※本記事は、YouTube動画「長期金利は実質金利+インフレ期待で決まる|長期金利が下落する3つの条件…」の内容をもとに執筆しています。
目次
結論
2025年後半の米国長期金利は4%台前半で高止まりが続く見通しです。
長期金利は株価や景気、為替に大きな影響を与えるため、インフレ動向やFRBの利下げペース、景気減速の有無が重要なチェックポイントとなります。長期米国債ETF(EDV、TLT、TMFなど)への投資は、デュレーションリスクや金利見通しの不確実性を十分理解したうえで判断する必要があります。
なぜアメリカ10年国債利回りに世界中が注目するのか
- 安全性の高さ
米国政府発行でデフォルトリスクがほぼゼロ。 - 流動性の高さ
世界で最も取引規模が大きく、価格が投資家の期待を正確に反映。 - 期間の適度さ
短すぎず長すぎない10年という期間は、経済の長期トレンド把握に最適。
世界の債券市場規模は約145兆ドル(2024年末時点)で株式市場より14%大きく、そのうち約40%(58.2兆ドル)が米国債です。世界の資金の流れの中心に米国債があると言えます。
長期金利の決まり方
長期金利 = 実質金利 + 期待インフレ率
- 実質金利=名目金利−予想インフレ率
例:金利4%、インフレ2%なら実質金利は2%。 - 期待インフレ率=名目金利−TIPS利回り
TIPSはインフレ連動国債で、物価上昇に応じた実質的な利回りを保証。
政策金利(短期金利)はFRBが決定しますが、長期金利は市場が将来のインフレや景気動向を織り込んで決まります。そのため完全には連動しません。
長期金利を押し上げる要因
- インフレ率の上昇(例:関税による輸入価格上昇)
- FRBの利下げ遅延
- 財政赤字拡大(大型減税法案による国債増発)
長期金利を押し下げる要因
- 景気減速・リセッション
- 地政学リスク(安全資産として米国債が買われる)
- 海外からの資金流入
雇用統計から見える景気の変化
- 7月の非農業部門雇用者数は+7.3万人(予想10万人を下回る)
5〜6月分も大幅下方修正。 - 外国生まれ労働者が3月以降で165万人減少。
- 長期失業者(27週以上)が183万人に増加、中央値失業期間も10.2週間へ上昇。
- 転職による賃上げ率は低下し、転職メリットが消失傾向。
これらは採用意欲の低下と賃金上昇の鈍化を示しており、インフレ鈍化が進まない場合は消費活動に影響が出る可能性があります。
FRBと利下げ見通し
- 2025年末の政策金利予想:3.9%(FOMCドットチャート中央値)
- 年内利下げ2回が基本シナリオだが、参加者の意見は分かれる。
- 市場は9月FOMCでの0.25%利下げ確率を88.9%と織り込み、年内3回利下げの予想も。
下期の長期金利見通しシナリオ
- ベースシナリオ
PCEコアインフレは2027年末に2.1%予想。年内利下げは2回程度。 - 楽観シナリオ
インフレ早期沈静化で年内3〜4回の利下げも。 - 悲観シナリオ
インフレ再加速で利上げ再開、長期金利5%超も。
長期米国債ETF投資の3つの注意点
- デュレーションリスク
金利1%上昇でEDVは約−25%、レバレッジ型TMFは約−54%の下落リスク。 - 逆イールド下での収益悪化
短期金利>長期金利の状態では価格上昇が限定的。 - ボラティリティ減価(低減リスク)
レバレッジETFは長期保有に不向き。方向感が出ない相場では価格が徐々に減価。
投資家への示唆
- 金利が高い状態は株価・景気双方に逆風。
- 長期金利の変動要因(インフレ、政策金利、景気動向)を押さえれば、日々のニュースの見方が変わる。
- 米国債ETFは金利低下局面では魅力的だが、現状の高止まり環境では慎重な判断が必要。
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