本記事は、YouTube動画『金(ゴールド)5,000ドル到達、長期上昇が続くと考える理由(吉田 哲)【楽天証券 トウシル】』の内容を基に構成しています。
金(ゴールド)がついに5,000ドルという歴史的な水準に到達しました。ここ数年の急上昇を受け、「これはバブルではないのか」「今後は調整局面に入るのではないか」といった声も聞かれます。
本記事では、楽天証券経済研究所の吉田氏の解説をもとに、なぜ金価格がここまで上昇したのか、そしてなぜ長期視点ではさらなる上昇が続くと考えられるのかを、初心者の方にも分かりやすく整理していきます。
金5,000ドル到達という歴史的局面
まず足元の値動きを確認すると、金は5,000ドル、銀は100ドルに到達し、いずれも極めて高い水準にあります。
金価格はこの約2年間で2倍以上に上昇しており、非常に強いトレンドを形成しています。この急激な上昇を見て「バブルではないか」と感じる投資家も少なくありません。
しかし吉田氏は、この上昇を単純なバブルとは見ていません。短期的な投機熱だけで説明できない、構造的かつ長期的な背景が存在すると指摘しています。
金だけでなく銀・プラチナも上昇している理由
金価格の上昇と同時に、銀やプラチナといった他の貴金属も大きく値上がりしています。実際、国内のプラチナ現物価格は前年春頃から急上昇し、日本国内で販売されているプラチナ指輪の価格も、1個あたり約10万円から約12万円へと、およそ1年で2割程度上昇しています。
この背景には大きく2つの側面があります。
1つ目は、金価格上昇による連動効果です。金は貴金属の中で最も人気が高く、金が上昇すると、同じ貴金属に分類される銀やプラチナにも資金が波及しやすくなります。
特に日本の個人投資家の間では、「金より価格が安い」という理由からプラチナが選好されやすい傾向があります。また、アメリカでは銀が「プアマンズ・ゴールド(貧者の金)」と呼ばれ、金の代替として買われるケースもあります。
2つ目は、世界経済や社会構造の変化です。景気回復期待による産業用需要の増加、水素や太陽光といった環境分野での需要拡大、そして世界分断の進行による資源の供給不安などが、銀やプラチナの価格を押し上げています。
これらが重なった結果、直近では金以上に銀やプラチナの上昇率が高くなっている局面も見られます。
金価格を超長期で支える「非伝統的有事」
金の長期上昇を考えるうえで、吉田氏が重視しているのが「非伝統的有事」という考え方です。これは戦争やテロといった目に見えやすい有事ではなく、より長い時間軸で静かに進行する構造的リスクを指します。
具体的には、以下のような要素が挙げられます。
民主主義の変質、世界分断の進行、資源の武器利用、長期的なインフレの継続、通貨の不確実性の増大。
これらは一時的な出来事ではなく、社会全体の「ムード」として金市場を長期的に底上げしている要因だと説明されています。
ポピュリズムとハイテクが有事を増幅させる構造
非伝統的有事をさらに強めている要因として、吉田氏は「ポピュリズム」と「ハイテク」を挙げています。
SNS、AI、ドローンといったハイテク技術は、社会に大きな利便性をもたらしてきました。一方で、「光あるところに影あり」という言葉の通り、負の側面も存在します。情報の氾濫による分断、フェイク情報の拡散、抑止力の高度化による紛争の長期化などがその例です。
こうした環境の中で、個人や国家レベルで「何が真実なのか分からない」という状況が広がり、判断力の低下や不安感の増大が進みます。その結果、短期的な利益や分かりやすい主張を掲げるポピュリズムが拡大しやすくなります。
クレクレ民主主義と金融緩和の連鎖
ポピュリズムの拡大は、経済政策にも影響を与えます。吉田氏はこれを「クレクレ民主主義」と表現しています。より多くを求め、それに応える政治や政策が支持される構造です。
1971年のニクソン・ショック以降、金とドルの兌換が停止され、通貨供給は金の保有量に縛られなくなりました。その後、2008年のリーマン・ショック、2020年のコロナ・ショックといった危機のたびに、大規模な金融緩和が行われてきました。
市場や社会が「緩和してほしい」と求め、それに応じて中央銀行が資金供給を行う。この流れが繰り返された結果、長期的なインフレ懸念や通貨価値への不信感が高まり、金の価値が相対的に見直されてきたと言えます。
株高と金高が同時に進む時代
興味深い点として、2010年以降は株式市場、とりわけS&P500指数が大きく上昇し、金を上回るパフォーマンスを示してきました。これは金融緩和によって供給された資金が株式市場を押し上げた結果であり、クレクレ民主主義の帰結の1つとも言えます。
つまり、株と金は必ずしも完全な逆相関ではなく、同時に上昇する局面も存在するという点が重要です。
金は6,000ドルを超えていくのか
吉田氏は、短期的な上下動は避けられないとしながらも、長期視点では金が6,000ドル、さらにはそれ以上の水準に到達する可能性は十分にあると述べています。
その理由は明確です。
非伝統的有事は人類の欲望や願望が存在する限り消えず、中央銀行もそれを警戒して金の保有量を増やし続けています。この2つが金価格の「土台」となり、長期的に支え続ける構造ができているからです。
一方で、戦争やテロ、株式との短期的な逆相関といった伝統的要因は、あくまで細かな値動きを生む要素に過ぎないと整理されています。
金投資の選択肢と活用方法
動画の終盤では、金への投資手段についても紹介されています。純金積立やスポット購入、投資信託では楽天ゴールドファンドや楽天プラチナファンド、国内ETFやETN、さらには商品先物やCFDなど、多様な選択肢があります。投資目的やリスク許容度に応じて使い分けることが重要です。
まとめ
金が5,000ドルに到達した背景には、単なる投機やバブルでは説明できない、構造的で超長期的な要因があります。ポピュリズムとハイテクの進展によって増幅する非伝統的有事、中央銀行の金保有増加、通貨やインフレへの不確実性。これらが重なり合い、金価格の土台を押し上げています。
短期的な調整はあっても、長期視点では6,000ドル、さらにはそれ以上を視野に入れる環境が整っていると考えられます。金は依然として、現代の不確実な世界における重要な資産の1つであり続けていると言えるでしょう。


コメント