本記事は、YouTube動画『利回り15%を謳う「ボロ戸建て投資」が怪しすぎたので、田端がマジレスしてきました。』の内容を基に構成しています。
導入:利回り15%をうたう「ボロ戸建て投資」に田端慎太郎氏がマジレス
近年、投資ブームの高まりとともに、不動産投資の世界にもさまざまな「高利回り商品」が登場しています。なかでも「利回り15%」「ボロ戸建て投資」といった、耳障りの良い言葉を掲げる商品には、投資家の関心と同時に不信感も集まっています。
動画では、個人投資家としても知られる田端慎太郎氏が、群馬県を拠点に事業を展開する「クールコネクト」の代表をゲストに招き、この「利回り15%」をうたうボロ戸建て投資の実態について、公開の場で徹底的に突っ込みを入れています。
案件動画でありながら、遠慮なく疑問点をぶつける形式となっているのが特徴です。
投資家目線から見た収益構造の妥当性、外国人労働者を対象とした住宅スキームの持続可能性、さらには倫理的な観点まで、さまざまな論点が提示されています。
本記事では、その内容を初心者にも分かるように整理しながら、不動産投資としてのリスクやポイントを丁寧に解説していきます。
地方を支える外国人労働者と「住まい」の問題
まず押さえておきたいのは、この投資商品の前提にある「外国人労働者」と「地方の人手不足」の構図です。
クールコネクトは群馬県の伊勢崎市を拠点とし、本業は野菜の生産と卸売です。
その一方で、不動産事業として「空き家を活用した収益不動産の販売」を行っています。具体的には、地方の古い戸建て住宅(いわゆるボロ戸建て)を買い取り、修繕し、外国人労働者向けのシェアハウス・社員寮として利用。そのうえで、賃貸事業として投資家に販売するというスキームです。
ここでの入居者は、主に製造業や農業など、日本の産業インフラを支えている外国人労働者です。
地方の現場では、外国人がいなければ事業が成り立たないケースも多く、実態としては「外国人抜きでは回らない」という状況が広がっています。
一方で、外国人技能実習生や特定技能制度は、建前と実態のギャップがたびたび問題視されてきました。本来は「技能実習」「学び」を目的とした制度でありながら、実態としては安価な労働力として活用されている場面も多く、最低賃金で働きながら、住居を自由に選べないケースも少なくありません。
田端氏は、こうした制度の構造的な問題に触れながら、「そもそも家を自由に選べないという前提そのものが、人権的にどうなのか」「この前提が崩れたときに、このスキーム自体は持続可能なのか」という根本的な疑問を投げかけています。
投資商品の概要:クールコネクトの「外国人シェアハウス投資」とは
収益構造の基本イメージ
クールコネクトが手掛けるボロ戸建て投資は、ざっくり言えば「地方の古い一戸建てを安く仕入れ、修繕し、外国人労働者向けの社員寮として企業にまとめて貸し出し、その賃料収入を投資家に還元する」という仕組みです。
物件のイメージとしては、地方の平屋や2階建ての戸建てを買い取り、一定の修繕を施したうえで、5人から8人程度が居住できるように間取りを調整します。
現状、外国人労働者の住環境には「タコ部屋」のような劣悪なケースも少なくありませんが、クールコネクトでは間仕切りを設けるなど、一定のプライバシーや個人スペースを確保するようにしていると説明しています。
賃貸借契約は、外国人個人との直接契約ではなく、彼らを雇用する企業とのBtoB契約の形を取ります。これは、特定技能などの在留資格制度上、外国人個人が直接賃貸契約を結ぶことが難しい側面もあるためです。
投資家から見た価格感と利回り
動画で示されたイメージでは、物件価格はおおむね600万円から1000万円程度とされています。
田端氏は「地方のボロ戸建てを100万〜300万円程度で仕入れ、100万〜200万円ほど修繕して500万円くらいのものを1000万円で売る、そんな構図ではないか」と推測しています。
表面利回りについては、15%程度をうたっており、単純計算では1000万円の物件に対して年間150万円前後の家賃収入が想定されます。月額にすると12万円台となり、6人が入居すると1人あたり2万円台の負担感というイメージです。
