結論:金の「実物」人気が爆発、背景にはインフレ・地政学リスク・円安の三重苦
2025年10月、金(ゴールド)の価格が1gあたり2万1800円という史上最高値を更新しました。
田中貴金属工業の銀座店では購入希望者が殺到し、小型の金地金(5g〜50g)販売を一時停止する事態にまで発展。これはまさに「異例中の異例」です。
背景には、世界的なインフレ、財政不安、中央銀行の金購入、地政学リスク、そして円安が複合的に影響しています。
この記事では、
・なぜ金がここまで高騰したのか
・なぜ小型の金地金だけが売れているのか
・今、買うべきかどうか
を初心者にも分かりやすく解説します。
金価格は5年で3倍超!圧倒的なパフォーマンス
まずは金価格の推移を確認してみましょう。
| 年月 | 金価格(1gあたり) | 倍率 |
|---|---|---|
| 2020年10月 | 約7,100円 | – |
| 2025年10月 | 約21,800円 | 約3.1倍 |
たった5年で3倍以上という驚異的な上昇率です。
S&P500や全世界株(オルカン)にも匹敵するリターンで、まさに「金バブル」と言える状態です。
「金地金」と「金貨」の違い
現物の金を購入する方法は大きく2種類あります。
| 種類 | 特徴 | 主な商品例 |
|---|---|---|
| 金地金(インゴット・バー) | 加工費が安く、コスパが高い | 5g〜1kgまで全9種類(田中貴金属) |
| 金貨 | デザイン性が高いが加工費が上乗せされ割高 | ウィーン金貨、メイプルリーフ金貨など |
今回売り切れたのは小型の金地金(5〜50g)で、100g以上のバーはまだ購入可能です。
小型地金が売り切れる3つの理由
① 手が届く価格帯だから
現在、
- 5gで約10万円
- 10gで約20万円
- 1kgでは約2000万円
という水準になっています。
小型なら個人でも買いやすく、資産分散や贈与目的としても人気です。
② 税金対策に使いやすいから
金を売却して利益が出ると「譲渡所得」として課税されます。
このとき50万円の特別控除が使えます。
小分けにして売却すれば、税負担を抑えながら現金化できるため、小型を複数購入しておく戦略が有効です。
③ 保管・持ち運びが便利だから
海外持ち出しや贈与、相続の際にも小さい金は非常に扱いやすい。
地政学リスクや災害時の「最終的な資産保全」としても人気です。
金価格上昇の5大要因
リベ大では、今回の高騰には以下の5つの要因が重なっていると分析しています。
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 1. インフレ | 物価上昇=通貨価値下落。実物資産としての金が買われる。 |
| 2. 財政不安 | 世界的な政府債務の増大。信用低下で金が安全資産に。 |
| 3. 中央銀行の金購入 | 中国など各国の中央銀行が金を大量買い。需給逼迫。 |
| 4. 地政学リスク | ロシア・ウクライナ戦争、ガザ紛争などリスク回避需要。 |
| 5. 円安 | ドル建て取引のため円安時に国内価格が上昇。 |
特に中国の金買いが過去最大規模になっており、これは価格を押し上げる大きな要因になっています。
金は本当に「安全資産」なのか?
一見すると金は安全資産のように思われますが、実際は値動きが非常に激しい商品です。
1971年以降のドル建てリターンを見ると、+100%を超える上昇もあれば、-30%もの暴落も何度もありました。
| 代表的な変動例 | リターン |
|---|---|
| 1970年代後半 | +126% |
| 1980年代初頭 | -30% |
| 2025年(今年) | +50%以上 |
「上がり続ける資産」ではなく、「景気や政策次第で乱高下する資産」だという点を理解することが重要です。
金投資は「保険」であって「増やす手段」ではない
リベ大の両学長は明確にこう述べています。
「金は小金持ちを目指すうえで必須ではない。
あくまで世界秩序変化への“保険”として資産の5〜10%程度に留めるのが現実的」
つまり、金は株のように配当や成長で資産を増やすものではありません。
バフェットも次のように皮肉を込めて語っています。
「金は地中から掘り出され、また別の穴に埋められる。
火星人が見たら首をかしげるだろう。」
生産性を持たない資産であり、「人々が価値を信じている」からこそ成立しているのが金なのです。
それでも金を買うなら「分散」と「長期保有」で
どうしても金を持ちたい場合は、次の2点を守るのがポイントです。
- 資産全体の5〜10%以内に留める
- 短期売買を狙わず長期で保有する
また、価格が高騰している今は「値上がりしてるから買う」タイミングではないというのがリベ大の結論です。
まとめ:金人気は「不安の裏返し」。冷静な資産形成を
- 金価格は5年で3倍に上昇。田中貴金属では小型バーが販売停止。
- 背景はインフレ・財政不安・中央銀行買い・地政学リスク・円安。
- 小型が売れているのは「買いやすさ」「税金対策」「利便性」。
- ただし、金は値動きが激しく、あくまで“保険資産”にとどめるべき。
- 長期的な資産形成の中心は「株式投資(S&P500やオルカン)」が基本。
金は「不安な時代の鏡」と言われる資産です。
今、人々が金に殺到しているのは、裏を返せば「世界経済や通貨への不安の表れ」とも言えるでしょう。
冷静な目で、自分の資産配分を見直す良い機会かもしれません。


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