この記事は、YouTube動画「【機関投資家】農林中金についてお話します!世界最大のヘッジファンドの問題点他」の内容をもとにまとめています。
2025年4月、日本時間で米国債が急落したタイミングに「農林中央金庫(農林中金)」が再び注目の的になりました。SNSやメディア上では「また農中がやらかした」との声も多く、過去の損失問題も蒸し返されています。
では、本当に農中は運用が下手なのか?その根本原因と実態を探っていきます。
結論:農林中金は「下手」なのではなく「制約が厳しすぎる」だけ
農中が失敗しがちに見える理由は、リスクの取り方や資金の性質に大きな制約があるためです。
具体的には、農中が運用している資金は、JA(農協)などの短期資金であり、これは長期運用に向いていません。しかし、その制約下でも収益を確保するために、リスクの高いデリバティブや証券化商品(CLO、CDSなど)に依存する傾向があります。
これにより、表面的には「失敗が多い」「運用が下手」と見られがちですが、実際には背負っている構造的な問題こそが原因です。
農林中金に対する世間のイメージと実態
農中は過去にもリーマンショックや2023年の巨額損失などで話題になりました。このため、「やらかし系金融機関」というレッテルが貼られてしまっています。
これはドイツ銀行と同様で、何か問題があるたびに「またドイツ銀行がやばいのでは?」と囁かれるのと同じ構図です。ある意味、企業としての「キャラクター」が固定化されているといえるでしょう。
日本生命との比較でわかる、運用戦略の違い
例えば日本生命(ニッセイ)などの生命保険会社は、契約者から預かる資金が長期のため、長期国債や株式など伝統的な資産での運用が可能です。そのためリスクを取っても慌てて売却する必要がなく、デリバティブへの依存度も低いです。
一方の農中は、短期資金を運用する必要があり、収益確保のためにオルタナティブ資産やデリバティブへの依存が強まる構造になっています。
この「資金の性質の違い」が、両者のリスク許容度と運用方針の根本的な違いを生んでいるのです。
「筋が悪い」運用とは何か?
動画の中では、過去にオルタナティブ運用に対して「筋が悪い」と一刀両断した元CIO(最高投資責任者)の話も紹介されています。
これは、伝統的な資産で堂々と勝負すべきだというメッセージであり、「ゼロサムゲーム」とされるデリバティブに頼る運用の限界を示唆しています。
結果として、農中の運用チームがいくら努力しても、構造的に「筋が悪い戦い方」を強いられているのが実情です。
米国債売りの「犯人探し」と情報の読み解き方
4月9日の米国債急落に際して、SNSでは「農中が投げ売りしたのでは?」という声が広がりました。これについては、インフルエンサーの間でも大きな注目を集めています。
ただし、情報の伝わり方には業界特有の事情があります。証券会社との取引内容が噂として広がる場合もありますが、実際には「情報漏洩」ではなく、みんなが似たようなポジションを取っているために「察し」がつくという側面もあります。
特に、米国債と金利スワップを組み合わせた「アセットスワップ」という商品は、日本の金融機関では広く使われており、農中が突出して大量に持っていることも業界内では周知の事実です。
「売ったのは農中ではなく別の地銀?」という視点も
コメントの中には、「急いで売ったのは海外に拠点を持たない地方銀行では?」という指摘もありました。確かに、日本時間の早朝に急いで売るような行動は、時差の影響を受けやすい拠点のない機関投資家である可能性もあります。
しかし、たとえ海外拠点を持っていても、実際の運用は日本側で発注している場合も多く、判断には慎重さが求められます。
今後の課題と提案
動画では最後に、農中のような金融機関にも「伝統的資産でのリスク許容度を広げる改革」が必要ではないか、という提案がされていました。
例えば日本株などをもっと活用し、少しぐらい評価損が出ても焦らず長期的にリターンを狙うようなスタイルが、結果的に「筋の良い運用」になるかもしれません。
まとめ
農林中金の問題は、単なる運用スキルの問題ではなく、構造的な制約に起因するものです。
- 短期資金中心の運用体制
- 高収益を求められるプレッシャー
- それによるデリバティブ・オルタナティブ依存
- 結果的な「やらかしキャラ」の定着
これらを理解することで、農中の運用に対する批判がやや過剰であることも見えてきます。
とはいえ、制度的な制約を見直し、より健全で筋の通った資産運用の道筋を探ることが、今後の大きな課題となるでしょう。
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