本記事は、YouTube動画『【優位性高まる】米国株・ゴールドの2030年までの見通しとシナリオ・投資戦略・気を付けるべきことを解説します【インフレ粘着増加】』の内容を基に構成しています。
2030年までに「米国株はどうなるのか」を今のうちに考える意味
動画では、2025年が終わり2026年を迎えるタイミングで、「そこから約5年後の2030年までに米国株がどうなっていくのか」を、短期の値動きではなく中期のシナリオとして整理する重要性が語られています。
長期投資を前提にするなら、1年や2年の見通しだけでなく、5年という区切りでどんな構造変化があり得るのか、どんなリスクが蓄積しやすいのかを頭に入れておく必要がある、という問題意識です。
結論から言えば、動画の中心メッセージは次のようにまとめられます。
インフレが粘着化し、金利がコロナ前の水準まで下がる可能性は低い。
つまり「ゼロ金利で株が上がりやすかった時代」は終わっており、これからは株式市場が上がるにしても値動きは荒くなりやすい。
その一方で、財政悪化や通貨価値の低下圧力が続くなら、実物資産の代表例としてゴールドの優位性が高まりやすい。
だからこそ、株だけに寄せすぎず、シナリオに耐える設計が必要だ、という流れになっています。
なぜ「インフレ粘着」と「高金利の長期化」が前提になりやすいのか
動画では、2020年でゼロ金利時代が終わり、2021年からインフレ時代に入ったという見方が示されます。
ここが出発点です。政策金利が上がり、インフレを抑えるために利上げが行われ、インフレ率が落ちてきた局面では利下げもあり得るものの、「コロナ前の金利水準に戻る」のはほぼあり得ない、という強い主張が出てきます。
その理由として、インフレが簡単には消えず、金利の中立水準自体が上がっていく可能性が示唆されます。
仮に中立水準が2%〜3%だという説明があっても、2%では無理ではないか、という感覚です。ここが投資家にとって大きいのは、金利が上がると株価の評価(バリュエーション)に圧力がかかりやすいからです。
動画では、金利が低い時代に株が買われやすかった理由として、比較対象となる国債利回りが低く、株式の期待利回りが低くても許容されやすかった、という趣旨が語られます。
しかし金利が上がると、株式投資で求められる利回りも上がりやすくなり、高いPERが許容されにくくなる。
すると「将来の成長期待だけで買われる」よりも、「EPS(一株当たり利益)が実際に伸びるか」がより重要になる局面が増える、という見立てになります。
この前提は、2030年までの見通しを立てるうえで、土台として強く効いてくる、という位置づけです。
2030年までの「6つの構造テーマ」を整理する
動画では、2030年までに注目すべき構造テーマとして6つが提示されます。ここは、いわゆる短期の相場観ではなく、上昇・下落の両方を生み得る「背景の力学」を整理するパートです。
1つ目:AI・データセンター革命(最重要テーマ)
最重要として強調されるのが、AIとデータセンターを中心にした革命です。
データセンターが建設され、その中で稼働する半導体、半導体製造装置、電力、冷却装置など、幅広い供給網が連鎖的に必要になる、という見方が語られます。
重要なのは、ハード面の投資が進むだけでなく、その上で動くソフト面、つまりAIサービスがどこまで進化し、どこまで収益化できるのか、という点です。
チャットGPTやGeminiのように、すでに一般ユーザーの手元にAIが来ている状況から、今後どんなサービスが生まれ、そのサービスを支えるインフラがどこまで拡大するのか。
インフラがなければサービスは成り立たず、サービスが進化しなければインフラ投資も正当化されにくい。つまり、AI・データセンターは「相互依存しながら膨らむテーマ」であり、これがあと何年メインテーマとして続くのかが、米国株の上昇持続性に直結する、という構図です。
さらに、脱炭素や電力需要の拡大という別テーマも、結局は電線や素材需要に結びつく、という話が出てきます。5G・6G、クラウド、サイバーセキュリティなども需要が増えやすく、全体として「AIを支えるハードが収益化できるか」が重要な観点として提示されます。
2つ目:金利構造の変化(高金利が続く前提)
次に語られるのが、金利構造の変化です。
ゼロ金利時代が終わり、インフレ時代に入った以上、金利が大きく下がると見込むのは難しい。むしろ加速する可能性すらある、という見方が示されます。
この金利構造の変化が株式に与える影響として、グロース株やハイテック株のバリュエーションが圧力を受けやすい点が挙げられます。
