(元動画「【日本人90万人減少…】衰退する国の”特徴”とは何なのか?」を基に執筆)
目次
結論:国の繁栄を左右するのは「社会制度」
直近のノーベル経済学賞を受賞したダロン・アセモグル教授らの研究は、
「豊かな国」と「貧しい国」を分ける最大の要因は、資源や地理ではなく“社会制度”だと指摘しています。
制度のあり方次第で、同じ民族・文化・自然条件を持つ国でも経済格差が大きく開きます。
日本は現在、人口減少(日本人90万人減少、外国人35万人増加)と経済の伸び悩みという二重の課題を抱えています。
この制度論をヒントに、今後の日本経済の方向性を考える必要があります。
社会制度が国の運命を決める — ノガレスの事例
アセモグル教授らが例に挙げたのが、米国とメキシコの国境にある「ノガレス」という町です。
- 元は同じ地域だったが、1853年に国境が確定し北側が米国領、南側がメキシコ領に。
- 自然条件や文化は同じだが、100年後には生活水準・治安・教育水準で大きな差。
- 米国側は高校進学率が高く、治安も良好。
- メキシコ側は比較的裕福な部類でも米国側より治安や生活水準は劣る。
理由
- 米国側は建国時から自由・民主主義を掲げ、市民が政治参加し、職業選択も自由。
- メキシコ側は植民地支配・独裁政権の歴史が長く、権力が一部に集中する体制だった。
「包括型」と「収奪型」社会
教授らは制度を2種類に分類しています。
社会制度 | 特徴 |
---|---|
包括型(Inclusive) | 法の下で自由や権利が保障され、誰もが経済活動・政治参加できる |
収奪型(Extractive) | 支配層が権力と富を独占し、住民から自由や利益を奪う |
植民地政策との関係
- 人口が多い地域:少数の支配者が多数の先住民を労働力として搾取 → 収奪型社会になりやすい
- 人口が少ない地域:入植者が多数来て、働く意欲を持たせるために権利や利益を分配 → 包括型社会に発展しやすい
- 病気の流行(マラリアなど)も入植者数や制度形成に影響。
理論への批判
ハワード・フレンチ教授(コロンビア大学)
- 例外が多く、歴史データの選び方にも偏りがある。
- アフリカのジンバブエは病気が少なく白人入植者もいたが、経済危機を繰り返している。
- 感染症は現地住民の生産性や社会構造にも影響してきた。
ビル・ゲイツ氏
- 独裁でも経済成長した例(韓国・台湾・中国)がある。
- 市場原理の導入が経済成長の鍵で、政治体制だけでは説明できない。
アセモグル教授の現代的懸念
- 巨大IT企業や富豪による市場独占は言論の自由を脅かし、経済の健全性を損なう。
- 特定のプラットフォームが情報発信を制限できる状態は“収奪型”に近づく危険がある。
日本への提言
民主主義の強みと弱み
- 日本は強固な民主主義で経済活動の自由も高い。
- ただし政権交代が少なく、自民党の長期一党支配は「尋常ではない」と指摘。
- 官僚・企業・地方利益団体などの複雑な利権構造が存在する可能性。
- 総理選出に国益以外の基準が働く懸念。
移民政策について
- 少子化が続く日本は、経済成長のため移民受け入れ拡大が必要。
- 欧州のように無制限に緩和すれば反移民運動のリスク。
- ただし日本文化は強固で、数十万人規模の移民では文化は失われないと予測。
日本が衰退を避けるためのポイント
- 包括型社会の維持と強化
- 政治権力の分散と透明性を高める。
- 市民が政治参加できる機会を増やす。
- 移民と人口減少対策のバランス
- 移民受け入れを計画的に進め、治安や雇用不安の対策も同時に行う。
- 経済と政治の健全な関係
- 大企業や特定団体による市場独占・政治支配を防ぐ。
- 国民の関心と行動
- 有権者一人ひとりが政治・経済構造を理解し、選挙や政策議論に参加する。
まとめ
- 国の繁栄は資源や地理ではなく、制度の中身で決まる。
- 日本は包括型社会の利点を持つ一方で、政治停滞や人口減少という課題に直面している。
- 民主主義の健全性を守りつつ、人口構造の変化に対応することが、日本が衰退を避ける鍵になる。
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