新NISAを活用してS&P500やオルカン(全世界株式)に投資している人の中には、最近の下落を受けて「今が買い増しのチャンスでは?」と考えている方も多いはずです。
実際に、2024年3月末時点でS&P500は年初来で約10%の下落を記録しており、「バーゲンセール」と称する声もSNSで見られます。しかし、下落局面での買い増しは確かに効率的な戦略ですが、誰にでも向いているわけではありません。
本記事では、
- 下落時に買い増しをすべき理由
- 過去データに基づくシミュレーション
- 買い増しをおすすめできない人の特徴3選
について解説します。
まずは数字で見る!買い増しの投資効果
著者は、2001年12月~2021年12月の20年間、S&P500インデックスファンドでの投資成績をもとにシミュレーションを行っています。
ケース1:月3万円の積立投資のみ
- 投資総額:720万円
- 最終資産:2,500万円(約4.51倍)
ケース2:月3万円の積立+5%以上の下落時に10万円を買い増し
- 下落月数:20年間で35回(=合計350万円を追加投資)
- 投資総額:1,070万円
- 最終資産:4,000万円(約4.8倍)
つまり、下落時に積極的に追加投資を行うことで、最終的なリターンが約1,500万円も増加する結果となりました。これはもちろん過去の実績に基づくもので、将来の保証ではありませんが、一定の戦略として有効であることが分かります。
それでも買い増しをおすすめできない人の3つの特徴
どんなに投資効率が高くても、次のような人には買い増しはリスクが高いと考えられます。
1. 投資資金に余裕がない人
手元資金が乏しい状態での買い増しは、生活費や緊急資金まで投資に回してしまうリスクがあります。
判断基準の一例:
「リスク資産の割合は、100-年齢%を目安にする」という考え方があります。
- 例:40歳で総資産1,000万円 → リスク資産の目安は600万円
- この割合を超えて投資しているなら、すでにリスクを取りすぎているかもしれません。
日頃から、自分の資産配分(現金・債券・株式)を把握し、余剰資金の範囲内での買い増しにとどめることが重要です。
2. マイルールがない人
「なんとなく安そうだから買おう」という感覚的な投資は、精神的にも負担が大きく、損失リスクも高まります。
おすすめのマイルールの例:
- S&P500が10%下落したら、投資資金の10%を買い増し
- さらに10%下がったら、15%を追加投資
著者自身も、2023年8月の下落時には、10%の下落を目安にスポット投資を実施したとのことです。
また、ポートフォリオの「リバランス」も有効です。 例:
- 株と債券を50万円ずつ保有していたが、株が40%下落して30万円になった場合、
- 債券を10万円売って株に回す(=資産バランスを均等に戻す) → 株が元の価格に戻れば、資産は8万円増加
このようなリバランスは、リスク調整と同時に「確実な利益確保」にも繋がる可能性があります。
3. 買い増しに不安を感じる人
買い増しを「チャンス」ではなく「怖い」と感じてしまう人は、無理にやるべきではありません。
感情に振り回されてしまうと、長期的な投資計画が崩れる恐れがあります。そんな方には、これまで通り「積立投資を淡々と継続する」ことが最も安心で、結果的に効率的な方法です。
積立投資の強み:
- 購入時期を分散 → 平均購入価格を低減(ドルコスト平均法)
- 感情に左右されずに投資が可能
- 株価が戻らなくても、「ちょっと上がるだけ」で運用益が出るケースも多い
投資信託は「リアルタイム売買」に不向きな理由
投資信託には、以下のような制約があります。
- ブラインド方式:注文後に基準価格が確定するため、買値が分からない
- タイムラグ:注文から約定までに1日以上かかる
- 為替の影響:指数が変わらなくても、円高だけで価格が大きく動くことがある
このため、S&P500やオルカンのような商品では、短期トレード的な買い方は不向きとされています。だからこそ、機械的・計画的な買い増しが大切なのです。
理論と感情のバランスが大切
最後に著者は、「投資は理論と感情のバランスが重要」と述べています。
- 積立投資は長期目線(20年〜30年)で淡々と
- 成長投資枠や特定口座では、余剰資金で短期的な取引を行い、投資欲を発散
このように、時間軸をずらして資産運用することで、無理のないメンタルで投資を続けることが可能になります。
まとめ
今回の内容をまとめると以下の通りです:
- 下落局面での買い増しは、投資効率を高める戦略として「あり」
- ただし、以下の3つの特徴に当てはまる人は要注意
- 投資資金に余裕がない
- マイルールを決めていない
- 買い増しに強い不安を感じる
- 積立投資だけでも十分に下落の恩恵を受けられる
- 投資信託はリアルタイムでのトレードには向かないので、計画的に行うべき
- 理論と感情を上手に使い分けることで、長期的な資産形成が可能になる
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