本記事は、YouTube動画「【あとは上がるのを待つだけ】米国株・ゴールドの現在の市場動向と見通し・投資戦略を買い場判断法と合わせてデータ解説【利上げは相当先になる⁉︎】」の内容を基に構成しています。
導入:11月の調整は「絶好の買い場」だったのか
動画では、米国株とゴールドの足元の値動き、FRB(米連邦準備制度)の金融政策、そして世界の利上げ状況までを踏まえ、「今は一度仕込んで、あとは上がるのを待つフェーズに入っている」という見方が示されています。
特に印象的なのは、出演者のエモリ氏が「11月19〜21日に持っていたキャッシュをほぼ全額投入した」と明言している点です。
これは単なる感覚的な勝負ではなく、過去のデータに基づいたシーズナリティ(季節性)の分析から導いたものだと説明されています。
11月の下落、12月の年末ラリー、VIX指数の動き、FRB議長交代と利下げ派台頭、世界の利上げ回数、そして機関投資家のゴールド見通しなど、多数のデータが示され、そのうえで「米国株とゴールドを持っておかないと出遅れる可能性が高い」という結論につながっています。
ここからは、動画の流れに沿って、背景とデータを整理しながら解説していきます。
背景:11月の調整と年末ラリーのシーズナリティ
まず、足元の株式市場の動きについて、動画では11月の下落を「想定通りの調整」と位置づけています。
S&P500やナスダック、特にテクノロジー株や半導体株が11月前半に大きく下げましたが、これは過去の平均的な値動きとかなり似たパターンだという説明です。
ナスダック100について、過去のデータを集計すると「11月20日前後でいったん底を打ちやすい」という傾向があり、今回も実際に11月20日付近で下げ止まって反発に転じました。
エモリ氏はこのデータをもとに、「11月19日、20日、21日の3日間でキャッシュを全て投入した」と語っています。
そして、もしこのままシーズナリティ通りに動くなら、12月は年末ラリーとなりやすく、「あとは上がるのを待つだけ」というのが基本スタンスです。
加えて、1年間のうち「どの月にその年の高値をつけやすいか」という統計も紹介されています。ざっくり整理すると次のようなイメージです。
- その年の高値をつけやすいのは12月が圧倒的に多い
- 高値をつけた後に下げに転じやすいのは1月が多い
- 6月に年初来高値をつけた年は、その後下落に転じるケースがほとんどで、「6月に高値をつけたら売り場」と言ってきたところ、実際にその通りの動きになった
こうしたデータを頭に入れておくことで、ニュースやSNSの「暴落だ」「もう終わりだ」という感覚論に振り回されず、あらかじめ「ここは押し目として買いに行く」「ここは警戒する」という計画を立てやすくなる、というのが動画のメッセージです。
米国株の現状:上昇を牽引しているのは依然としてIT・メガテック
次に、米国株全体の状況です。S&P500は直近の調整から持ち直しつつありますが、「他国の株価指数と比べるとここ数か月の上下動は大きく、特にテクノロジーとコミュニケーションサービス(いわゆるIT関連)が主役だった」と解説されています。
2023年以降よく語られてきた「マグニフィセント7(上位数銘柄が指数を押し上げている)」という構図は、依然として色濃く残っています。
動画では、S&P500採用銘柄のうち、そのパフォーマンスがS&P500全体の騰落率を上回った銘柄数が「183銘柄」、比率でいうと約37%しかないというデータが紹介されます。
つまり、全体の3分の1強しか「平均以上に上がっていない」、裏を返せば「多くの銘柄はまだあまり上がっていない」ということです。
これは、指数全体の見た目以上に中身に偏りがあることを意味します。将来、景気回復や業績改善が広がれば、今は出遅れているセクターや中小型株にも資金が入り、上昇が拡散していく余地があるとも解釈できます。
実際、来期の増益率予想を見ると、今は割安に放置されている一部セクターの方が増益率が高いという見立ても紹介されており、「今後はトップ銘柄への偏りが少しずつ薄れ、全体として投資しやすい相場になっていく可能性がある」とまとめられています。
VIXと為替:リスク指標の一服とドル円の転換気配
恐怖指数と呼ばれるVIXについては、一時「25」まで上昇し、調整入りを示唆する水準に達しましたが、その後は踏みとどまり、テクニカル的にも「ある重要なラインでピタリと止まって反発した」と説明されています。
この動きから、「今回の調整局面はいったん落ち着いた」と判断しているようです。
為替については、ドル円が一時「157円」までドル高・円安が進んだ後、FRBの利下げ観測が再び強まったことでドルが売られ、ややドル安・円高方向に戻りつつあるとされています。
12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)に向けた利下げ確率は「8割」程度まで再び上昇しており、「明確な材料がないのに市場は利下げに賭け始めている」という少し歪な状況になっていると指摘します。
