本記事は、YouTube動画『【必ずこのリスク発生する】米国株のリターンが激変する本当の理由・為替とドル建て投資をデータで完全解説【オールカントリー】』の内容を基に構成しています。
導入:米国株やオルカンが「好調に見える理由」は株だけではない
動画はまず、いま多くの投資家が「今年は絶好調」と感じている背景を確認するところから始まります。
株価が上がっているから好調に見えるのは自然ですが、海外資産への投資、とくに米国株やオールカントリー(オルカン)のように外貨建て資産を含む商品は、株価だけでなく為替の影響も同時に受けます。
ここで動画が強調するのは、為替は「いつか起きるかもしれないリスク」ではなく、海外投資をする時点で必ず発生する構造的なリスクだという点です。
円安が続いた環境ではこの感覚が薄れやすく、円安が前提のように錯覚しやすい。しかし、もし円高方向に振れたとき、ドル建て投資のリターンがどれだけ変わるのかを理解していないと、思っていた投資結果と現実のギャップに驚くことになる。
動画はその「ギャップの正体」を、具体例とデータで整理していきます。
海外投資のリターンは「資産価格」と「為替」の2つで決まる
日本で生活している多くの人は、日々の支出も収入も基本は円です。
ところが米国株や海外ETF、海外投信を買うと、投資対象はドルなどの外貨で値動きする資産になります。そうすると、投資成績を円で見たときの変動要因は2つになります。
1つ目は、投資している資産そのものの価格変動です。
たとえばS&P500や世界株式が上がったか下がったかという部分です。2つ目が為替で、ドル円が円安になったか円高になったかという部分です。動画では、この2つが合算されて円ベースのリターンが決まる、という基本を何度も確認しています。
そして為替の影響は小さくないどころか、場合によっては資産価格の上げ下げよりも大きく効いてしまうことがある。
為替変動だけで円換算の損益が大きく動くのは「全然ありえる」と明言されます。
ここを理解していないままドル建て投資を続けると、後になって「話が違う」と感じてしまう人が出る。動画はその状態を避けるために、円安・円高それぞれの影響をかなり丁寧に言語化しています。
円安と円高で何が起きるのかを具体例で理解する
円安は円ベースのリターンを押し上げる
円安のとき、ドル建て資産を円に換算すると価値が増えます。
動画では分かりやすい例として、1ドル100円で買ったドル建て資産を、売却時に1ドル150円で円換算すると、為替差益が50円分乗るという説明が出てきます。
資産価格が上がっていて、さらに円安も進んでいれば、円ベースのリターンは「ダブルで利益」になりやすい。これが最も良いパターンです。
さらに極端な話として、ドル建て資産の価格が横ばいでも円安になれば円安分だけ利益が出ます。
ドル建て資産が下落していても円安が進めば損失が相殺され、場合によってはドル建てでは下がっているのに円換算では利益になってしまうことすらあり得る。動画は、これが為替のインパクトだと説明します。
円高は円ベースのリターンを押し下げる
一方、円高は真逆です。
1ドル150円で買ったドル建て資産を、売却時に1ドル100円で円換算すると、50円分の為替差損が出ます。
ドル建て資産が上がっていても、円高が進むと上昇分が相殺され、リターンが小さくなる。円高が大きいと、ドル建て資産が上がっているのに円換算ではマイナスになる可能性すらある。
ドル建て資産が横ばいで円高なら、その分だけ損失になります。ドル建て資産が下落していて、さらに円高も進むと「ダブルパンチ」になり、最悪のパターンとして説明されます。
為替だけで損益が大きく動く例:1万ドル投資のインパクト
動画で最も直感的なのは、1万ドルの投資例です。
1ドル100円で投資すれば、円では100万円相当です。
これが評価時に1ドル150円になっていると、1万ドル×150円で150万円になり、為替だけで50万円の利益が出た計算になります。逆に150円で投資して100円になれば、為替だけで50万円の損になります。
この例が示すのは、株価がどうだったか以前に、為替が一定幅動くだけで円ベースの成績が「数十万円単位で」簡単に変わり得るという現実です。動画はこれを「為替の恐ろしさ」と表現しています。
過去の円安局面ではリターンが“別物”になった
動画は、過去の代表的な局面を用いて「なぜ今の成績が強く見えるのか」を説明します。
2010年代前半は、円高から円安へ大転換した時期で、いわゆる2013年以降の円安トレンドでは、米国株が上がったうえに為替も円安になり、円ベースでは「ダブルで利益」になった。結果として、米国株やドル建てで投資していた人の成績は非常に強烈になった、という教訓が語られます。
また、コロナショック後の局面でも、ドル建てベースでは株が下落する局面があったが、円安が進んだことで円換算では下落が相殺され、利益に見える場面があった、という趣旨の説明もあります。
そして直近の数年、とくに円安が150円台まで進んだ時期に、ハイテク中心に株価が上がり、為替も円安になったため、円ベースのリターンが“異常に良く見える状態”になった。ここが「前提になっている人が多い」という指摘につながります。
重要なのは、円安で利益が守られたり増えたりしたとしても、それは本来投資したかった対象の成績ではなく、為替の追い風に助けられた面がある、という考え方です。
米国株が上がるかどうかに投資しているのに、為替で利益が出たからといってそれだけで喜びすぎるのは危険だ、と動画は釘を刺します。
