結論
役員報酬だけに頼ると、所得税・住民税に加えて会社負担を含む社会保険で手取りが大きく目減りします。動画で紹介された9つの方法を組み合わせると、税金や社会保険の負担を抑えながら、合法的に法人から個人へ資金を移せます。特に役員社宅と出張手当は、今すぐ導入しやすく実感しやすい施策です。一方で、実態のない給与や過大な日当、時価を無視した関連当事者取引はリスクが高いため、証拠とルールづくりが重要です。
まず押さえる前提
・法人資金を私費に流用すると、会計上は役員貸付金になり、利息認定・返済義務・融資審査の不利要因になります
・税務は「実態」と「時価」が基本です。根拠資料、社内規程、第三者価格の証跡を必ず残します
9つの方法とポイント一覧
方法 | 個人の課税 | 社会保険 | 法人側の取扱い | 使いどころ・注意点 |
---|---|---|---|---|
1 役員報酬(基準) | 所得税・住民税 | あり(会社負担含め合算で約30%目安) | 損金算入(要定期同額・期首3か月内決定) | 基本線だが重くなりがち。柔軟性は低い |
2 役員社宅 | 役員の自己負担分のみ | なし | 家賃の大部分を損金化 | 法人契約+社宅規程。役員負担は計算式に基づき相場の50%以下、物件によっては20〜30%負担で済む例も |
3 出張手当(日当) | 非課税 | なし | 全額損金 | 出張旅費規程が必須。常識的な金額設定(高額すぎると給与認定リスク) |
4 役員借入金の返済 | 非課税(元本返済) | なし | 資金余力の範囲で返済 | 相続時は「貸付金(債権)」として相続財産に算入。返せる時に計画返済が無難 |
5 家族への給与(非常勤役員等) | 受給者に所得税・住民税 | 非常勤なら原則なし | 損金算入(実態要件が最重要) | 実務関与・議事録・職務記述・勤怠等の証跡必須。所得分散で世帯手取りが増えやすい(例:720万円を600万+120万に分けると年30万円超の差が出る例) |
6 配当 | 配当所得(配当控除で二重課税調整) | なし | 税引後利益から支払い | 役員報酬+配当のミックスで手取り最適化(例では年50万円程度の増加試算)。設計は利益水準・株主構成で変動 |
7 個人資産の法人譲渡(不動産・有価証券等) | 譲渡益課税の可能性 | なし | 法人は取得・減価償却等 | 必ず時価。鑑定・相場資料・契約書必須。安すぎ・高すぎは否認リスク |
8 退職金 | 退職所得(退職所得控除+1/2課税) | なし | 原則損金(過大は否認リスク) | 勤続年数に応じ控除。1,500万円規模の控除例が提示され、超過分も1/2課税で有利。適正額・規程整備・積立(中退共等)が王道 |
9 自己株式取得(金庫株) | 譲渡所得20%課税が狙いだが「みなし配当」部分は総合課税 | なし | 分配可能額等の会社法・税法要件 | 生前の売却は設計必須。相続後3年10か月以内の売却はみなし配当が生じない特例があり、納税資金対策に有効 |
※税率や要件は概要です。具体の金額・範囲は制度改正や個社要件で変わります。
即効性が高いおすすめ導入順
1 役員社宅を整備します(法人契約・社宅規程・役員負担額の計算式を明文化)
2 出張旅費規程を作成し、妥当な日当を支給します(役職・地域・宿泊有無でテーブル化)
3 家族が実務関与しているなら、職務記述・議事録・勤怠記録を整え、非常勤役員等で適正額を支給します
4 役員借入金は資金繰りに無理のない範囲で返済計画を作り、相続前に圧縮します
ミスしやすいポイントと対策
・規程なしの日当支給はアウトです。開始前に旅費規程を社内決裁し、実費と区分して運用します
・社宅は「相場家賃」「面積・設備」「役員負担額の税務計算式」の3点セットで証跡化します
・家族給与は「名義貸し」が最大リスクです。役割・議事録・成果物・メール・勤怠で実態を可視化します
・関連当事者間の売買は時価を必ず証明します(鑑定書・近傍事例・路線価・証券価格等)
・退職金は在職中から規程と積立(中退共等)を。突発支給は過大認定の火種になります
・金庫株は事前シミュレーションが必須です。みなし配当の有無・分配可能額・資本等取引の税務を専門家と詰めます
かんたん導入チェックリスト
・社宅規程と旅費規程はあるか、最新化しているか
・役員借入金の残高と返済計画は明確か
・家族関与の証跡(職務・議事録・勤怠・成果物)は揃っているか
・配当と役員報酬のミックスを試算したか
・将来の退職金規程と積立計画はあるか
・自己株式取得や事業承継の設計(相続後3年10か月特例を含む)は作ってあるか
まとめ
・役員報酬一本足では手取り効率が悪化しやすいです。社宅・日当・家族給与・配当などを組み合わせると、合法的に手取りを底上げできます。
・出口戦略(退職金・自己株式取得)まで逆算した設計が、中長期の最適解になります。
・どの施策も「規程・実態・時価・契約」の4点セットが肝心です。迷ったら、まず社宅と日当から整備し、同時に証跡づくりを始めると進めやすいです。
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