投資を続けていると必ず出てくるのが「いくら貯まったら積立をやめていいのか?」という悩みです。
今回の動画では、FIRE(労働収入ゼロ)と積立ストップ(積立だけ停止・生活費は稼ぐ)の2視点から、平均的な家計データを使って“現実的な目標額”を数式ベースで出しています。
本記事はその要点を初心者にもわかりやすく整理し、自分の数字に置き換えるための手順と近似式までまとめました。
投資ゴールの考え方は2つだけ(A:FIRE / B:積立ストップ)
Aは「いま収入がゼロになっても一生お金が尽きない」状態を作る目標です。
Bは「積立だけ止めても家計が回る」状態を目指します。Aの方がハードルは高く、Bは意外と現実的な水準に落ちます。
前提データ(動画で使われた平均値の例)
2人以上世帯の平均支出は月35万円、65歳以降の夫婦年金は月22.5万円。
単身は平均支出月17万円、年金は例として月11万円で試算。子ども関連は18歳まで約2,000万円、大学まで約3,000万円/人の目安。
以後の計算はインフレ控除後の実質期待利回り4%を前提に現在価値化しています。
A:FIREの目標額(収入ゼロでも持続)— 現在価値で考えるとこうなる
生涯支出を現在価値に割り引くと、カーブは一気に現実的になります。動画のモデルでは次の感覚値に。
- 2人以上世帯:40歳で約9,400万円が目安。年齢が上がるほど必要現在価値は下がる。
 - 単身(年金あり):40歳で約3,800万円、50歳で約3,000万円、60歳で約2,000万円。
 
「老後2,000万円問題」も現在価値で見れば60歳時点で約1,100万円程度に縮みます(実質4%で割引した概算)。
B:積立ストップの目標額(積立だけやめる)— ぐっと低いラインが見えてくる
発想はシンプルです。65歳時点で必要な資産額をまず計算し、それを実質4%で自分の年齢まで割り戻した現在価値が「いま積立を止めてもOK」な水準になります。動画の平均モデルだと次の通り。
- 2人以上世帯:40歳で約800万円、50歳で約1,200万円、60歳で2,000万円弱。
 - 単身:40歳で約500万円、50歳で約1,175万円、60歳で約1,147万円。
 
数字だけ見ると「少なくない?」と感じますが、“積立は止めるが生活費は働いて賄う”前提だからこそ到達しやすいラインになります。安全率は人それぞれ。心配なら2~3割上乗せを。
4%ルール(年間支出×25倍)の位置づけとリスク
4%ルールは、初年度4%引き出し+以後はインフレ連動で増額しても30年枯渇しにくいという経験則。年間支出×25倍で即算できます。
- 2人以上世帯の平均支出35万円/月 ⇒ 年間420万円 ⇒ 約1.05億円。
 - 単身17万円/月 ⇒ 年間204万円 ⇒ 約5,100万円。
 
モンテカルロ試算では、過去30年想定で“失敗確率≒10%”前後。リーマン後の楽観条件では≒1%まで低下。ただし、期間バイアスはあるため長期平均(30年程度)を基準に見るのが無難です。
あなたの数字に置き換える「3ステップ」
- 毎月の支出と将来の年金見込みを把握する。家計簿アプリでも手計算でもよい。
 - 不足額=支出-年金を出し、老後の取り崩し期間(例:30年)を想定。
 - 目的に応じて計算する。
A(FIRE)なら
必要資産の近似式: 必要資産 ≒ 年間不足額 ÷ 0.04
B(積立ストップ)なら
65歳必要資産 = 年間不足額 ÷ 0.04 をまず出し、
今日の目標 ≒ 65歳必要資産 ÷ (1.04)^(65−現在年齢)
で割り戻す(ざっくり版)。子どもの教育費など一時的な山は別途上乗せ。 
どちらも“4%は実質期待利回り”の仮定に強く依存します。心配なら3%で再計算し、2~3割の余裕を持たせるのが現実的です。
目標設定のコツ(メンタルを守る運用設計)
評価額の**“期日”は決めない方が楽になります。相場は自分の努力で動かせません。
どうしても期限を置くなら、入金額(元本)の目標のように自力でコントロールできる指標にしましょう。目標未達のときにリスクを上げて取り返そうとしないことも鉄則です。足りないなら入金を増やす(貯蓄軸)が安全。
まとめ:結論はシンプル。FIREは高い、積立ストップは近い
A(FIRE)はハードルが高い一方、B(積立ストップ)は思ったより低い水準に着地します。
特に、2人世帯で40歳800万円/50歳1,200万円の感覚値は、平均モデルでは十分“射程圏”。
ただし暮らし方や地域差、子どもの人数で必要額は大きく変わります。あなたの支出に合わせて“不足額”を出し、4%で割る→年齢で割り戻す。このワンツーで、ご家庭ごとの“やめどき”は数字で決まります。


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