この表面利回りをベースにすると、「6年程度で元本回収が可能」とクールコネクト側は説明します。ただし、田端氏はここで「回収とは何を指しているのか」「表面利回りと実質利回りは違う」といった点を丁寧に突っ込んでいます。
固定資産税や空室リスク、修繕費、管理費などを考慮すると、実際の回収期間は長くなる可能性があります。また、物件を現金で買う投資家が多い一方で、金融機関の担保評価がどの程度付くのかという点も、重要な判断材料になります。
法人との契約とサブリースの仕組み
入居者は企業で働く外国人労働者ですが、賃貸借契約の相手はあくまで企業です。
契約期間は5年程度が想定され、途中解約リスクはゼロではないものの、クールコネクトが管理会社として間に入り、新たな入居先企業を探すと説明しています。
さらに一部物件では、クールコネクトが投資家から物件を借り上げる「サブリース」形式も採用しています。投資家にとっては家賃収入の安定性が高まる一方で、社会的には過去にサブリース契約を巡るトラブルが多かったこともあり、「家賃保証が将来どの程度維持されるのか」という点は慎重に見る必要があります。
田端慎太郎氏が指摘した主なリスクと論点
動画の中心部分では、田端氏が投資家目線・社会的観点から、次々と疑問を投げかけています。その主なポイントを整理すると、次のようになります。
制度・政策リスク:特定技能・外国人受け入れ政策の行方
まず大きな論点が「外国人労働者制度自体の将来」です。技能実習制度は廃止される方向で議論が進んでおり、今後は特定技能が中心になると説明されています。
しかし、田端氏は「そもそも特定技能制度自体が5年後、10年後も同じ形で存在しているのか」「最低賃金が上がり、円安が進めば、そもそも日本で働く魅力が薄れ、外国人が来なくなる可能性もあるのではないか」と指摘します。
さらに、制度が本来の建前どおりに改善され、外国人の人権や待遇が向上した場合、彼らも「普通に1人暮らしをしたい」というニーズを持つようになります。
そのとき、日本人が住まないような物件に、外国人だからという理由だけで住み続けなければならない構図は、いずれ成り立たなくなるのではないか、という問題提起です。
経済リスク:利回りと元本回収、出口戦略の不透明さ
投資家目線で見ると、利回り15%という数字は魅力的に映ります。ただし、それはあくまで表面利回りであり、税金や空室、修繕、管理費などを差し引いた実質利回りとは異なります。
また、ボロ戸建てを活用する以上、建物自体の価値は時間とともに目減りしていきます。
クールコネクト側は「10年程度を運用想定とし、最初の5〜6年で建物分を回収し、その後の数年で利益を得る」と説明しますが、その後の出口戦略は大きな課題として残ります。
将来的には用途変更や土地活用(更地にしてマンションなどに建て替える)といった選択肢も想定されていますが、これは追加投資を前提とした別のプロジェクトに近く、現在の投資商品とは切り離して考えるべき部分でもあります。
土地の価値と「実質元本」の考え方
一方で、田端氏は途中から「土地価値」という視点からも整理を試みています。上物(建物)はほぼゼロと見なし、土地に一定の価値が残る前提で考えた場合、「取り返すべき元本は実質的には総額の半分程度」という見方もできます。
例えば、1000万円の投資額のうち、土地として500万円程度の価値が将来も残るとすれば、家賃収入で回収すべきは残りの500万円という考え方です。
その場合、表面利回り15%で5年間運用すれば、家賃収入累計が75%分となり、「建物部分の元本はおおむね回収できる」という計算になります。
このように整理すると、「土地で最低限の出口が担保されている前提なら、利回り15%の意味合いも理解できる」という見方も成り立ちますが、これはあくまでその土地に本当にそれだけの価値がある場合に限られます。
サブリース問題と情報開示の必要性
田端氏が特に強調しているのは、「この商品を買う投資家が、どこまでリスクを理解しているのか」という点です。不動産投資は自己責任が原則であり、売り手としてはきちんとリスクを説明したうえで販売すべきだという立場です。