インフレとFRB:数字は「高止まり」なのに、利下げ派が増えている矛盾
物価指標としては、最新のCPI(消費者物価指数)が「3%」、PPI(生産者物価指数)が「2.7%」と紹介され、「インフレ率は下がってはいない、高止まりの状態」と説明されています。
それにもかかわらず、FRB関係者の一部や政府・政権側からは「インフレは落ち着きつつある」「利下げを検討してよい」といった発言が出ており、「事実と異なることを分かったうえで言っている可能性が高い」とかなり辛口のコメントが付けられています。動画では特に次の点が強調されます。
- 地区連銀総裁の中には、明確な利下げ派(ニューヨーク連銀の総裁など)と、利下げに否定的な総裁が混在している
- 一部の財務長官クラスから「連銀総裁は利下げに関する発言をするな」と圧力がかかっているという報道もあり、政治側が金融政策に口を出し始めている
- 「クリスマスまでに次期FRB議長を決める」という流れになっており、その候補は「利下げ派のみ」という情報が出ている
パウエル議長の任期は来年5月で終了予定とされており、「誰が次期議長になっても利下げ路線はほぼ既定路線」「任期後はおそらく長期にわたり利上げは行われない可能性が高い」との見方が示されています。
これが意味するのは、「インフレが高止まりしていても、政治的な理由などから金利を上げにくい」「結果として株もゴールドも上がりやすい環境が続く」という構図です。もちろんこれは「良い意味でも悪い意味でも」であり、株価には追い風ですが、インフレや資産バブルのリスクも高まるという両面があります。
世界の利上げサイクル:2年間で316回の利上げ、ここから先はどうなるか
動画では、米国だけでなく「世界の中央銀行がこの2年間で何回利上げをしたか」というデータも紹介されます。
その数字は「316回」。
2010年8月時点の累計利上げ回数をすでに上回っており、「世界全体としてはインフレ抑制のためにこれだけ大規模な利上げがすでに行われた」ということになります。ここから読み取れるポイントは次の通りです。
- これだけ利上げをしている以上、今後さらに利上げを積み上げていく余地は小さい
- インフレは「爆発はしていない」が「下がってもいない」ため、これ以上の利上げは景気にとってかなりの重しになる
- したがって、「利上げから利下げへ、または金利据え置きへ」という流れに向かう国が増えていく可能性が高い
エモリ氏は「利上げに再び大きく転じるのはかなり先の話になるだろう」と見ており、この意味でも「株とゴールドにとっては追い風が吹きやすい環境が続く」と解説しています。
データセンター投資と「今後2年が勝負」という見方
一方で、リスク要因として取り上げられているのが「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大テック企業によるデータセンター投資です。
動画では、メタなどの大手プラットフォーマーの投資計画が、当初予想(濃い色の棒グラフ)に比べて実際の投資額(水色の棒グラフ)がどんどん上振れしているというチャートが示されます。これにより、次のような懸念が語られています。
- データセンターへの巨額投資が続いており、自社キャッシュフローだけでは賄いきれず、社債発行など借入に頼り始めている企業も出ている
- もし2〜3年後に「期待していたほどAIサービスの収益が伸びなかった」という結果になれば、「投資の回収ができるのか?」という懸念から市場が一気にピークアウトする可能性がある
エモリ氏は「この投資の成否がはっきりしてくるまでに、おそらく2年はかかる」と見ており、今後2年間を「勝負の期間」と位置づけています。
つまり、今からの2年間は「巨額のAIインフラ投資が株価を押し上げるフェーズ」であり、その後に「投資の結果次第で調整・ピークアウトが訪れる」といったイメージです。
投資家としては、「この2年の波にどう乗るか」と同時に、「2年後以降の出口戦略も頭の片隅に置いておく」ことが重要になります。
ゴールド市場:ファンドは慎重、スイス勢は強気、エモリ氏はさらに強気
動画の後半では、ゴールドの見通しが取り上げられています。
まず、ゴールド関連のファンドマネージャーを対象にした調査では、「来年末のゴールド価格は4,000〜4,500ドル程度」と見る向きが多かったと紹介されます。
一見すると強気に見えますが、エモリ氏は「ファンド勢はそこまで大きく上がるとは見ていない」とやや物足りない印象を示しています。
対照的に、スイスの大手金融機関UBSは、来年末のゴールド価格を「4,900ドル」と予測していると紹介されます。
スイスは歴史的にゴールドビジネスとの親和性が高く、プライベートバンキングを通じて富裕層向けに金を扱ってきた経緯があります。
UBSが強気の予測を出していること自体はポジティブな材料ですが、「上がるたびに予想を引き上げていくのが大手金融機関の常」であり、「4,900ドルだからそこできっちり止まる、というものではない」と注意も促しています。