高PERが許容されにくくなり、EPSが伸びないと株価が上がりにくい局面が増える。つまり「選別が効いてくる」時代になりやすい、ということです。
また、FRBがインフレを抑えるために利上げし、インフレ率が落ちてきたから利下げをしたとしても、そこから先の追加利下げは難しくなりやすい、という話も出てきます。ここでも「コロナ前の金利水準への回帰はほぼない」という見立てが繰り返されます。
3つ目:米国の財政と国債問題(ドル不信とインフレ圧力)
3つ目は、米国の財政と国債問題です。動画では、GDPに対する債務比率が120%を超えているという話が出てきます。
利払い費が重くなり、防衛費も削りにくい。つまり支出圧力が残り続ける中で、財政への信認、ドルへの信認が長期の懸念材料になりやすい、という論点です。
この文脈で、通貨価値が落ちやすい環境が続くなら、実物資産の優位性が高まりやすいという主張がつながってきます。
動画ではわかりやすい例としてゴールドが挙げられ、不動産、エネルギー、株式といった「実物に近いもの」への投資が相対的に有利になりやすい、という方向性が示されます。
さらに、米国の債務上限問題による政府機関閉鎖リスクのようなイベントが、今後もどこかで再燃し得る点にも触れられます。こうした不確実性が、ドル安材料として意識されやすい、という見立てです。
4つ目:米中分断と経済安全保障(資源とサプライチェーン)
4つ目は、米中分断と経済安全保障です。
半導体、AI、防衛、資源は国家戦略の核であり、これが弱いと他国に対抗しにくい。
ここで動画は「資源」という観点を強く出します。
日本や米国は資源面が弱く、中国への依存度が高い部分がある。
さらにブロック経済化が進み、同盟国ブロックとBRICS側のブロックに分断が進むと、資源国の側が相対的に強い構図になりやすい、という見立てが語られます。
サプライチェーン問題が深刻化するなら、影響を受けやすいのは米国と日本だ、という指摘も含まれます。このテーマは、企業業績だけでなく、インフレやコスト構造にも波及し得るため、2030年までの不確実性要因として扱われています。
5つ目:人口動態と医療・ヘルスケア(成長分野だがコストも重い)
5つ目は、人口動態と医療・ヘルスケアです。高齢化が進むと医療費が増え、これは財政問題とも結びつきます。
一方で、医療AI、創薬AI、医療機器などは長期の成長分野になり得る。ただしコストが大きく、技術競争も激しくなりやすい、という見方です。
加えて、人口が増えない国は成長が難しい、という指摘が出てきます。
米国も移民が減ると人口増が鈍化し、国としてのピークアウト感が出てくる可能性がある。AIや半導体が強くても、国全体の人口構造が重しになるなら、指数全体の伸びは限定されるかもしれない、という含みを持たせています。
6つ目:労働市場の変化(生産性向上と雇用の揺れ)
6つ目は、労働市場の変化です。AIやオートメーションが労働生産性を押し上げ、利益を押し上げる面がある一方で、人が不要になる領域が増え、雇用構造には逆風になる可能性もある。
実例として、チャットGPT登場以降に米国の求人が極端に落ちているという趣旨が語られ、良い面と悪い面の両面があるテーマとして整理されます。
このように、6つの構造テーマは「米国株が上がる理由」だけでなく、「上がったとしても荒れる理由」「上がりにくくなる理由」も同時に含むため、次のシナリオ分析へつながっていきます。
2030年までの3つのシナリオと、投資家が備えるべき行動指針
ここから動画は、決め打ちの予言ではなく、確率を置いた3つのシナリオで整理します。重要なのは「必ずこうなる」ではなく、「こうなったときに困らない設計にする」ための思考枠組みとして扱っている点です。
シナリオA:メインシナリオ(確率60%)は「ほどほどの上昇」
メインシナリオは確率60%として置かれ、S&P500が年率6%〜9%、NASDAQが年率8%〜12%程度というイメージが提示されます。
過去数年の上がり方と比べると鈍化しやすいが、インフレが2%〜3%で粘着化し、金利が高止まりする中でも、景気後退を回避できれば上昇余地は残る、という立て付けです。
このシナリオでは、半導体やデータセンターの成長が続けば、多少インフレでも経済と株価が伸びる可能性はあるとされます。S&P500が2030年までに1.8倍〜2.3倍程度というレンジの提示もあり、ここを「一応のメイン」として置く形です。
-強気シナリオ(確率20%)は「AI主導のバブル的相場」
強気シナリオは確率20%として、AIによる生産性革命がGDPを押し上げ、利下げや財政拡大が同時進行するなら、NASDAQ主導のバブル的相場が生まれる可能性がある、という話になります。
