このブログは「通常の2.3倍速で駆け上がる米株は適正か?|フォートノックスに金はある?|大手テックがAI投資を続けるべき理由|金の急騰は保険の役割を果たしている証拠|ETFで投資すべき明確な理由2025.11.14」という元動画のタイトルを基に記事を書いています。
結論:割高な米株でも「長期インデックス+ゴールド+ETF活用」で戦える
先に結論をまとめると、動画のメッセージはおおよそ次の三点です。
1つ目に、米国株は直近3年で通常の約2.3倍のスピードで上昇しており、バリュエーションも高いものの、今の大型テック企業は90年代ITバブル期の企業よりも圧倒的に「儲かるビジネス」を持っているため、単純に過去のバブルと同列には扱えないという点です。
2つ目に、金はこの3年で約2.5倍まで急騰し、株と同時に最高値を更新していますが、これは「世界中の投資家と中央銀行が、不安定な通貨・債務・地政学リスクに備える保険として金を買っている証拠」であり、ポートフォリオの一部に金を組み込む合理性が高まっているという点です。
3つ目に、投資商品としては、現物や投資信託だけでなく、流動性と手数料面で優れたETFを積極的に使うべきであり、とくに日本はETFの普及度が低すぎるので、ここを改善することで投資効率を大きく高められるという点です。一方で、レバレッジETFは仕組み的に「長期保有で期待通りになりにくい」ため、短期・少額にとどめるのが前提となります。
ここからは、米株・AI投資・金・ETFという4つのテーマに分けて整理していきます。
通常の2.3倍速で上がった米株は本当に危険なのか
動画ではまず、この3年間のパフォーマンスが示されています。
- 半導体株 約プラス210%
- ナスダック100 約プラス133%
- S&P500 約プラス90%
S&P500の長期平均リターンは年率約10%とされます。
理論上、プラス90%に到達するにはおよそ7年かかる水準です。
ところが現実には、AIブームと半導体の急騰によって、たった3年でそこまで到達してしまった、つまり「通常の約2.3倍のペースで駆け上がった」と説明されています。
さらに、シラーPER(景気循環調整後PER)は40倍を超え、2000年ITバブルピークの44倍に迫る水準ですから、数字だけ見れば「かなりの割高」です。
しかし、ゲストのウィル・リンド氏は、ここで重要な前提を置きます。
- 今のマイクロソフト、NVIDIA、Amazonなどは、90年代のITバブル期の企業と違い、高収益で市場支配力も強い
- 単に売上が伸びているだけでなく、利益・キャッシュフローも伴っている
そのため、彼は「今の株が過去と同じバブルなのでプレミアムを一切認めるべきではない」とまでは言い切れないとします。あくまで「割高だが、企業の質もまた過去より高い」という冷静な見方です。
投資家心理は意外と冷静:恐怖指数・センチメント指標から見る今
バブルかどうかを考える上で、価格だけでなく「投資家の心理」も重要です。
動画では次のようなデータが紹介されています。
・
- VIX(恐怖指数)は4月のトランプ関税ショックで50超まで急騰したが、その後は落ち着いている
- しかし10月には米中貿易摩擦の再燃だけでVIXが25超まで急上昇し、市場がまだ神経質であることが分かる
また、個人投資家のセンチメントを示すAAII(全米個人投資家協会)のブル・ベア指標では、
- 強気 38%
- 中立 25.8%
- 弱気 36.3%
強気から弱気を引いたネット強気は、わずか1.7%です。
「みんな強気で浮かれている」という状況とはほど遠く、むしろ意見が割れている状態だといえます。
さらに、CNNのFear & Greed Index(恐怖と欲望指数)は32付近で、1週間前は「エクストリーム・フィア(極端な恐怖)」でした。
つまり、価格は高いが、投資家の心理はむしろ慎重寄りであり、「全員が強気のバブル相場」とは違うというのが現在地です。
テック企業がAI投資をやめられない理由
懸念材料として挙げられるのが「巨額のAI投資」です。
2025年の第3四半期時点で、大手企業によるAI関連設備投資はすでに約3,300億ドル、円換算で50兆円規模に達しています。