そのうえでエモリ氏自身は、「こんな水準では済まないのではないか」と、UBS以上に強気のスタンスを示しています。ゴールド鉱山株についても、「生産コストとゴールド価格の差が過去最大級に開いており、非常に高収益」だと説明され、金鉱株が強い値動きを見せている背景として挙げられました。
エモリ氏が実際に取った行動:11月19〜21日にキャッシュ全投入
動画の中で個別に印象的なのは、エモリ氏自身が「11月19日、20日、21日の3日間で、持っていたキャッシュをすべて投資に回した」と明言している点です。
もちろん「下がる可能性もゼロではない」と前置きはしているものの、次のような根拠から「年内最後の会い場」と判断したと説明しています。
- ナスダック100などの過去データから、11月20日前後に安値をつけることが多い
- VIXが25まで上昇し、あるテクニカルラインで反発している
- 12月はその年の高値をつけやすく、資金流入額も1年で最も大きくなりやすい
- 6月に高値をつけた場合はその後下がりやすいが、今年はそのパターンに合致しており、それもデータ通りに動いてきた
こうした点から、「今回もデータ通りに動くのであれば、ここで買って年末ラリーを待つのがセオリー」であり、「準備は整った、あとは上がるのを待つだけ」というスタンスに至っています。
ここで重要なのは、「なんとなく安そうだから」「雰囲気的にそろそろ反発しそうだから」という感覚ではなく、「なぜここが会い場なのか」という根拠をすべてデータで説明できるようにしている点です。
動画では、「暴落だ」「買い場だ」と叫ぶのは簡単だが、大事なのは『なぜそう判断したのか』という根拠だ」と繰り返し強調されています。
投資家が意識すべきポイント:感覚ではなくデータで動く
動画の締めくくりでは、「トランプショックなどで慌てて売ってしまった人もいるはずだが、それを教訓にして、次に同じようなことが起きても動揺しないようにしてほしい」とメッセージが送られています。
特に年末から年明けにかけては、ネガティブなニュースや不安を煽る情報が増えがちです。こうした「ノイズ」に振り回されて損切りしてしまうと、その後の反発局面に乗れず、「売らなければよかった」と後悔するパターンを何度も繰り返すことになりかねません。大事なのは、次のような姿勢です。
- 暴落やショックの「見出し」だけで判断せず、なぜそのような動きになっているのかをデータで確認する
- シーズナリティ、過去の統計、インフレ率、利下げ・利上げ回数など、数字に基づいてシナリオを組み立てる
- 米国株とゴールドをコアに据えつつ、自分のリスク許容度の範囲で長期的な目線でポジションを持つ
- ノイズに左右されて短期で売買を繰り返すのではなく、「決めた戦略に沿って淡々と実行する」
まとめ:米国株とゴールドは「仕込んで待つ」局面、ただし出口戦略も忘れずに
今回の動画のポイントを整理すると、次のようになります。
- 11月の米国株の下落は、過去データ通りの「想定された調整」であり、11月20日前後は統計的に「買い場になりやすい」タイミングだった
- 12月は1年の中でその年の高値をつけやすく、資金流入額も多い月であり、年末ラリーが起こりやすい
- S&P500の上昇は依然としてIT・メガテックに偏っており、多くの銘柄はまだ平均を下回っているが、来期の増益見通しなどを踏まえると今後は広がりが出てくる可能性がある
- CPI3%、PPI2.7%とインフレは高止まりしているものの、政治的な思惑も絡みながらFRB内外で利下げ派が勢力を増しており、次期議長候補も利下げ派中心と見られている
- 世界の中央銀行は2年間で316回もの利上げを行っており、ここからさらに利上げを続ける余地は小さく、利下げ・据え置きの方向に向かう公算が大きい
- AIインフラ投資、とくにデータセンター向け投資は今後2年が勝負であり、その成否次第で相場のピークアウト時期が決まってくる可能性がある
- ゴールドについては、ファンド勢は4,000〜4,500ドル程度と控えめな見方を持つ一方、UBSは4,900ドル予想と比較的強気であり、エモリ氏自身は「それでもまだ控えめ」とさらに強気のスタンスを取っている
- エモリ氏は11月19〜21日にキャッシュを全投入し、「あとは上がるのを待つだけ」というポジションに入っているが、それはすべてデータとシーズナリティに基づいた判断であり、単なる感覚的な勝負ではない
結論として、動画は「米国株とゴールドは、今は一度しっかり仕込んで上昇を待つ局面にある」としつつも、「ノイズに踊らされず、必ずデータに基づいた根拠を持って投資判断をすべきだ」と強調しています。
今後2年間は、AIインフラ投資の成否やFRBの利下げ政策、世界的な利上げサイクルの終焉が絡み合う非常に重要な時期になります。その波に乗るためにも、「なぜ今買うのか」「なぜ今は待つのか」という説明が自分の口でできるようにしておくことが、長期投資家にとって最大の武器になると言えるでしょう。


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