サブリースについても、過去に家賃保証の減額や契約条件の変更を巡るトラブルが多数報じられてきた経緯があります。
将来的に家賃の見直しが行われる可能性があることや、マーケット環境次第で利回りが変動することは、あらかじめ前提として投資家に伝えるべきだと指摘しています。
また、不動産投資としては本来、「どの場所にある物件なのか」「人口動態はどうか」「周辺にどのようなインフラがあるか」といった、土地そのもののポテンシャルを評価することが重要です。
田端氏は「外国人労働者向け社員寮」というストーリーだけでなく、純粋な不動産としての評価軸を明示すべきだと提案しています。
追加解説:高利回り不動産投資を検討する際のチェックポイント
ここからは、動画の内容を踏まえつつ、類似の「高利回り不動産投資」を検討する際に初心者が意識しておきたいポイントを整理します。
まず、表面利回りと実質利回りの違いを理解することが重要です。
表面利回りは単純に「年間家賃収入 ÷ 物件価格」で計算されますが、実際にはここから固定資産税、修繕費、管理費、空室期間、保険料などが差し引かれます。表面利回りが高く見えても、これらを考慮すると実質利回りは大きく下がることがあります。
次に、出口戦略を具体的にイメージできるかどうかです。運用期間を何年と想定しているのか、その後も賃貸を続けられるのか、売却する場合にどのような買い手が想定されるのか、といった点は投資判断の核心部分です。
さらに、今回のように特定の制度や属性(外国人技能実習生、特定技能など)に依存するスキームでは、その制度が変わったときにどうなるかを冷静に考える必要があります。
制度が改善され待遇が良くなれば、住まいの水準に対する期待値も上がります。そのときに、現在の物件が入居者にとって魅力的な選択肢であり続けるのかどうかは、慎重に検討すべきポイントです。
サブリースについても、「家賃保証が永続的に続く」と考えるのではなく、「市場環境の変化に応じて見直される可能性がある」という前提で捉えることが現実的です。
過去の事例を踏まえると、保証家賃の引き下げや契約条件の変更が行われるリスクを完全に排除することはできません。
最後に、「高利回り」の背景にどのような事情があるのかを自分なりに咀嚼する姿勢が大切です。
動画内で田端氏が例え話として挙げているように、利回りだけを追いかける姿勢は「数字だけに目を奪われた状態」に近くなりがちです。なぜその利回りが実現可能なのか、その裏側にどのようなリスクや構造があるのかを理解したうえで判断することが、長期的に見て自分を守ることにつながります。
まとめ:利回り15%の甘い言葉より「構造」と「リスク」を見る
本記事では、利回り15%をうたう「ボロ戸建て投資」について、動画での対話内容を基に、その仕組みとリスク、背景にある社会的文脈を整理してきました。
クールコネクトのスキームは、地方の人手不足、外国人労働者の住環境問題、農業の収益構造といった、現代日本が抱える課題と深く結びついています。
その意味で、単純な「怪しい投資話」と片付けられない側面もあります。一方で、投資家にとっては、制度依存性、出口戦略の不透明さ、サブリースのリスクなど、慎重に検討すべき点が多い商品でもあります。
田端慎太郎氏は、こうした構造やリスクをできるだけ可視化し、「リスクを理解したうえで、それでも面白いと思う人が自己責任で参加するなら、それは否定しない」というスタンスを示しています。
高利回りの商品に出会ったときこそ、数字だけで判断するのではなく、
・どのような仕組みでその利回りが生まれているのか
・前提としている制度や環境は将来どう変わりうるのか
・自分はどの程度のリスクまで許容できるのか
といった点を一つずつ確認していくことが重要です。
投資ブームの中で情報も商品もあふれる時代だからこそ、「おいしそうな数字」ではなく、その裏側にある「構造」と「リスク」を冷静に見極める姿勢が、長く生き残る投資家への第一歩だと言えるでしょう。


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