為替ヘッジは万能ではない、コストが重いという現実
円高が怖いなら為替ヘッジをすればいい、という発想は自然です。動画もその流れを取り上げます。為替ヘッジとは、持っているドル資産に相当するドルを売って円を買う取引を裏で行い、円高による損失を抑える仕組みです。
しかし動画が強調するのは、為替ヘッジには大きなデメリットがあり、とにかくコストが高いという点です。
為替ヘッジ付き投信は見た目がよく感じるが、裏で相当のコストがかかっており、基本的に為替では負けやすい。だから、そこまでコストを払ってヘッジする意味があるのか、という議論になると説明されます。
このため、選択肢は大きく3つになります。
1つは、全額ヘッジする。為替の振れを小さくできるがコストが重い。
2つ目は、ヘッジしない。円安の恩恵を受けられるが円高が直撃する。
3つ目は、部分ヘッジで、たとえば同じ投資対象をヘッジありとヘッジなしで半分ずつ持つなど、真ん中を取る方法です。ほかに「自然ヘッジ」という考え方も出ますが、個人投資家にとっては現実的ではないという整理になっています。
動画の発信者は、基本的に為替ヘッジなしを好む立場で、為替はコントロールできない以上、自然体で受け入れる方がよいというニュアンスです。
ただし、その立場であっても「為替の影響を理解し、ルールを決めること」は必須だという流れになります。
動画の核心データ:オルカンの成績は為替でここまで変わる
ここで動画は、最も具体的なデータとして、国内で人気のオールカントリー(eMAXIS Slim 全世界株式)を取り上げます。純資産総額が約8兆円規模で、資金が海外通貨へ流れている大きさが語られ、構成の約6割がドルであることにも触れます。
そして、直近の運用成績を月ごとに分解し、基準価額の上下が「海外資産要因」と「為替要因」に分かれている表を見せます。そこで示されるのは、ある月は為替要因がプラスになり、別の月は為替要因がマイナスになるという事実です。
たとえば円高の月は為替要因が大きなマイナスになり、海外資産自体もマイナスならダブルパンチになって基準価額が大きく下がる。一方で円安の月は為替要因が大きくプラスになり、海外資産も上がっていればダブルでプラスになる。このように、オルカンであっても為替がリターンを大きく左右していることがデータで確認できます。
動画がここで伝えたいのは、オルカンは分散商品でリスクが低いというイメージが先行しがちだが、「為替リスクがなくなるわけではない」という点です。
海外投資をしている以上、為替がリターンの見え方を変え、場合によっては投資家の心理を折るほどの振れ幅になり得る。たとえば1ドルが130円方向に動くだけで、円ベースの評価が大きく変わり、そこで投資をやめる人が大量に出るかもしれない、という危機感も語られます。
為替は読めない前提で、実務ルールを先に決める
動画は「為替がどっちに動くかを当てに行くのは無駄」というスタンスを明確にします。株価の見通しも難しいが、為替はもっと難しい。だから予想に時間を使うより、ルールを作るべきだ、という結論に向かいます。
実務的なルールとして動画で挙げられるのは、まず目的を明確にすることです。為替で稼ぎたいのか、それとも資産本体のリターンを狙うのか。基本的には後者、つまり米国株や世界株式が成長することに投資する発想が望ましい、という整理です。
次に、ヘッジ方針を事前に定めることです。全額ヘッジ、ヘッジなし、部分ヘッジのどれにするかを決め、決めたら為替の上下でバタバタしない。さらに、許容できる変動幅を決めておき、たとえば一定の円安水準に達したら一部ヘッジをするなど、条件付きルールを設ける考え方も出ます。ただし、これはコストや運用の複雑さも増えるため、慎重さが必要だとされています。
また、為替を動かしやすい要因として日米金利差や中央銀行政策の方向性、為替介入の可能性も触れられます。過去に1ドル160円付近で介入が行われた例があるため、同水準が見えたら過度にポジションを伸ばさず、一部ヘッジを検討するという考え方も紹介されます。
さらに、為替そのものを当てに行くより、投資対象や資産クラスを分散することで為替変動の影響を抑える方法もあるとされます。最後に税金の論点として、外国税額控除や為替に絡む税制面も一応確認しておくべきだと述べられます。
まとめ:海外投資の成績は「株価+為替」で決まる、だから先にルールを作る
動画の結論は明確です。ドル建て資産を持つ限り、為替は最大の不確実要因になり、為替だけで損益は大きく変わります。円安が続いた時代のリターンは、株価上昇と円安が重なった“追い風込み”の成績であり、それが当たり前だと思い込むと、円高局面で想定外の苦しさに直面します。
だからこそ、為替を予想して当てに行くのではなく、ヘッジをするのかしないのか、するならどの程度かを先に決め、許容できる変動幅も含めて運用ルールを作ることが重要だと動画は訴えます。オルカンのような分散商品であっても、為替要因で基準価額が大きく上下する事実をデータで確認し、海外投資のリターン構造を理解したうえで来年以降の戦略を立てるべきだ、という締め方です。
そして最後に、為替はコントロールできない以上、良い意味で割り切り、時間を使うべき場所は「ドル建てで投資している資産の成長性」に向けるべきだ、という姿勢が示されます。海外投資を続けるなら、為替リスクは避けられない。その前提を受け入れたうえで、退場しないための設計とルール作りを先に済ませることが、最も現実的な対策になります。


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