本記事は、YouTube動画『【究極の選択】経済崩壊か人類滅亡かどちらを選びますか?』の内容を基に構成しています。
いま世界が突きつけられている「究極の選択」
動画の出発点は、かなり強い問いかけです。
世界を救うために経済成長を諦めなければならないと言われたら、私たちはどちらを選ぶのか。気候変動は待ったなしだと言われる一方で、経済成長は雇用と賃金、そして生活水準の土台でもあります。
政府、投資家、有権者が同時にこの矛盾を抱え、しかも結論を先送りできない局面に入っている、というのが動画全体の問題提起です。
現実に、世界はこれまでになく気候変動対策へ舵を切っています。
動画では、世界の温室効果ガス排出の約77%を占める145カ国以上が、今後数十年のネットゼロ目標を設定、または検討していると述べています。
排出削減は単なる環境保護ではなく、公衆衛生、エネルギー安全保障、そして長期的な経済安定のための優先課題になっている。だからこそ投資家は、クリーン関連を次世代セクターとして注目し始めている、という流れです。
しかし、ここでいきなり壁にぶつかります。
排出量を削減する最も単純な方法は、排出を生む活動そのものを減らすことです。つまり石炭とガスの使用を減らすことになり、電力、鉄鋼、セメント、航空、海運、肥料、石油化学、農業の一部まで縮小が避けられない。
これを急激に進めれば、職が失われ、供給が細り、物価が上がり、スタグフレーションのような状況が起きうる。動画は、この目を背けたくなる矛盾こそが、いま学会でも激しく議論されている「脱成長か、気候対策か」というテーマだと整理します。
脱成長論が注目される一方で、なぜ反発も強いのか
動画では「脱成長論」を、資源が有限な地球において各国が意図的に資源集約型の生産と消費を縮小すべきだ、という主張として説明しています。
理想像は、廃棄物と排出の削減、GDPの無限成長を追いかける社会から、より健全な生活環境へ移行する社会です。気候科学の重要性が高まるほど、この考えが勢いを増し、国連環境計画やIPCCの文脈でも概念が主流化しつつある、と動画は述べます。
さらに、50万部以上売れた書籍が議論を押し上げ、今回の動画のモチベーションにもなっている、という話が続きます。
ただし、脱成長が注目されればされるほど、代償も目に見える形で浮かび上がります。
動画は例として欧州を取り上げ、1990年から2023年の間に排出量を約37%削減したとしつつ、その移行が電力価格の上昇や工場の操業停止、抗議運動の一因にもなったと語ります。
環境政策は「良いこと」だけで完結せず、短期の痛みを伴うことが多いという現実です。
さらに、世界には約7億人近くが極度の貧困状態にあり、1日2.15ドル未満で生活している人々がいる、という指摘が出てきます。
こうした人々にとって「成長を止める」は、環境のための美しい理想というより「生きる道を閉ざす」命令に聞こえかねない。豊かな国が成長を止めれば、他の国の発展の道まで閉ざされるのか。ここが動画の核心となるジレンマです。
この問題は、感情論でも正義論でもなく、構造の話でもあります。
地球が現在の排出量を処理できないことは分かっている。一方で急激な削減は、特定の労働者や地域に深刻な打撃を与えることも分かっている。
だからこそ、どの部分を縮小し、どの部分を維持し、どうすれば成長と脱炭素化を同時に実現できるのか。動画はここから、排出の「源泉」を具体的に見に行きます。
排出の主犯は「日常の小さな行動」ではなく産業の土台
動画が強調するポイントは明快です。
排出の大部分は、ビニール袋を使うかどうか、リサイクルを忘れたかどうか、といった個人の小さな行動から来ているわけではない。むしろ、普段あまり注目されない「エネルギー、コンクリート、鉄、燃料、食料」といった社会の土台となるセクターから出ています。
そして重要なのは、これらのセクターが排出源であると同時に、地球規模で最大級の雇用主であり、輸出源でもあるという事実です。
動画では、鉄・セメント・石油化学を含む重工業だけで世界のCO2排出量の約22%、建築建設セクター全体では約37%を占めると説明します。
