本記事は、YouTube動画『【ベネズエラ】モハPchの見解!米国によるベネズエラ攻撃による世界経済への影響について』の内容を基に構成しています。
2026年1月3日、米国がベネズエラを攻撃し、マドロ大統領が拘束されたとされる報道が流れました。
こうした地政学イベントが起きると、多くの投資家がまず気にするのが原油価格です。なぜなら、ベネズエラは世界有数の石油埋蔵国として知られており、政権や利権の変化が供給増減に直結しやすいからです。
ところが動画では、1月5日の市場反応として「原油価格は大きく動かなかった」という点が強調されます。
世間では「米国が支配すれば増産が進み、原油が下がるのでは」という見方も出がちですが、マーケットは短期的にはそこまで単純に反応しません。
本記事では、動画の主張を軸に、なぜ原油が大きく下がらなかったのか、そしてこの出来事が短期では小さく見えても長期では大きな変化につながり得る理由を、初心者にも分かる形で整理します。
金融市場が最も注目したのは「原油」だった
動画の結論を先に言うと、今回の一件が金融市場に与える影響として最も注目度が高いのは、世界経済全体というより原油市場です。
ベネズエラは近年のGDP規模で見ると世界の中で上位ではなく、経済そのものが世界全体を揺らすほどの存在ではありません。
一方で、原油の埋蔵量は世界一と言われることが多く、ここが動くと「将来の供給」が変わる可能性があるため、原油が焦点になりやすいという整理です。
この見立てはとても重要です。
世界経済への影響を考えるとき、国の規模だけで判断してしまうと見落としが起きます。経済規模が小さくても、資源や海上輸送路、地政学上の位置づけによって、価格形成に影響し得るからです。
ベネズエラの規模は小さくても、石油というカードは大きい
ベネズエラは長年、政治や経済が不安定で、ハイパーインフレが話題になった国でもあります。
こうした国で政権が揺らぐと、通常は資本流出や治安悪化、設備投資の停滞が起きやすく、短期的には「供給が増える」というより「供給が不安定になる」方向に傾きがちです。
それでも今回、「米国の支配下に置かれれば増産が進み、原油価格が下がるのでは」という見方が出たのは、埋蔵量の大きさが背景にあります。
埋蔵量はあくまで地下に眠る資源の量であり、そこから実際に市場に供給するには、生産設備、輸送、精製、資金、技術、人材、そして政治的安定が必要です。
つまり、埋蔵量が大きいことは長期的な潜在力を示しますが、短期的な供給量を保証するものではありません。ここが、原油価格が大きく動かなかった理由の核心につながっていきます。
なぜ原油価格は下がらなかったのか
原油価格の反応:数字だけ見ると「下げそうで下げない」
動画では、WTI原油の1月2日終値が57.32ドルで、1月5日の取引開始直後に一時57ドルを下回る場面はあったものの、すぐに戻し、その後はむしろ上昇に転じる局面もあり、結局「ほとんど下がらなかった」と説明しています。
ここで初心者が持ちやすい疑問はシンプルです。米国が影響力を強めて増産が進むなら、供給増で価格は下がるはずではないのか、という疑問です。
動画の答えは、増産は簡単ではなく、時間がかかると見られているから、というものです。市場はニュースを見て反応しますが、同時に「それが現実の供給に反映されるまでの時間」を値段に織り込みます。短期間で供給が増えないなら、短期の価格は動きにくいという理屈です。
ベネズエラの原油生産が減った理由:制裁と投資不足と人材流出
動画では、ベネズエラの原油生産がこの10年ほどで大きく落ち込んだ要因として、経済制裁、欧米企業の締め出し、設備投資不足、技術者など人材の流出を挙げています。
その結果、生産量は約10年前と比べて4割程度まで減ってきた、という説明です。
ここで重要なのは、生産量が減った原因が単なる一時的なトラブルではなく、長期の構造問題として積み重なっている点です。
石油は、井戸を掘って終わりではありません。設備は劣化しますし、メンテナンスが止まれば稼働率が落ち、技術者が抜ければ復旧が遅れます。投資が止まった国の生産能力を回復させるには、通常それなりの時間がかかります。
超重質原油の難しさ:掘れれば売れる、ではない
動画の中で特に具体的なのが、ベネズエラの原油の多くが超重質原油だという点です。超重質原油は常温ではアスファルトに近い状態になることもあり、運搬や加工が難しく、コストもかかります。
一般に、軽質油に比べて重質油は精製工程が複雑になりがちで、設備投資が必要になります。
さらに、輸送や希釈材の確保など、周辺インフラも整っていないと、生産だけ増やしても市場に流しにくいという問題が出ます。
このため、仮に米国企業が関与して設備投資を行い、生産体制を整えようとしても、時間がかかるだろうという見方が強い。だから短期の需給バランスは大きくは変わらず、原油価格も大きく反応しなかった、というのが動画の筋です。
今回の件のもう1つの焦点は「中国」、ただし短期の影響は限定的
動画は、原油そのものの話に加えて、中国への影響も論点として提示します。
ベネズエラの輸出先は中国が中心、しかし中国全体から見ると比率は小さい
動画では、2025年11月時点でベネズエラの原油輸出の8割が中国向けとされ、近年も7割から8割が中国向けだったと説明されています。