利下げは難しいとしつつも、AI主導の市場が続けば、S&P500が10年で2.5倍程度まで上がる可能性がある、というイメージが語られます。
ここは夢物語ではなく、確率は低いが「あり得る」として置くことで、上昇局面に全く乗れないリスクも意識させる役割があります。
弱気シナリオ(確率20%)は「債務不安とスタグフレーション」
弱気シナリオは確率20%として、米国の債務不安が強まり、地政学リスクが重なり、スタグフレーション(景気後退+インフレ)になった場合を想定します。
この場合、PERは下がり、EPSも伸びず、指数は横ばい、あるいは長期低迷の可能性がある、という見立てです。
この局面では「株ではなくゴールドを買うしかない」という強い言い回しが出てきます。
株が上がらないだけでなく、抜け出すのに10年単位を要する可能性がある、という危機感が提示されます。
また、2030年までにCが来るのか、その後に来るのか、あるいは2030年までの途中でCへ移行し始めるのかは分からないが、どこかで弱気局面は来る前提でいた方がよい、という思想に近いです。
セクターの見方:2030年までに注目されやすい領域
動画では、2030年までの上昇テーマとして、AI・半導体・電力(送電含む)・防衛・エネルギー・医療バイオが挙げられます。データセンター需要が増えれば電力需要が増え、電力インフラへの投資が必要になり、結果として公益株の中でも電力関連が見直される可能性がある、という流れも語られます。
ただし、ここでの注意点は「テーマに寄せすぎない」ことです。後半の投資戦略パートでは、この点が繰り返し強調されます。
投資家が準備すべきこと1:高いボラティリティに耐える
2030年までに、年2割〜3割の下落局面が複数回起きてもおかしくない、という前提が語られます。
2025年も「トランプショック」があったという例が出され、年2回〜3回のショックに耐えられる設計が必要だという話になります。
これはメンタル論ではなく、資産配分やキャッシュフロー設計の話です。
ショックが来るたびに投げてしまう設計だと、長期の上昇シナリオに乗れない。逆に、ショック前提で設計できれば、暴落局面での行動が機械的になりやすい、という方向性です。
投資家が準備すべきこと2:為替リスク(円高)の可能性も視野に入れる
円安トレンドが長期化していても、急に円高になることはあり得る、という注意が入ります。
為替ヘッジは全部やる必要はないが、コストが高い以上「一部だけ」検討する余地はある、というニュアンスです。日本の投資家にとっては、株価だけでなく為替で損益が動くため、ここを無視しないことが求められます。
投資家が準備すべきこと3:インカム(配当・分配)を確保する
株価が上がるか分からない局面が増えるなら、配当や分配金のような定期収入を確保する重要性が高まる、という話になります。配当ETF、カバードコールETF、債券ETFなどを組み合わせて、下落に耐えながらキャッシュフローを確保する発想です。
ここは「上がる銘柄を当てる」より、「持ち続けられる状態を作る」方向性として語られており、長期投資の現実的な課題に寄り添った提案になっています。
投資家が準備すべきこと4:テーマ集中リスクを避け、どこかで見切る前提を持つ
AI・半導体に資金が集中している状況は、動画内でも認められています。
発信者自身もそこを重視している一方で、「それだけで2030年まで行けるのかは怖い」「どこかで見切りをつける必要が出てくる」という注意が明確に出ます。
ポイントは、見切りのタイミングを完璧に当てることではなく、「見切りが必要になる可能性がある」と分かった上で、ボラティリティに耐えながら上昇局面に乗り、調整が来ることも織り込んで運用する、という姿勢です。分からないまま全力で寄せるのが危険で、分かった上で寄せるのはまだ戦える、という整理です。
具体的なポートフォリオ例と売買ルールの考え方
動画の終盤では、コア・サテライトの発想で具体的な配分例が提示されます。ここは「正解の配分」ではなく、攻めと守りの性格によって組み替えるための例として語られます。
安定成長型の一例:分散を効かせる配分イメージ
安定成長型の例として、S&P500、NASDAQ、配当、債券、ゴールド・コモディティ、現金を組み合わせるイメージが語られます。比率の例としては、S&P500 40%、NASDAQ 20%、高配当 15%、債券 10%、ゴールド・コモディティ 10%、現金 5%というような形です。
ここで重要なのは、ゴールドが「地政学リスク」や「通貨価値の低下」に対するヘッジとして位置づけられていることです。株式の上昇シナリオに乗りつつも、弱気シナリオCのような局面を意識した保険として、一定の意味がある、という整理になっています。