ここを「少し改善」する程度ではネットゼロは到底無理で、劇的な変化が必要になる。つまり、技術が追いつかない間は、規模縮小という誰も望まない選択肢が現実味を帯びる、という論理です。
エネルギー:発電所を閉めると「地域経済そのもの」が揺らぐ
エネルギーの脱炭素化は、理論上は化石燃料から再生可能エネルギーに移行すればよい、と言えます。
しかし現実には、ほとんどの地域でエネルギーは化石燃料で生産され、経済活動の中心にあります。石炭火力発電所が閉鎖されれば、発電所の労働者だけが職を失うのではありません。
工事請負、メンテナンス、周辺サービスまで雇用が消え、税基盤が縮小し、町が空洞化する。こうした事態は、すでにリアルタイムで起きていると動画は述べます。
例として米国のウェストバージニア州やワイオミング州、そして石炭が何百万人もの生活を支えるインド、電力の約80%が石炭火力という南アフリカが挙げられます。
こうした地域で急に閉鎖を進めれば、不安定化のリスクが高い。
しかも、エネルギーセクター全体は「縮むどころか、まだ成長している」という点が重い。動画では、エネルギー分野で約7600万人が雇用され、2019年以降に500万人以上の新規雇用が創出されたと語られます。再生可能エネルギーは安く見えても、現実世界への移行は簡単ではない。ここが、理想と現実のギャップとして描かれます。
鉄とセメント:技術での解決が難しく、縮小が視野に入る領域
脱炭素化がさらに難しいセクターとして、鉄とセメントが挙げられます。
理由は単純で、製造工程そのものが大量の熱エネルギーとCO2排出に依存しているからです。動画では、セメントを作る工程でセメント1tあたり約0.6tのCO2が排出されると説明します。
さらに、オリンピックサイズのプールを満たす量のセメントを生産すると、人口約700人の町の年間排出量に近いCO2が出る、というイメージしやすい例も提示されます。
つまり、よりクリーンな技術が普及するまで、排出を減らすには生産量自体を減らす必要が出てくる。
しかしそれは、社会の基盤を直撃します。世界では年間約42億tのセメントが使われていると動画は述べ、供給が削減されれば住宅建設が止まり、道路や橋が遅れ、施工業者が解雇を始め、サプライチェーンから雇用が消える、と連鎖の形で説明します。
特に発展途上国では、インフラ建設が生活水準向上の「これから」の部分なので、資材不足は収入と雇用だけでなく、将来の成長そのものを奪うことになりかねません。
航空と海運:代替燃料が整わない以上、便数や輸送量の削減が議論に上る
航空と海運は、安価で拡張性があり、世界規模で代替できるゼロカーボン燃料がまだ整っていない、と動画は述べます。
日本で水とCO2から人工石油を作るといった「夢の話」も出たが、結局は水素を作る電気分解が高コストで、流通はほぼ不可能になっている、という現実的な説明が続きます。
そのため、排出削減の現実的手段として「便数を減らす」「輸送量を減らす」という、誰も望まない話が浮上する。
動画では、世界で約3500万便の商業航空便が運行され、最大の排出は経済圏を結ぶ長距離路線に集中していると述べます。路線を減らせば排出は減りますが、路線消滅や価格高騰が起きる可能性が高い。
海運も同様で、世界貿易の80%以上が海上輸送であり、燃料の中心は重油で、これは汚染度が高い。よりクリーンな燃料は高すぎるか量が足りないため、当面は輸送量削減が主な方法になる。
その結果、贅沢品だけではなく食料や医薬品、建材まで値上がりし、特に海上貿易に依存する発展途上国が大きな損害を受ける、という因果が語られます。
農業と食料:排出削減が食料価格に直結し、政治が耐えにくい
農業も排出源です。家畜メタンや肥料由来の排出など、農場だけで世界の温室効果ガスの約12%を占めるという説明が出てきます。さらに、畑から食卓までの物流も含めたアグリフードシステム全体では、世界の排出量の約3分の1を占める、という整理です。
問題は、ここで排出を減らすと食料価格が上がりやすいことです。
肥料を減らす、家畜を減らす、運営方法を変える。どの方法でも短期的にはコストが増え、価格に跳ね返りやすい。政府は「食料が買えないほど高くした」と批判されることを避けたいので、雇用を失ってでも強行する政府は少ない。
