するイメージです。

結果として、全体のポートフォリオは115%となり、軽いレバレッジがかかった状態になります。
機関投資家やリスクパリティ戦略では、こうした考え方は珍しくありません。

もっとも、個人投資家がそのまま真似する必要はなく、あくまで考え方として理解すれば十分だと動画では補足されています。


金ETFは価格上昇の主因なのか

最近は「個人投資家が金ETFに殺到している」という報道も多く見られます。
しかし、実際の数字を見ると、金価格上昇の主導役は個人投資家ではありません。

最新データでは、世界の金ETFによる保有量は約3,800t前後です。
一方、世界の中央銀行による金保有量は約32,000tに達しており、桁違いの規模となっています。

2022年から2024年にかけて、中央銀行は3年連続で年間約1,000tの純購入を行ってきました。
この流れが、金価格の中長期的な上昇圧力となっていると考えられます。


金は米国債の代わりになり始めているのか

最後に取り上げられているのが、「金は無リスク資産として米国債の代替になりつつあるのか」という問いです。

レイ・ダリオの答えは「はい」です。

特に中央銀行や大手機関投資家の間では、米国債の比率を下げ、その分金の保有比率を高める動きが見られています。


歴史的に見れば、債務資産の最大のリスクはデフォルトか、インフレによる価値の目減りです。

一方、金は誰かの約束に依存せず、それ自体が価値を持つ資産です。
1750年以降に存在した通貨の約80%が消滅、もしくは大幅に価値を失ってきたという歴史を踏まえれば、金の役割は極めて示唆的だと言えるでしょう。


まとめ

「高いか安いか」ではなく「なぜ持つのか」を考える

レイ・ダリオのゴールド投資論から見えてくるのは、金は値上がり益を狙う資産ではなく、システム崩壊リスクに備える保険だという点です。

価格が上がっている今でも買うべきかどうかは、「相場観」で決めるものではありません。
自分のポートフォリオにおいて、どれだけの防御力が必要なのかを考え、その上で適切な比率を決めることが重要です。

短期的な調整はあっても、中央銀行主導の長期トレンドが続く限り、金の役割は今後も小さくならない可能性があります。


金投資を検討している方は、ぜひ「価格」ではなく「役割」という視点から考えてみてください。

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