※この記事はYouTube動画「2025-04-24 ハイ・ボラティリティーの時代に『米ドル信用失墜論』が米中から出てきた」をもとに構成しています。
結論:ドルの信用は揺らいでいるが、代替手段がないため支配体制は継続する
現在、米ドルの信用が低下しているという議論が英語圏・中国語圏の双方で注目を集めています。しかしながら、ドルに代わる「基軸通貨」が存在しないことから、実際にはドルの支配体制が当面続く可能性が高いというのが現実です。
では、なぜ今「ドルの信用失墜論」が出てきているのか?そしてその裏にある国際情勢や通貨リスクとは何か?具体的な背景とともに整理していきます。
世界はドル決済で動いている
世界の貿易の大半は米ドルによって決済されています。ドルが使えないということは、貿易ができないということと同義です。これはアメリカの世界における強さの大きな要因です。
たとえばアメリカと対立すると、ドル決済から排除され、他国との貿易すら困難になるという現実があります。ロシアに対する制裁でその実例がすでに示されました。
中国は人民元による支配構築を狙う
こうした状況の中で、中国は人民元(RMB)を基軸通貨化しようと動いています。以下のような取り組みが進められています。
- ロシアや石油取引などでの人民元決済の提案
- デジタル人民元の導入と利便性アピール
- SWIFTに代わる独自の決済システム構築
しかし、人民元は共産党の一存で政策が大きく変わる可能性があり、透明性が低いため、信頼性という面では依然として懸念が大きいです。
アメリカと微妙な関係の国々のジレンマ
米ドルは安定しているとはいえ、アメリカとの関係が悪化した場合には資産凍結のリスクがあります。中国や他の国々がこのリスクを回避したいと考えるのは自然です。
ただし、だからといってすぐに人民元に移行できるかというと、それも困難。共産党の不透明な体制、政策変更のリスク、資産価値の不安定性など、多くの要因がその足かせとなっています。
ドルに代わる通貨はあるのか?
ここで改めて「ドルに代わる通貨はあるのか?」という問いに戻ってみましょう。候補とされるのは以下の通貨です。
1. 人民元
→ 不透明で信頼性に乏しいため、基軸通貨としては不十分。
2. ユーロ
→ 欧米の投資家にとっては馴染みがあるが、EUの安全保障や財政支出の問題から将来的な大量通貨供給が予想され、インフレリスクも無視できない。
3. 日本円
→ 国際的な取引通貨としての地位は限定的。信頼性はあるが、使い勝手が劣る。
4. 仮想通貨(例:ビットコイン)
→ 国家による裏付けがない。ボラティリティが高すぎるため、決済手段として安定しない。さらに、国家によっては規制される可能性も高い。
コモディティシフト:ゴールドが再注目される理由
通貨そのものに対する信用が落ちている中、ゴールド(金)などのコモディティ資産へのシフトも加速しています。
- ゴールド価格は上昇傾向
- 世界的なインフレ懸念の反映
- ただし、金本位制には戻れない(供給量が経済規模に追いつかない)
そのため、ゴールドはあくまで「資産防衛手段」として注目されており、通貨の代替にはなり得ません。
最後に:ドルは揺らいでも“唯一の選択肢”
まとめると、ドルの信用は確かに低下しています。米国の金利政策やインフレリスク、地政学的緊張などがその背景にあります。
しかし、
- 人民元には信頼性の問題
- ユーロにも地政学的・財政的な不安
- 仮想通貨はボラティリティと規制の壁
- 金は通貨としての流通性に欠ける
という現実から、現時点では「ドルがマシ」という状況が続いているのです。
今後の注目点
- アメリカのインフレ率と金利動向
- 中国の金融政策と人民元の流動性管理
- ヨーロッパの軍事・財政負担増によるユーロの供給量変化
- 仮想通貨の規制と実用性向上
これらが今後、ドル支配体制の行方を左右するカギとなるでしょう。
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