精密農業や再生型農業、メタン削減型飼料などは有望だが、現時点では初期段階で、政治が短期の痛みを引き受けにくい。動画はここに「短期の経済性は長期の環境安定性と相容れない」という根本のジレンマを置きます。
欧州の排出削減は「成功」でもあり「別の国へ移しただけ」でもある
動画は、環境を優先したときに現実に何が起きるかを、欧州の事例で掘り下げます。
確かに欧州は排出量を削減し、経済も成長した。しかし、ここには隠れた構造がある。欧州の排出削減の大部分は、重工業の海外移転によって達成された側面がある、という指摘です。
EUは鉄鋼や化学物質を依然として大量に消費している。ただし生産が域外に移り、排出する場所が欧州外に移転した。排出が消えたわけではなく、トルコ、インド、中国など、より汚染されやすい国へアウトソーシングされた面がある、という整理です。
この話は、脱炭素の評価を「国内だけの数字」で判断してはいけない、という教訓にもなります。見かけ上の成功が、グローバルでは排出の移転に留まる可能性があるからです。
そして、豊かな国と中低所得国の条件は大きく異なります。
経済が多様化した国なら、サービス業やテクノロジー、金融、再エネの発展で痛みを吸収できる可能性がある。
一方で中低所得国では、縮小が賃金や食料安全保障、経済的流動性に直撃しやすい。動画は、世界人口の約8.5%が依然として極度の貧困状態にあるという説明を入れつつ、数十億人が「縮小が求められる産業」に依存している現実を強調します。
日本とコスタリカ:両極端の事例から見えること
動画は、ジレンマを抽象論で終わらせず、国の事例で立体的に示します。
日本:低排出は実現しても、成長や賃金上昇は保証されない
日本は先進工業国の中でも排出量の少ない経済を運営しており、1人当たり排出量は米国、カナダ、オーストラリアより低い。人口が多く産業基盤が大きいにもかかわらず、排出量は1990年の国家統計開始以来の最低水準まで削減されている、という「光」の部分が語られます。
しかし「影」もある。日本は約30年間、経済成長が低迷し、1990年代半ば以降、インフレ調整後の賃金がほとんど上がっていない、という説明です。高齢化が進む中で、少ない労働者がより多くを支える負担が増えていく。ここから動画が導く示唆は、低排出の経済運営が、そのまま活力や賃金上昇、社会階層の上昇を保証するわけではない、という点です。
コスタリカ:環境を「コスト」ではなく「軸」にして成長へつなげた
一方のコスタリカは、環境と成長の両立例として語られます。1980年代には森林破壊が深刻だったが、資源採掘に寄せるのではなく方針転換し、国土の森林比率を1980年代の約21%から、現在は50%以上へ回復させた。そして環境保護を観光経済の土台に据えた。
加えて、再生可能電力へのほぼ完全な移行を実現し、必要エネルギーの約98%を水力、風力、地熱で賄っていると動画は述べます。政治的安定とクリーンエネルギーインフラは、テクノロジー企業やサービス業にとっても魅力となり、結果として制度が強固で平均寿命が長い国として知られるようになった。動画はここで「西洋の基準そのものに誤りがあるのかもしれない」という含みを持たせつつ、早期投資と適切な戦略があれば、成長と環境配慮を同時に実現できる可能性を示します。
ただし、重要な注意点も添えられます。コスタリカの条件をインド、ナイジェリア、ベトナムへそのまま移植しても同じ結果は期待できない。豊富な水力、政治的安定、サービス経済といった条件が揃っている国は限られるからです。つまり、世界の多くの国は日本とコスタリカの中間に位置し、それぞれの事情に合わせた「現実的な道筋」が必要になります。
動画の結論部分:経済を破壊せずに脱炭素化するには何が必要か
ここから動画は、希望の側面も具体的に示します。環境のために経済のすべての分野が縮小する必要はない、という点です。実際、一部のセクターは飛躍的に成長しうる。代表例がグリーンエネルギーです。
動画では、2024年だけでも世界の再生可能エネルギー発電量が過去最高の585GWに達し、新規電力容量全体の90%以上を占めたと述べます。同時にリチウムイオン電池の製造が、10年前には考えられなかった規模の節目を超えた、とも語られます。
