年内利下げ観測が再燃しリスク資産が全面高に転換した理由と注意点

目次

結論

11月11日の米国市場は、米政府閉鎖の回避に向けた前進が材料となり、ナスダックが2.27%高、S&P500が1.54%高、ダウが0.81%高、ラッセル2000が1.21%高と幅広く上昇した。

金も2.71%高で、ビットコインや欧州株も連れ高。債券は売られて利回りがやや上昇し、ヘルスケア関連は軟調。雇用の減速を示唆する民間データや当局者発言を背景に、年内利下げ観測はなお根強く、利下げ確率は63%前後が意識されている。

政府閉鎖が正式に回避されれば一旦の織り込み完了で、材料出尽くしの反動には注意が必要。次の焦点は未公表だった雇用統計(9月分の遅延分と10月分)と、その内容によるFRBのトーン変化である。

今日の相場サマリー

冒頭で示された主要指標の動きを分かりやすく整理する。

指数・資産クラスの騰落

市場・資産騰落率補足
ナスダック総合+2.27%テック・AI・半導体が牽引
S&P500+1.54%最高値圏に接近
ダウ平均+0.81%しっかりだがハイテクに劣後
ラッセル2000+1.21%小型株も続伸
ドイツ株式+1.65%欧州全体も+1.42%
金(ゴールド)+2.71%リスク資産と並走して上昇
ビットコイン+0.79%(日曜+2.36%)重要なレジスタンス突破が焦点
イーサリアム前日比小反落日曜に+5.37%急騰後の調整
VIX17.65リスクオン水準へ低下
Fear & Greed32 → 中立方向株高でセンチメント改善
米金利小幅上昇債券は売られレンジ内の動き
ドル円154円付近大きな変動なし、円安継続

セクター・個別株の動き

テック、AI、半導体が強く、エヌビディアが+5.79%、マイクロン+6.41%、グーグル+3.9%、テスラ+3.6%。

データドッグは決算後のギャップアップからさらに+4%超。ただし最近は窓埋めの動きが増えており、短期的な利確判断が問われる展開。

パランティア+8.8%で高値接近、イーライ・リリーは高値更新。一方、政府閉鎖の妥結過程でオバマケア補助金関連の延長確保が不透明となり、保険会社や病院などヘルスケアは相対的に弱かった。

なぜ上がったのか:政府閉鎖回避への具体的な前進

市場を押し上げた材料はほぼ一つ、米政府閉鎖の回避に向けた交渉の進展である。

民主党側が譲歩し、共和党はオバマケア補助金に関するベッド(別立て)採決を約束したとされる。

まだ上院採決の予定確定と下院承認、そして大統領署名というプロセスが残るが、早ければ今週末にも決着する可能性があるとの見方が強まり、リスクオンが加速した。

政府閉鎖は、統計の発表遅延や公共サービスの停止を通じて景気・企業活動に悪影響を与えるため、回避観測が強まると投資家は安心感からリスク資産に資金を戻しやすい。

実際、欧州株の広範な上昇や米テック・半導体のキャッチアップ上昇がそれを裏付けた。

金利と利下げ観測:年内利下げ63%が意識される背景

債券は売られ、各タームの利回りは小幅に上昇したが、レンジ内の動きに留まった。

雇用の減速を示唆する民間データ、サンフランシスコ連銀デイリー総裁の「高金利長期固定のリスク」への警鐘、ホワイトハウス経済ブレーンの12月利下げ支持といったヘッドラインが相次ぎ、マーケットの利下げ期待はなお強い。

動画内では利下げ確率が63%と紹介され、半ば既定路線として意識されている。

注意したいのは、利下げがなければ株安という単純な関係ではない点である。

2024年は利下げが進まなくても株価は上昇してきた。つまり、利下げは景気悪化の裏返しでもあるため、内容次第ではノーカットの方が企業業績にはポジティブという解釈も成り立つ。

テクニカルの手掛かり:包み足に近い形と50日線の反発

ナスダックは金曜日の長い陰線を、月曜に長い陽線でほぼ包み込む形。

ギャップアップを差し引くと、包み足に近い反転シグナルと読める。

加えて50日移動平均線での反発が出ており、短期的なガス抜き完了後の上昇継続が期待される形状だ。S&P500も最高値圏まであと一歩。小型株指数のラッセルも相対的に強い日となった。

コモディティとクリプト:ゴールド急反発、ビットコインは関門試し

ゴールドは10月後半の上値抵抗帯を上抜け。短期的に上がり過ぎの調整リスクはあるが、レジスタンスを越えられるかが次の焦点。

ビットコインは日曜の上昇で下ひげ連発の底固めを確認し、重要なレジスタンス帯を上抜けできるかがテーマ。イーサリアムは日曜急騰の反動で小反落。

セクター別の勝者と敗者

テック・AI・半導体が一段高。エヌビディアやマイクロン、光ファイバーやHDD関連など周辺銘柄にも資金が広がった。

決算で窓を開けた銘柄は、過去数週間のパターンでは窓埋めの確率が高く、短期妙味とリスクの両方を伴う。反対に、ヘルスケアは政策見通しの不透明感がマイナスに働いた。

直近スケジュールと相場のカタリスト

本来であれば今週木曜にCPIが予定されていたが、政府閉鎖の影響で統計の公表スケジュールが乱れており、今回は間に合わない可能性が高いとの見立て。

代わりに、未公表の9月雇用統計と10月分が相次いで出てくる見込みで、賃金や労働参加率、非農業部門雇用者数のブレがFRBのトーンや利下げ確率を動かす。

企業決算では、ディズニーやアプライド・マテリアルズなど、指数インパクトのある銘柄の結果が短期の需給に影響しやすい。

初心者向けに用語を整理

政府閉鎖とは、議会が予算案に合意できず、連邦政府の一部業務が停止する状態。経済統計の公表遅延、公共サービスの停止、受注や支払いの遅れなどを招く。


利下げ確率は、先物市場の価格から逆算した政策金利の

見込み。例えば63%という数字は、直近会合での利下げ実施が市場で6割強織り込まれていることを意味する。
包み足は、直前のローソク実体を次のローソク実体が完全に包み込む反転サインの一種。上昇転換の目安として投資家に広く使われる。


Fear & Greed Indexは、ボラティリティ、価格モメンタム、オプション需給など複数要因から投資家心理を数値化した指標で、0に近いほど極端な恐怖、100に近いほど極端な強欲を示す。

今日の相場で読み取れること

一つ目は、政策イベントのヘッドラインが短期の需給を大きく動かす地合いが続いていること。政府閉鎖回避という好材料で一気に買い戻しが進んだ。


二つ目は、債券と株式の相関が日替わりで入れ替わる難しさ。今日は債券安・株高だが、雇用統計の弱さが表面化すれば、利下げ思惑で債券高・株高という同方向のリスクオンもあり得る。


三つ目は、テクニカル面で50日線の攻防が続くこと。移動平均線の上で推移できれば最高値更新シナリオが近づく。

まとめ

政府閉鎖回避への前進がリスクオンを誘発し、テック・AI・半導体を中心に米株が全面高。

金や暗号資産も連動して上昇した。一方で債券は売られて金利は小幅上昇、ヘルスケアは政策不透明感で軟調。

年内利下げ観測は63%前後で根強いが、利下げの有無自体よりも、雇用・物価の実体データが企業業績にどう波及するかが本質的な論点。

政府閉鎖が正式に回避されれば材料出尽くしの反動にも注意しつつ、50日線の攻防や決算後の窓埋めパターンなど、テクニカルの素直なシグナルを活用したい。

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