成長特化型の一例:リターンを狙うが怖さも大きい
攻める人は、NASDAQ比率を高め、半導体比率も高め、債券を持たないような配分が例示されます。ただし、動画内でも「これは怖い」と明確に注意されます。要するに、期待リターンの裏側に大きな変動リスクがあり、耐えられないならやるべきではない、という線引きです。
インカム重視型の一例:分配金を軸に設計する
守りたい人向けの例として、高配当ETFやカバードコールETF、債券ETFなどでインカムを確保し、S&P500の比率を抑えるイメージも出てきます。ゴールドは現金の代わりに入れる、あるいは債券の一部をゴールドにする、という柔軟な考え方が示されます。
ここでも一貫しているのは、「株価の上下に一喜一憂しない仕組みを作る」ことです。特に、値動きが荒い時代に入るなら、分配金があるだけで心理的な耐久力が上がりやすい、という現実的なメリットが含意されています。
売買ルールの発想:暴落時は指数ETFを機械的に買うが、局面判定は難しい
動画では、暴落時に指数ETFを機械的に買う、という基本方針が語られます。ただし重要な但し書きがあり、「上昇トレンドの途中にある暴落」は押し目買いとして機能しやすいが、「上昇相場が終わった後」に同じことを続けると資金が尽きる可能性がある、という点です。
つまり、押し目買いが常に正解になるわけではなく、局面が変わったときの難しさがある。とはいえ、局面転換を完璧に当てるのは不可能に近い、とも語られます。この矛盾をどう扱うかが長期投資の難所であり、だからこそ「無理のない比率」「キャッシュフロー」「現金やゴールドを含めた耐久設計」が重要になる、という流れです。
利確ルールの具体例:「2倍になったら半分売る」で元本回収する
テーマ型ETFや個別株が大きく伸びた場合のルールとして、価格が2倍になったら半分売って元本回収する、という具体例が示されます。
例えば100ドルが200ドルになったら、100ドル分を売って元本を回収する。残りはゼロコストに近い感覚になり、心理的に持ち続けやすい。上がればラッキー、下がっても致命傷になりにくい、という発想です。
ここは初心者にも分かりやすい資金管理の例として有用で、動画全体の「資産管理が最重要」という結論に直結しています。
注意点:金利、バブル兆候、信用残高、PER水準を観察する
リスク管理の観点として、金利がピークアウトするのか、NASDAQやグロース株が耐えられるのかを見ながら比率調整する必要がある、という話が出てきます。
また、バブルの兆候として、NASDAQのPERが30倍を超えていること、S&P500のPERが22倍〜23倍程度まで上がってきたこと、個人の信用残高が膨らんでいることなどが挙げられます。
こうした兆候が強まるなら、一部現金比率を上げることも選択肢になる。ただしインフレ環境では現金を持ちたくない気持ちも分かるが、全額投資は怖い人もいる。だから「少し持つ」という現実的な妥協点も示されます。
まとめ:2030年まで「上昇に乗りつつ、崩れにも耐える」ことが最大の戦略になる
動画の結論は、2030年までの米国株は名目では成長基調を保つ可能性があり、上昇シナリオの中心にはAI・半導体・データセンターがある、という見立てです。
ただし、インフレの粘着化と高金利の長期化がリスクとして重く、財政赤字、地政学リスク、米中分断、サプライチェーン問題が顕在化すれば、値動きは激しくなりやすい。
だから「厳しい時代に入る」という表現が、単なる悲観ではなく、設計思想として置かれています。
そのうえで、投資戦略としては、コアは指数中心の分散投資を継続し、新NISAなど非課税枠も活用しながら、サテライトで成長テーマを取りに行く。
一方で、配当・分配などインカムを組み合わせ、為替リスクも視野に入れ、現金やゴールドで下落耐性を持たせる。テーマ集中は上昇局面では効くが、どこかで見切りが必要になる前提を持つ。
こうした「上がる最中はついていくが、崩れても生き残る」設計が、2030年までの現実的な答えとして示されています。
最後に動画は、2008年級のショックがいつ来てもおかしくないという警戒を添えつつ、だからこそ投資をやめてしまうのではなく、インカムを含む何らかの形で市場に参加し、1年・2年の短期と、5年の中期を分けてシナリオを考えることが大切だと締めくくっています。
上昇を取り逃がすことも、下落で退場することも避ける。そのために、シナリオを前提にした資産配分とルール作りを、今のうちから進めておくべきだ、というのが本動画の骨子です。


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