さらに、2024年のクリーンエネルギーへの世界投資額は2兆1000億ドルに達し、化石燃料への投資額のほぼ2倍になった、という数字が示されます。これは、クリーンエネルギーを中心に雇用、サプライチェーン、産業クラスターが形成され始めていることを意味し、排出が減っても経済の一部は拡大できる可能性がある、という見通しにつながります。
ただし、これも「公平に」起きるとは限りません。高度な製造業を持つ米国、欧州、中国、韓国などは実行力がある一方、鉄、セメント、化石燃料など従来産業への依存度が高い国ほど、新しい雇用が生まれる前に雇用が失われるリスクを負います。
そこで動画は、迅速かつ公正な移行のために必要な要件を、次の3つとして整理します。
1つ目は大規模な職業再訓練です。縮小産業の労働者に、成長産業への現実的な道筋を用意する必要がある。しかも重要なのは、単に雇用を用意するだけでなく、これまでと同等かそれ以上の賃金が見込める仕事へつなげることです。ドイツの一部地域では、ハイテク産業とサービス業への投資で石炭や鉄工業の雇用の一部を置き換えた例がある一方、多くの地域ではまだ十分にできていない、と動画は語ります。
2つ目はターゲットを絞った投資です。政府がクリーンエネルギーを特定地域に集中させ、製造業、インフラ、サプライヤーが隣接して成長することで、地域に根付く雇用エコシステムが形成される。これにより、失職した労働者が遠方へ移動して人生を作り直すのではなく、役割を変えて新しいスタートを切れる可能性が高まる。米国のインフレ抑制法が一例として挙げられ、国内のクリーンエネルギー製造に数千億ドルを投入し、すでに1100億ドルを超える民間投資を誘発している、と説明されます。中国が10年前に同様の取り組みを行い、太陽光とバッテリー産業を築き、世界のサプライチェーンを握っているという話にもつながります。
3つ目は、脱成長を許容できない国々への支援です。低所得国は貧困を減らすために成長が必要で、成長を止めろと命じるのは現実的でも公平でもない。世界が急速な脱炭素化を求めるなら、グリーンインフラ融資、技術移転、気候対策資金の実行力あるコミットメントが必要になる。そうしなければ、過去の排出責任が少ない国ほど高い代償を払う、という不公平が起きるからです。
動画のメッセージは、ここで一気に整理されます。地球にとって迅速な移行は不可欠。公正な移行には政治的安定が不可欠。生産的で革新的な移行には経済的豊かさが大前提。だからこそ、経済を破壊せず、特定地域を置き去りにせず、着実に排出量を削減する道を現実に設計しなければならない、という結論です。
まとめ:答えは1つではなく「できることから始める」が現実解になる
この動画が提示する「経済崩壊か人類滅亡か」という問いは、煽りではなく構造の要約です。排出の中心はエネルギー、鉄とセメント、航空と海運、食料と農業といった社会の基盤にあり、そこは同時に雇用と生活を支える土台でもあります。だから脱炭素を急げば急ぐほど、短期の痛みが出やすい。一方で先送りすれば、気候リスクが拡大し、長期の損失がより大きくなる。ここに世界が立たされている、というのが動画の骨格でした。
そして希望も示されます。すべてを縮小する必要はなく、クリーンエネルギーのように成長しうる分野は確かに存在する。ただし、移行は自動的に公平にはならないため、職業再訓練、投資の集中、低所得国への支援という3つの条件が欠かせない。経済と環境を両立させるには、理想論ではなく制度設計と資本配分が必要だ、という現実的な結論です。
最後に動画は、「米国がやらないから」「中国がやらないから」「日本がやっても意味がない」と切り捨てるのではなく、答えは1つではなく、できることから始めること自体が答えの1つだ、と締めています。投資家としてだけでなく、人間として何を大事にするのかを理解し、理解を促進する。その積み重ねが、経済と環境の二者択一を少しでも現実的な形に変えていく、というメッセージがこの動画の着地点でした。


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