一方で、中国の原油輸入全体に占めるベネズエラの比率は限定的で、2024年時点で0.2%に過ぎないとも述べられています。
この2つは矛盾しません。
ベネズエラ側から見れば輸出先が中国に偏っているが、中国側から見ればベネズエラは多数ある調達先の1つにすぎない、という構造です。したがって、中国がベネズエラから原油を買えなくなったとしても、中国経済全体にすぐ大きなダメージが出るわけではない、という見立てになります。
ただし融資の問題が残る:600億ドル規模の関係
動画では、中国が過去15年で約600億ドル程度の融資をベネズエラに提供してきた、という点も語られます。返済能力が乏しいため、原油で返済しているとされる構図があり、ここが変化すると、中国にとっては「影響力の低下」という意味合いが強くなる、という整理です。
ただ、これも短期で中国GDPを押し下げるというより、地政学的なプレゼンスや資源外交のカードが削られる、という長期の話になりやすい、というのが動画のニュアンスです。
短期より長期が本丸、米国は原油市場とドルの影響力を強めたいのか
動画が最も強く打ち出しているのは、「短期の価格変動」より「長期の構造変化」です。原油価格が当日に大きく動かなかったからといって、どうでもいい話ではない。むしろ、長期で見ると大きな変化につながり得る、という視点です。
米国が原油への影響力を強めると何が起きるのか
動画の主張は、もしベネズエラが米国の思惑通りに動き、増産体制が整い、米国が関与できる余地が増えるなら、米国が原油価格への影響力を強めることを意味する、というものです。
ここで歴史的背景を足すと、戦後から1970年代にかけて、世界の石油ビジネスは欧米の石油企業が大きな影響力を持っていた時代がありました。その後、産油国側の発言力が増し、OPECの存在感も高まり、石油の政治性が強まっていきます。
そして現代では、BRICSやグローバルサウスの存在感が増し、「脱ドル」や「人民元での取引」といった話題も出るようになりました。動画は、そうした潮流に対して、米国が「原油は米国が支配する」という強い意思を示したのではないか、と見ています。
原油とドルはつながっている:基軸通貨の地位を守る発想
原油は国際的に最も取引量が大きい商品の1つであり、決済通貨の影響力にもつながりやすい資産です。原油の取引通貨や価格形成に対する影響力が強い国は、金融面でも優位に立ちやすい、という考え方があります。
動画は、軍事力も使いながら原油市場での影響力を回復し、結果として米ドルの基軸通貨としての地位をより盤石にしていく、という大きな流れとして今回を捉えています。
これは陰謀論のように決めつける話ではなく、国家が安全保障と資源をセットで考えるのは歴史的に自然な動きでもあります。どの国も、自国の通貨、貿易、安全保障をセットで守ろうとするからです。
波及はインド、ロシア、ウクライナ交渉にも広がり得る
動画の終盤で興味深いのは、ベネズエラだけで完結せず、間接的な余波としてインドの立場に言及している点です。
インドは難しい立場:ロシア原油と米国の圧力
動画では、インドがロシアから原油を大量に輸入していることなどから、米国から50%の関税をかけられている、という状況が語られます。
インドは経済的には苦しいが、ロシアとの関係もあり、簡単に立場を変えにくい。ここに今回の事件が重なることで、インドが今後どちらに寄るのかが注目だ、という見立てです。
もしインドが米国に歩み寄るなら、対ロ制裁の実効性が高まる方向に動く可能性があります。一方で歩み寄らないなら、関税など経済的圧力が続き、インド経済に負担がかかる可能性がある。さらにそれは、ウクライナ戦争の停戦交渉の環境にも影響し得る、という連鎖の見方です。
このように、直接の当事国がベネズエラであっても、エネルギーと通商、通貨と制裁が絡むと、波及は複数の国へ広がります。ここが、短期では小さく見えても、長期では大きな変化になり得る理由です。
原油が動かない日は、何も起きていない日ではない
動画の内容を踏まえると、今回のベネズエラ攻撃が世界経済に与える影響は、短期と長期で分けて考える必要があります。
短期的には、原油価格が大きく動かなかったことが示す通り、ベネズエラで増産が起きるとしても時間がかかり、当面の需給バランスは大きく変わらないと市場が見た可能性が高い、という整理になります。生産減少の背景には制裁や投資不足、人材流出があり、加えて超重質原油という技術的ハードルもあるため、供給増がすぐ実現するとは考えにくい、というのがポイントです。
一方で長期的には、米国が原油市場での影響力を強め、資源と軍事、通商と通貨を一体で動かすことで、米ドルの基軸通貨としての地位を守り、強化する意図があるのではないか、という見方が提示されます。さらに、波及は中国のプレゼンス低下という形で現れ得ますし、インドの立場の変化を通じてロシア制裁やウクライナ交渉にも間接影響が及ぶ可能性があります。
原油が動かなかったから安心、ではなく、原油が動かなかった理由を丁寧に分解し、その裏で長期の地殻変動が起きていないかを点検する。今回の動画は、その重要性をコンパクトに示した内容だと言えます。


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