この記事はYouTube動画「2025-05-29 長期金利を日本一分かりやすく説明します」を基に執筆しています。
結論:長期金利=国債の利回りの変動を指す
「長期金利が上がった・下がった」とよく耳にしますが、その正体は「長期国債の利回りがどう変化しているか」です。利回りは、国債価格と逆相関の関係にあり、たとえば国債価格が下がると利回り(=長期金利)は上がります。最近の日本ではこの利回りが急上昇しています。
この変化が経済に与える影響は非常に大きく、住宅ローン金利や企業の借入コスト、さらには株式市場にまで波及します。
長期金利とは何か?そもそも「国債投資」の正体とは
専門家が当たり前に使う「長期金利」「利回り」「クーポン(利息)」「国債価格」といった用語は、一般の人にとって理解が難しいことがあります。
国債=国からの「将来の支払いの約束」
例として「額面100万円、年利1%、10年満期」の国債があったとします。これは以下の権利を意味します:
- 毎年1万円(1%)の利息が10年間もらえる
- 10年後に100万円が戻ってくる
この「合計110万円を10年間でもらえる権利」に、いくら払うかが「国債価格」であり、価格次第で「利回り」が変わります。
利回りの計算例:価格で変動する実質リターン
例1:国債を105万円で購入
- 受け取れる金額:110万円(利息10万円+元本100万円)
- 支払った金額:105万円
- 利回り:約0.47%(年利ベース)
価格が上がっている=人気がある=利回りが低下している状態です。
例2:国債を95万円で購入
- 同じく110万円受け取れる
- 利回り:約1.5%以上に上昇
価格が下がる=売られている=利回りは上昇します。
国債価格と利回りの関係:逆相関の図解
国債価格 | 利回り | 市場の見方 |
---|---|---|
上昇(高値) | 低下 | 安全資産に人気、経済が不安定 |
低下(安値) | 上昇 | 売りが優勢、金利の引き上げ観測やインフレ |
長期金利が経済に与える影響とは?
日本で今、長期金利が急上昇しているという現象は、以下のような連鎖を引き起こします。
1. 企業の借入コストが上がる
国債よりも信用リスクの高い企業は、より高い利率で資金を調達する必要があり、資金繰りが悪化します。
2. 株式市場に売り圧力
国債で安全に高い利回りが得られるなら、わざわざリスクの高い株式に資金を回す必要がなくなります。
3. 住宅ローン金利の上昇
個人の住宅ローン金利も長期国債の利回りを基準にしているため、これが上がると月々の返済額が増え、家計が圧迫されます。
4. 消費の減少 → 経済成長のブレーキ
住宅ローン返済が増えれば、外食やレジャーに使えるお金が減る=仮処分所得が減少し、消費が鈍ります。
今の日本:長期金利上昇は景気ブレーキ要因
現在の日本経済はデフレからの回復途中であり、むしろ「金利は低いほうがいい」というフェーズ。そこに長期金利の上昇が加わると、経済成長へのブレーキになります。
保険会社のように大量の国債を保有している企業では、帳簿価格よりも市場価格が下がることで「含み損」が拡大する問題も発生しています。
一方の中国:真逆の長期金利「低下」
中国では逆に長期金利が下がっています。これは以下のような意味を持ちます。
- 国債に人気が集まり、価格が上昇している
- 他に有望な投資先がない(不動産バブル崩壊・株式低迷)
- 金融機関は国債で稼げず、経営悪化も
通常、金利が下がれば株や不動産にお金が向かう(=バブル形成リスク)と言われますが、中国ではその動きが起きておらず、経済の冷え込みが深刻であることを示しています。
まとめ:長期金利の本質を理解することが重要
- 長期金利とは、長期国債の利回りのこと
- 利回りは価格と逆相関
- 長期金利の上昇は経済にブレーキをかける
- 現在の日本では、企業活動・住宅ローン・消費に悪影響
- 中国では逆に金利が低下し、投資先が見当たらない深刻な状態
このような長期金利の動向は、経済の健康状態を映す「体温計」のような存在です。投資や家計、企業経営に関わるすべての人が理解しておきたい基本の経済知識といえるでしょう。
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