Amazon、Meta、Microsoft、Google、Appleなどの経営陣は決算説明会で、
- AI向けデータセンター投資は2026年も継続
- しかも当初予定より規模を拡大する見通し
と示唆しています。
ウィル氏の見方は明快で、「この波に乗り遅れること自体が最大のリスク」だというものです。
1990年代、インターネットに本気で投資した企業が、後のGoogleやMetaのように巨大な勝者になったのと同じ構図で、「AI時代のインフラを押さえるかどうか」が企業価値を大きく左右すると考えているわけです。
もちろん、AI投資には勝者と敗者が出ます。
しかし「守りに入りすぎると、そもそも勝者候補に残れない」というのが、今のテック大手が巨額投資を続ける最大の理由だといえます。
金は「上がっている資産」ではなく「保険」として見る
次にゴールドです。
同じく直近3年のチャートを見ると、金価格は約プラス144%、2.5倍近い上昇で、ナスダックをも上回るパフォーマンスを出しています。本来、株と金は逆相関になりやすいのですが、今回は両方が最高値圏という珍しい状況です。
ウィル氏は、金の急騰を「保険需要の高まり」という視点で説明します。
- ユーロは長く世界2番目の準備通貨だったが、最近では「金」がその座に取って代わりつつある
- 輸出国や対外黒字国など、多くの国の中央銀行がドル偏重を避けるために金を買い増している
- 中央銀行も普通の投資家と同じで、「ドルをたくさん持っているなら金も混ぜて分散しよう」と考えている
さらに、世界的に政府債務が増え、財政赤字が常態化し、M2(マネーサプライ)も増え続けている中で、「紙のお金の価値は長期的に目減りしていく」という現実があります。
インフレ率が3%であれば、毎年3%ずつ購買力が落ちるということです。
金はそれに対して「相対的に値上がりすることで、通貨価値の目減りを相殺する資産」として機能します。
重要なのは、金を「一攫千金を狙う投機対象」としてではなく、ポートフォリオに組み込む「保険」として考えることです。
家が燃えてから保険に入っても意味がないのと同じで、「何かが起きる前」に保険として持っておくという発想が、今の金買いを支えているといえます。
フォートノックスに本当に金はあるのか?「信頼するが検証せよ」
金の話になると、必ず出てくるのが「フォートノックスに金は本当にあるのか」という疑問です。
2025年4月にはイーロン・マスクが「フォートノックスの金を監査し公開すべきだ」と投稿して話題になりました。
フォートノックスは米軍基地の中にある金保管施設ですが、一般公開されたのは1974年の一回だけで、その後は非公開のままです。
これが「本当に金があるのか?」という陰謀論の温床になっています。
ウィル氏はここで「トラスト・バット・ベリファイ(信頼するが検証せよ)」という有名なフレーズを引用します。
自分たちが提供する金ETFでも、
・規制された投資商品として財務監査を受ける
・それに加えて、年に2回、独立した第三者の金属検査会社が実際の金の延べ棒を数え上げ、保管リストと照合する
といった仕組みで、「本当に現物がある」ことを確認していると説明しています。
株式については「NVIDIA株を持っているけど、証券会社に残高が表示されていればそれでいい」とみんな納得しますが、金だけは「本物を見せろ」となりやすい。
金という資産が、それだけ人間の不安や欲望を強く刺激する存在であることも伝わってきます。
金への投資はETFが最も扱いやすい
では、実際に金へ投資する場合、どの手段が合理的でしょうか。
現物(金貨や地金)は「手元にある安心感」が魅力ですが、
・保管コスト・盗難リスク
・売買のたびに店頭に行く手間
・大きな資産額を動かすには非効率
といったデメリットがあります。
金鉱株は金価格との連動性がある一方、企業としての経営リスク(不祥事・コスト上昇など)も上乗せされます。
先物やCFDはレバレッジをかけやすい反面、ロールオーバーや証拠金管理などの難しさがあり、上級者向けです。
そこでウィル氏が「ベスト」として挙げているのが金ETFです。
・通常の株式と同じように証券口座で売買できる
