本記事は、YouTube動画「【中国経済】9月から社会保険料の徴収強化へ!年金財源枯渇問題がいよいよ先送りできない状況に!」を基にまとめています。
中国で9月1日から社会保険料の徴収が厳格化されます。これにより、多くの企業や労働者が追加の負担を強いられる見通しで、中国経済への影響が注目されています。背景には、中国の急速な少子高齢化と年金財源の枯渇という深刻な問題があります。
結論:中国は「年金財源の先送り」がもうできない状況に
中国の社会保障制度は、少子高齢化の影響で2035年には枯渇すると以前から予測されてきました。
今回の徴収強化は、この問題への「先送り」が限界に達したことを示しています。
- 企業や国民が社会保険料を負担 → 消費や投資の余力が減少 → 景気の下押し圧力
- 政府が財政で穴埋め → 財政赤字拡大 → 将来の持続可能性に不安
つまり「誰が負担しても痛みがある」状態なのです。
中国の社会保険料、これまでの実態
社会保険料は本来、企業と従業員が負担する仕組みですが、中国では長年きちんと徴収されていませんでした。
- 6000社を対象にした調査では、規則を完全に守っていたのはわずか28.4%
- 多くの企業は「払わない」「一部しか払わない」という形で逃れていた
その背景には、単なる不正だけでなく「制度への不信感」があります。
例えば、2024年には13の省で約400億元(日本円で約8000億円)が年金基金から流用されていたことが発覚。
こうした事件が「どうせ年金は信用できない」という意識を広げ、納付率を下げてきたのです。
中国年金制度の危機
中国は急速な高齢化に直面しています。
- 少子化により労働人口が減少
- 高齢者人口が急増
- 2035年には年金積立金が枯渇するとの予測
さらに2020年のコロナ禍では企業負担を軽減するため社会保険料を免除した結果、財源不足はさらに前倒しで深刻化しました。
今回の徴収強化が意味するもの
最高人民法院(最高裁に相当)が「社会保険料を回避するのは違法」と判断したことを受け、徴収が本格化します。
フランスのソシエテ・ジェネラル銀行の試算によれば、今後の負担増はGDPの約1%、金額にして1900億ドル(約30兆円)規模にのぼる可能性があります。
これは企業や個人の消費・投資余力を削り、中国経済の成長率を押し下げるリスクがあります。特に中小企業はこれまで支払いを回避してきた例が多く、影響は甚大と予想されます。
中国経済への影響
中国のGDP成長率は近年鈍化傾向にあります。
- 2023年第3四半期:+4.6%
- 第4四半期:+5.4%
- 2025年第1四半期:+5.4%
- 第2四半期:+5.2%(減速)
景気刺激策で一時的に消費が押し上げられましたが、その反動で需要が落ち込んでいる状況です。
このタイミングで社会保険料負担が加われば、さらに失速する懸念があります。
国際的な比較:社会保障制度は世界共通の悩み
中国だけでなく、多くの国が少子高齢化に直面しています。
- フランス:年金改革に長年取り組むが進展せず、デモも頻発
- イギリス:国民医療制度(NHS)の改革に苦戦
- 日本:年金・医療・介護の持続可能性が常に課題
中国も同じように「持続不可能な制度」との戦いを迫られているのです。
今後の展望と課題
- 社会保険料の徴収強化で年金財源は一時的に安定する
- しかし消費・投資の減少により景気は悪化
- 政府は再び財政出動による景気刺激策を迫られる可能性大
- 長期的には「社会保障制度の抜本改革」が不可避
まとめ
- 中国は9月から社会保険料徴収を強化し、年金財源問題に本格的に取り組み始めた
- しかし負担増は企業や個人の消費を圧迫し、景気を悪化させるリスクが高い
- 少子高齢化は中国だけでなく世界共通の課題であり、抜本的な改革なしには持続不可能
中国経済の将来を占ううえで、この「社会保障制度改革」が最重要テーマの一つになりそうです。
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