結論:日銀の金融政策は「通貨量の調整」が目的
日本銀行(通称:日銀)の金融政策とは、景気に応じて市場に出回るお金の量(通貨量)を調節することです。景気が過熱しているときはお金の流通を減らし、景気が冷え込んでいるときはお金を増やして経済を刺激します。
そのために日銀が用いる代表的な3つの方法がこちらです:
- 公定歩合操作(現在は事実上廃止)
- 公開市場操作(現在の中心的政策)
- 預金準備率操作(現在は非実施)
それぞれについて、具体的な仕組みや歴史的背景を交えて詳しく解説していきます。
目次
公定歩合操作とは?:日銀→銀行の貸出金利をコントロール
かつての金融政策の中心だったのがこの「公定歩合操作」です。
■ どういう仕組み?
- 日銀は「銀行の銀行」であり、市中銀行(みずほ銀行や三菱UFJなど)にお金を貸す存在です。
- このときの金利(利子)を公定歩合と呼びます。
■ 金融緩和と引き締めの動き
- 景気を良くしたいとき(日銀が金利を下げる)
→ 市中銀行はお金を安く借りられる → 企業や個人への貸出も増える → 通貨量が増える - 景気を抑えたいとき(日銀が金利を上げる)
→ 借入コストが高くなる → 貸出が減る → 通貨量が減少する
■ 現在は使われていない?
はい、1996年以降は金利の自由化が進んだため、公定歩合操作は行われていません。
代わりに「基準割引率および基準貸付利率」という名称に変わり、これは「無担保コールレート翌日物の上限」を意味しています。
- 例:無担保コールレート翌日物は現在約0.3% → 銀行間の短期貸出が非常に低金利で行われる
→ 資金循環を活発にしようという日銀の意図
公開市場操作とは?:日銀が国債を売買して通貨量を調節
現在の金融政策の主役がこの「公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)」です。
■ そもそも国債とは?
- 国が借金の証明として発行する有価証券
- 民間金融機関や個人も購入できる
■ 買いオペ(金融緩和)の流れ
- 民間銀行が国債を保有
- 日銀がこれを買い取る
- 民間銀行はお金(資金)が増える
- 銀行の貸し出しが活発化 → 通貨量が増加
■ 売りオペ(金融引き締め)の流れ
- 日銀が保有する国債を市場で売却
- 民間銀行は購入のために資金を日銀へ
- 資金が減少 → 通貨量が減少
このように、国債の売買を通じて、日銀が市場の通貨量を調整しています。
補足:コール市場と連動
コール市場とは、銀行間でお金を「一日だけ」貸し借りする短期金融市場のこと。
- 買いオペ実施時 → 銀行に資金余剰 → 金利(コールレート)は低下
- 売りオペ実施時 → 資金減少 → コールレートは上昇
■ 実際の国債保有状況(データあり)
- 2013年:民間金融機関の国債保有が多かった
- 2017年:日銀が大量に国債を保有(買いオペの影響) → 民間の国債保有比率は18.2%(過去最低)
預金準備率操作とは?:銀行が日銀に預けるお金の割合を調整
預金準備率操作は、銀行が預金のうち一定割合を日銀に預けなければならないという制度です。
■ どう影響する?
- 準備率を下げる(金融緩和) → 銀行が使えるお金が増える → 貸出が増える → 通貨量が増加
- 準備率を上げる(金融引き締め) → 銀行の資金余裕が減る → 貸出が減る → 通貨量が減少
■ 現在は行われていない
理由:
- コール市場などの短期市場が発達
- 他国でもあまり利用されていない(例:中国は今も実施)
まとめ:覚えておくべき3つのポイント
金融政策の種類 | 現状 | 目的・影響 |
---|---|---|
公定歩合操作 | 現在は非実施(基準割引率に移行) | 金利を通じて貸出促進・抑制 |
公開市場操作 | 現在の中心的手段 | 国債の売買で通貨量を調整 |
預金準備率操作 | 現在は非実施 | 銀行の資金余裕を制限 |
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