日本・韓国・アメリカが争う半導体メモリー戦争とは?

世界の半導体メモリー産業は、日本(キオクシア)、韓国(サムスン・SK Hynix)、アメリカ(Micron)が三つ巴で激しくぶつかり合う市場です。

結論からお伝えすると、歴史的には

日本が勝つ → アメリカが崩れる → 韓国が世界を支配 → そしてAI時代に入り、再び日米韓が激突

という構図になっています。

特に2020年代はAIブームの影響で、HBM(高帯域幅メモリ)が最重要アイテムとなり、SK Hynixが先行、サムスンが追走、マイクロンが巻き返し、キオクシアも政府支援で強化に向かうという新時代に突入しています。

以下では半導体メモリー戦争60年の歴史を、初心者にも分かりやすく解説していきます。


目次

半導体メモリー戦争の始まり(1960〜1970年代)

1963年
アメリカのフェアチャイルド社がS RAMを発明。
ここからメモリー産業が一気に拡大します。

ところが社内紛争が勃発し、多くの技術者が独立。
これが後にIntel、AMD、他多数の企業を生むことになります。

フェアチャイルド出身者は「フェアチルドレン」と呼ばれ、シリコンバレーの源流となりました。

■ 主な出来事
・1968年 Intel設立(ムーアの法則の提唱者が創業メンバー)
・1970年 IntelがDRAMを商用化
・1970年代中盤 IntelがDRAMシェア80%を掌握

当時、メモリー産業はほぼアメリカの独壇場でした。


日本の黄金期(1980年代)世界シェア80%を獲得

1970年代後半
日本の通産省(現・経産省)が主導して、半導体製造技術の共同開発プロジェクトが始まります。

参加企業は

  • 富士通
  • 日立
  • NEC
  • 東芝
  • 三菱電機

など、当時の日本の大企業が勢揃い。

■ 日本が急速に強くなった理由

  • 政府主導の共同研究
  • 銀行融資
  • 補助金
  • 量産による超低価格競争力
  • アメリカより安い価格で輸出

これにより、1985年には日本のDRAMシェアが80%近くに達します。

ところが、あまりに強すぎたためアメリカが反発し、貿易摩擦へと発展します。


日米半導体摩擦(1985〜1990年)

■ マイクロンなどがダンピング提訴
日本企業が安すぎる価格でDRAMを輸出したとして批判されます。

■ 1986年 日米半導体協定
・日本は輸出制限を受け入れる
・アメリカ製半導体の日本市場シェア20%を保証
→ 日本企業にとって極めて不利な条件

■ 1987年
アメリカが日本製品に100%関税を課す
→ 事実上の制裁措置

■ 象徴的な事件
・富士通によるフェアチャイルド買収が米政府により阻止

こうして日本の半導体メモリー産業は競争力を急速に落とし始めます。

そしてこの隙を突いたのが韓国でした。


韓国が一気に覇権を奪う(1990年代)サムスン・SKの台頭

韓国政府は日本の成功モデルをそのまま模倣しました。

■ 韓国の戦略
・政府が補助金
・銀行が低金利融資
・企業の共同投資を促進
・大量生産と低価格戦略

さらに追い風となる出来事が発生します。

■ 1990年代初頭のDRAM不況
・供給過剰でDRAM価格が半値に
・日本とアメリカは投資を縮小
・韓国だけが逆に積極投資を継続

結果、1992年 サムスンが世界最大のDRAMメーカーへ
1998年 韓国(サムスン+ハイニックス)が日本を完全に追い抜く

日本のDRAMシェアは
1993年 40% → 90年代後半には10%まで低下。


日本企業の撤退・再編(1990〜2010年代)

■ 1999年 NEC+日立 = エルピーダ設立
■ 2002年 東芝がDRAM事業をマイクロンに売却
■ 2003年 三菱電機が撤退

その後エルピーダは2012年に破綻(負債4480億円)。
マイクロンが買収し、世界トップ3入りします。

こうしてDRAM市場は現在の寡占構造が完成します。

■ DRAM(世界市場)
1位 サムスン
2位 SK Hynix
3位 マイクロン


NANDフラッシュ市場の争い(2000〜2010年代)

スマホ・デジカメ・データセンターの登場で、NANDフラッシュ需要が急増。

■ 主な動き
・東芝とサンディスクがNAND開発
・2016年 ウェスタンデジタルがサンディスクを190億ドルで買収
・2018年 東芝はメモリー事業を2兆円で売却し「キオクシア」誕生

2020年以降は中国YMTCも参入し、競争が激化しています。

■ NANDの主要4社
・サムスン
・SK Hynix(SK+インテルNAND買収)
・キオクシア+WD連合
・マイクロン


AI時代の主役:HBM(高帯域幅メモリ)の台頭

2023〜2024年のAIブームで、最重要となったのがHBMです。

■ なぜHBMが重要?
・従来DRAMより圧倒的に帯域幅が広い
・GPUの上に積層でき、データ処理効率が桁違いに
・NVIDIAのAI GPUに欠かせない部品

この分野では
SK Hynixが圧倒的トップ。

■ SK Hynixが強い理由
・早期からHBMに投資
・NVIDIAのHBM供給をほぼ独占
・HBM3Eで業界最高性能を実現

サムスンはDRAM王者ゆえにHBM投資が遅れましたが、カスタムHBMの共同開発でNVIDIAと関係強化し巻き返しを狙っています。

キオクシアも日本政府の1500億円補助金で北上工場を増強し、NANDだけでなく次世代メモリの強化を進めています。


現在のメモリー戦争まとめ

■ DRAMの勢力図
・サムスン
・SK Hynix
・マイクロン
(3社で世界のほぼすべて)

■ NANDの勢力図
・サムスン
・SK Hynix(Intel NAND買収)
・キオクシア+WD
・マイクロン
(+中国YMTCが急成長)

■ HBMの勢力図(AI時代の最重要)
・SK Hynix(圧倒的1位)
・サムスン(巻き返し中)
・マイクロン(HBM3Eで参入)


2020年代後半にどうなる?今後の展望

  1. AI需要でHBMが数年は不足
  2. SK Hynixの独走が続く可能性
  3. サムスンはカスタムHBMで巻き返し
  4. キオクシアとWDは統合できれば強い
  5. 中国YMTCが世界市場を揺さぶる
  6. メモリーは過去何度もバブル崩壊してきた
    (DRAMはサイクル産業)

AIブームが落ち着けば、また価格暴落の局面が訪れる可能性は十分あります。

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