結論(先に要点を3行で)
- BRICSは関税戦争と自国通貨決済の拡大で、ドル依存を計画的に低下させている
- 短期は輸入物価上昇や米企業の輸出減などコスト増が顕在化、長期は米国債需要と金利に構造的圧力
- 投資は米国一極からの分散が前提。通貨・コモディティ・地域の多元化が鍵
動画が主張する問題意識
アメリカがインドやブラジルなどに最大50%の関税を課す動きは、相手の「現地通貨決済拡大」「ドル以外の決済ネットワーク」「共通通貨の検討」を加速させ、結果的に対米結束を強めている。
ドルの準備通貨シェアは20年前の70%超から58%程度まで低下し、去ドル化の傾向は金融機関や実体経済(例:BYDのブラジル展開)にも表れている、というのが骨子です。
BRICSとは何か(超入門)
進行経済国が中心の大ブロック。動画では以下の特徴を整理しています。
・2009年は5カ国、2024年に4カ国追加、2025年にはインドネシア加入のサプライズ。
・世界人口の約3分の2、世界GDPの約半分規模へ拡大。
・各国の強みは多様化。インドはテック・製造、中国は第2位経済大国へ、ブラジルは工業・サービス化、ロシアは資源に加え宇宙・原子力など。
ドル覇権に対する圧力の正体
関税と制裁という米国の経済ツールが、相手国にとっては「ドル外し」を正当化する動機になる点がポイント。
- 高関税によるコスト増回避のため、現地通貨建てサプライチェーンへ移行
- SWIFT依存回避の新決済網の検討・実装
- 原油など資源取引を現地通貨に切替(人民元建て決済の拡大など)
実例で理解する「去ドル化」
動画で挙げられた分かりやすい例がブラジル。
・自動車市場で中国BYDが急拡大し、ドルを介さない人民元やレアルでの投資・販売契約が進む
・銀行サイドでも人民元の送金・決済フローが前年から大幅増
・結果として、貿易と金融の両面でドル以外の回路が太くなる
数字で押さえる要点(動画内数値の整理)
・ドルの準備通貨シェアの推移
約70%超(20年前) → 約58%(現在)
・関税インパクトの試算
米消費者・企業の年間損失 最大560億ドル
・米国債の海外保有比率
全残高に対して約30%程度まで低下
関税戦争が引き起こす短期の副作用
- 物価上昇圧力
輸入品の価格転嫁で家計負担増。電子機器、自動車、日用品など幅広い品目に波及しやすい。 - 米企業の輸出リスク
ブロック間の報復関税や不買で、航空機・農産物・半導体など高付加価値品にも逆風。 - 供給網の再編
レアアース・原油・穀物など資源を握るBRICS側へ交渉力が移動しやすい。
長期で怖い本丸は「金利と制裁力」
・米国債の買い手が細ると長期金利は上がりやすく、財政の利払い負担が増加
・借入れコスト上昇は、消費と投資の減速を通じて米景気の体力を削る
・ドル制裁の威力は「相手がどれだけドルを使っているか」に依存。去ドル化が進むほど制裁の効き目は弱まる
ブロック化の地政学
・インドは米国製武器の調達見直しに言及、ブラジルはWTO提訴や報復関税の検討
・各国が「米ドル体制側」か「BRICS軸」かを見極め、二極化が進む可能性
・共通通貨の是非は未確定だが、議論自体が交渉カードとなる
タイムラインで把握(動画の流れを年表化)
・2000年代初頭 ドル準備率70%超
・2009年 BRICSは5カ国体制
・2021〜2024年 BRICS貿易額が3年で7000億ドル超増加
・2024年 人民元決済フローの伸長、現地通貨決済の実務化が進展
・2025年 高関税発動、インドネシア加入サプライズ、ドル支配の綻びが顕在化
初心者向けの投資アクションプラン
- 通貨分散
ドル一極から、円・ユーロ・人民元関連の資産や金の比率を段階的に調整。外貨預金よりも為替コストの低いETFや投信、金現物・金ETFの活用が現実的。 - 地域分散
米国株コアは維持しつつ、インド・ASEAN・中東など成長ブロックの比重を徐々に上げる。指数連動の段階買いが基本。 - セクター分散
エネルギー、素材、農業、運輸といった貿易と資源に強いセクターをポートフォリオに織り込む。 - 安全資産の位置づけ
金は有事と通貨分散の両面ヘッジ。短期ボラは許容し、積立と押し目追加入で平準化。 - リスク管理
関税や制裁のヘッドラインで急変しやすい。最大ドローダウンを想定し、レバレッジと集中投資は抑制。損切りルールやヘッジ比率を事前に数値で決めておく。
よくある疑問に簡潔回答
Q. 本当にドル覇権は終わるのか
A. 一気に終わるのではなく、持続的なシェア低下とブロック化が進むという見立て。決済網と実体経済が二重化すると、戻りにくい。
Q. いま全力で米国株を売るべきか
A. 動画でも「今日明日の大崩れ」を想定していない。段階的分散が基本。米国優良資産の長期価値は依然大きい。
Q. 金とビットコインはどう使い分ける
A. 金は歴史的ヘッジ、暗号資産はボラが高い成長ベット。性格が違うため上限比率と保有目的を分ける。
この記事のまとめ
・関税戦争は相手の去ドル化を促し、ドルの制裁力と米国債需要に長期的な圧力を与える
・短期の副作用は物価上昇と輸出減、長期は金利上昇と財政負担増という構造問題
・投資は米国コアを残しつつ、通貨・地域・セクター・安全資産で多軸分散へ。積立と押し目を軸に機械的に実行するのが現実解
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