・少額から売買可能で、ポートフォリオへの組み込み・リバランスが容易
・大口資金でもスケールさせやすい
また、投資信託と比べると、ETFは一般に
・手数料が低い
・販売手数料や販売会社へのコミッションがない
という点も強調されています。
投資信託は一部で販売会社へのコミッションがコストに乗っている場合もあり、その分だけ投資家にとって不利になりやすい構造があります。ETFはその意味で、より透明性の高い「素の市場価格」に近い商品だといえます。
日本人がETFをもっと使うべき理由
動画後半では、投資信託とETFの残高比較から、日本の遅れが指摘されています。
・米国:運用残高約587兆円のうち、ETF比率は26%
・日本:運用残高約281兆円のうち、ETF比率はわずか5%
さらに、ETF残高そのものを比べると、
・米国ETF残高:約10.3兆ドル(約1,545兆円)で、2015〜2024年に年率19%で増加
・日本(日本銀行保有分を除く)ETF残高:わずか約15兆円、同期間の増加率は年8%
人口やGDPを考慮しても、「100倍差」は説明がつきません。
要するに、日本ではまだ「ETFという道具自体が知られていない・活用されていない」ということです。
・つみたて枠は投信しか買えない
・証券会社の広告も投信中心
という制度面・商習慣の問題もありますが、個人としては
・コア資産は低コストETFで
・必要に応じて個別株やテーマ型ETFをサテライトに
という発想を持つだけで、長期リターンと手数料の両面で大きな差がつきます。
レバレッジETFは「長期向きではない」理由
最後に、レバレッジETFです。
グラナイトシェアーズの代表的商品として、2倍レバレッジのNVIDIA ETF「NVDL」が紹介されます。
ポイントは「毎日レバレッジをリセットする」という仕組みにあります。
・NVDLはNVIDIAの株価変動の2倍を、1日ごとに目指す
・そのため、毎日ポートフォリオを調整し、レバレッジを2倍に戻す
・結果として、値動きが激しい相場では「ボラティリティの摩耗(減価)」が発生しやすい
動画では2025年4月のNVIDIAを例に、こう説明されています。
・4月のNVIDIA株は、月間の変化率はプラス0.3%
・ところが2倍ブルのNVDLはマイナス6.7%
・さらに2倍ベアの方はなんとマイナス19.3%
株価がほぼ横ばいでも、「上下に大きく振れる過程」でレバレッジETFはどんどん目減りしてしまうのです。
これが、日次リセット型レバレッジETFの「複利効果の罠」です。
したがって、レバレッジETFは、
・短期トレード
・相場観がはっきりしている期間限定
・ポートフォリオのごく一部(余剰資金)
といった条件でのみ使うべきであり、「長期保有していれば2倍儲かる」と考えるのは危険だと理解しておく必要があります。
2026年に向けた現実的な投資戦略
以上を踏まえて、動画が示している方向性をまとめると、次のようになります。
米国株は直近3年で「通常の約2.3倍のスピード」で上昇し、指標上も割高です。しかし、企業の収益力・市場支配力は過去のバブル期と比べて大きく向上しており、単純に「バブルだから全部売る」という発想ではなく、「長期インデックスへの分散投資を続けながら、調整局面をむしろチャンスとして活用する」スタンスが合理的です。
同時に、通貨価値の目減りや財政不安・地政学リスクが続く限り、金を保険としてポートフォリオに組み込む意義は高まっています。現物だけでなく、調整がしやすく大口にも向く金ETFの活用が有力な選択肢になります。
そして、日本の個人投資家にとって最も大きな課題は「ETFの活用不足」です。
投資信託だけに頼るのではなく、低コストETFを組み合わせることで、米国株・世界株・金・セクターなどを効率よく組み込めます。
レバレッジETFや個別グロース株は、そのうえに乗せる「スパイス」にすぎません。
まずは、
・長期で持てるインデックスETF
・通貨とインフレに備える金ETF
という「コア」を固めることが、2026年に向けて最も現実的で、かつ再現性の高い戦略だといえるでしょう。


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