本記事はYouTube動画「完全なるロシア目線で見るウクライナ侵攻とは?」を基にしています。
日本の報道ではロシアによる「一方的な侵略」という表現が主流ですが、ロシア国内や支持国の言論空間では全く異なる論理が語られています。
ここでは、あえてロシア目線に立ち、歴史観、安全保障観、経済や世界秩序の見方を整理します。
その上で、国際情勢の見方がいかに多面的であるかを理解することが狙いです。
ロシアの歴史観:ウクライナは「同胞の地」
プーチン大統領は2021年に「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について」という論文を発表しました。
- ロシア人・ウクライナ人・ベラルーシ人は言語・文化・信仰を共有する一体の民族
- 起源は1000年以上前の「キエフ・ルーシ」国家にある
- キエフは「ロシアの母なる都市」とされる精神的な故郷
この視点では、ソ連崩壊後に形成されたウクライナの国境は「不自然」であり、歴史共同体を引き裂いた西側の策略だと位置づけられます。
安全保障観:NATO拡大は「裏切り」
ロシアが軍事行動に踏み切った理由の1つは「NATOの脅威」です。
- 1990年、米国務長官ベーカーが「NATOは東方拡大しない」と口約束(文書化されず)
- しかしその後NATOは5回拡大し、ロシア国境に迫った
- 特にウクライナの加盟は「レッドライン」
モスクワからウクライナ国境までは最短450km。ミサイル配備されれば首都は直ちに射程圏内です。
ロシアにとってウクライナ加盟は、まさに「喉元にナイフを突きつけられる」事態でした。
ドンバス紛争と「同胞解放」
侵攻のもう一つの理由が「同胞保護」です。
- 2014年、親欧米政権が誕生 → 親ロシア派地域が反発し武力衝突
- 以降8年間の「ドンバス紛争」で死者は約1万~1.5万人
- ウクライナ軍兵士:約4400人
- 親ロシア派武装勢力:約6500人
- 民間人:約3400人
ロシアはこの民間人犠牲を「ジェノサイド」と批判。欧米が仲介した「ミンスク合意」も履行されず、不信感が頂点に達しました。
経済制裁とロシアの対応
欧米は2022年以降、歴史的規模の経済制裁を実施しました。
- SWIFT排除など金融制裁
- 欧米企業の撤退
しかしロシアは中国・インドなどとの関係強化で代替。
IMFも「2022〜2024年にロシア経済は成長」と認めています。
軍需産業の拡大も相まって、失業率は歴史的低水準に。制裁はロシア経済の崩壊には至っていません。
ロシアの最終目標:新しい世界秩序
プーチン政権の掲げる究極の目標は「単極支配の終焉と多極化世界の構築」です。
- 米国中心の一極支配を終わらせる
- 複数の大国(ロシア・中国・インドなど)が対等に共存
- BRICS拡大(2025年時点で11か国に) → G7を購買力ベースGDPで上回る
ロシアは戦争を通じて「グローバルサウス」の支持を得ており、制裁に加わらない国も多数存在します。
和平交渉の壁
- ロシアの条件
- 占領地(クリミア・ドンバス等)のロシア領編入を承認
- ウクライナの永続的中立化(NATO不参加)
- 非軍事化
- ネオナチ思想の排除
- ウクライナの条件
- 1991年国境線への復帰(クリミア含む)
- ロシア軍の完全撤退
- 再侵攻防止のための軍備強化
両者の条件は全く噛み合わず、外交解決は困難です。
ロシアは「和平を望んだが相手が拒否した」と正当性を演出する戦略をとっています。
まとめ:ロシア視点を理解する意味
ロシアにとってウクライナ侵攻は、
- 歴史的同胞を守る戦い
- NATO拡大からの安全保障防衛
- 欧米一極支配への抵抗
といった大義のある戦争だと説明されています。
もちろん、だからといって軍事侵攻が正当化されるわけではありません。
しかし一方の視点だけではなく、ロシア側の論理を知ることは国際情勢を多面的に理解する上で重要です。
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