この記事は、YouTube動画「【金はまだ割安か】もし金本位制になったら金価格はいくらになるのか?」を基に作成しています。
今回は「金本位制が復活したら金の価格はどうなるのか?」というテーマについて、過去の歴史や現在のマネー供給量をもとにした思考実験を紹介します。
結論:金は今でも“割安”かもしれない
現在の金価格は1オンス=約4,000ドル前後ですが、もし世界が再び「金本位制」に戻ったと仮定すると、理論上の金価格は少なくとも5,000ドル〜8,000ドル、裏付けを100%にした場合は2万ドル以上に達すると試算されています。
さらに、世界のマネーストックを基準にすると5万〜9万ドル台に達する可能性もあるといいます。
つまり「4000ドルでもまだ割安」と考える専門家も少なくありません。
ゴールドマン・サックスが予想を引き上げた理由
米ゴールドマン・サックスは、2026年末の金価格を1オンス=4,900ドルと予想しました。
わずか10か月前の2024年1月時点では3,000ドル予想でしたが、年内に4,000ドルを突破したため上方修正した形です。
短期間でここまで強気に変化したのは、インフレ懸念・金利低下・ドルの信用不安など「1970年代の再来」とも言われる状況が背景にあります。
レイ・ダリオ「金本位制が再び訪れる可能性はゼロではない」
世界的投資家レイ・ダリオ氏は、「ドルはかつて金に裏付けられていたが、将来その状態に戻る可能性はゼロではない」とコメント。
彼自身、1971年のニクソン・ショック(ドルと金の交換停止)をニューヨーク証券取引所で体験しており、
そのとき「通貨の本質が変わった」と語っています。
ダリオ氏は長年にわたり、ポートフォリオの約15%を金に配分することを推奨しています。
彼によれば「株式や債券が下落する局面で機能する唯一の資産が金である」とのことです。
機関投資家が推奨する金の保有割合
- レイ・ダリオ(Bridgewater Associates):15%
- ブラックロック(BlackRock):2〜4%
- フィデリティ(Fidelity):ごく少量の比率を推奨
つまり、世界最大級の運用機関でも意見は分かれています。
保守的な資産運用では数%ですが、インフレ・通貨不安を意識するなら10〜15%程度を組み込む考え方もあります。
1970年代の金価格の動きと現在の共通点
1971年のニクソン・ショック以降、金価格は約10年間で24倍に上昇しました。
1オンス35ドルから1980年には850ドルへと急騰したのです。
【当時の状況】
- オイルショックによる供給危機
- 高インフレ・マイナス金利
- 金融緩和と引き締めの迷走
これらは現在の状況と驚くほど似ています。
現在も実質金利が低く、金融政策が揺れ動いている点は共通しています。
ただし当時と違うのは、
- アメリカの債務がGDP比で30%→120%に拡大
- シェールオイルなどによりエネルギー依存度が低下
- 政策ツール(物価連動債やガイダンス)が発達
といった点で、構造的には異なる部分もあります。
「影の金本位制」という考え方
アメリカのマネタリーベースと金の理論価格の関係を示した概念として、「影の金価格(Shadow Gold Price)」というものがあります。
これは、ドルの供給量(マネタリーベース)をすべて金で裏付けた場合、理論上どのくらいの金価格が必要になるかを示したものです。
【過去の比率】
- リーマン・ショック時:約30%
- 2024年3月時点:14.5%(金価格約3000ドル)
- 現在:20%前後(推定)
もし再び30%水準に戻るなら、金価格は1オンス=6,000ドル程度になる計算になります。
「イン・ゴールド・ウィ・トラスト」年次レポートによる試算
この理論値をまとめているのが、リヒテンシュタインの独立系運用会社「インクリメンタムAG」が毎年発行する『In Gold We Trust』レポートです。
2025年版は国際会見でも発表され、ワールド・ゴールド・カウンシルのストラテジストも「最も包括的な分析」と高く評価しています。
もし金本位制が復活したら?理論価格のシナリオ
以下は、「金でどの程度の割合を裏付けにするか」に応じたシミュレーション結果です。
裏付け基準 | 裏付け比率 | 理論価格(1オンス) |
---|---|---|
マネタリーベース(M0) | 25% | 約5,354ドル |
マネタリーベース(M0) | 40% | 約8,500ドル |
マネタリーベース(M0) | 100% | 約20,000ドル |
マネーストック(M2) | 25% | 約57,000ドル |
マネーストック(M2) | 40% | 約92,000ドル |
1914年の連邦準備法では、紙幣の発行に対して40%の金裏付けが義務づけられていました。
そのため、40%のケース(8,500ドル)が「伝統的な金本位制」に近い値といえます。
中央銀行が金を手放さない理由
このレポートには印象的な言葉が添えられています。
「中央銀行や財務省はアルミや鉄を備蓄しないが、金は保有している。
理由は一つ。金は“お金”だからだ」
― ジェームズ・リカーズ(経済学者)
世界の中央銀行が今も金を買い続けるのは、究極的には“金こそが本物のお金”という認識を共有しているからといえます。
ジム・リカーズが示す未来予測
経済学者ジム・リカーズも著書で「金は1万ドルになる」と予測しています。
彼は「ポートフォリオの10%を金に配分すべき」と提唱。
もし彼の想定するシナリオが現実化すれば、今の金価格(約4,000ドル)は依然として“序章”に過ぎないことになります。
現実的な考察:金はまだバブルではない
金価格が上がっているとはいえ、マネー供給量が膨張した今の世界では「4000ドル=過去最高値」とは言い切れません。
むしろ通貨の価値が下がった結果としての上昇であり、インフレヘッジ資産としての位置づけは変わっていません。
まとめ:金の価値は“絶対的な信頼”の裏付け
- 金本位制の再来は現実的ではないが、
世界の金融不安が高まるたびにその議論が復活する。 - 現在の金価格はマネー供給量に対してはまだ低い水準。
- 理論上の裏付け価格は5,000〜8,000ドルが妥当な目安。
- 長期投資家にとっては、依然として金は有力なリスクヘッジ資産。
将来的にドルの信認が揺らぐ時、
再び「金本位制」的な動きが世界で意識される可能性は十分にあるのかもしれません。
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