韓国が円建て国債を再発行へ。なぜ日本市場で出すのか、誰が買うのかを初心者向けに徹底解説

最初に結論です。


韓国政府が日本の債券市場で円建ての国債を再発行する狙いは、円金利の低さだけでは説明できません。

実務では為替ヘッジと通貨スワップを通じて最終的な資金コストを比較し、有利なら日本で発行します。

買い手の中心は日本の機関投資家で、政治的思惑ではなく、格付と利回り上乗せ、分散投資の観点で投資判断をしています。

目次

1. 侍債とは何か

侍債は、外国の政府や企業が日本国内市場で円建て発行する債券の総称です。日本の法制度と決済インフラの下で取引され、日本の投資家が参加しやすい設計になっています。

2. 直近の韓国の円建て発行の概要

  • 発行主体 韓国政府
  • 市場 日本の円建て国内市場(侍債)
  • 初回実績 2023年に初発行
  • 当時の内訳 2年・3年・5年・10年を合計約700億円
  • 今回の見込み 詳細条件は未定だが、規模は前回並みの可能性

ポイント
2023年が初の韓国政府侍債で、今回は2回目。関係改善ムード以降、侍債全体の発行が再び活発化している流れがあります。

3. 誰が買うのか

主な買い手は日本の機関投資家です。
銀行、生損保、投信、年金基金などが中心で、政治的支援ではなく、以下の投資合理性に基づきます。

  1. 格付け水準に対して日本国債より利回りが上乗せされる
  2. 円建て資産の分散先として機能する
  3. 国内決済で保有運用しやすい

4. なぜ日本で発行するのかの本質

表向き理由に見えるのは円金利の低さですが、実務はもっと複雑です。海外発行体は原則、為替リスクをヘッジします。具体的には通貨スワップで

円金利 → 自国通貨金利(韓国ならウォン金利)

へと交換します。したがって比較すべきは

  • A 日本で円建て発行し、通貨スワップで最終負担金利に直すコスト
  • B 自国市場や他通貨市場で直接発行した場合のコスト

のどちらが低いかです。結論として、通貨スワップのレートやクロスカレンシー・ベーシスまで含めた総合コストが有利なら日本で侍債を出します。円安見通しで円を借りると得という発想は、ヘッジ前提の発行では当てはまりません。

5. ユーロ円債との違い

同じ円建てでも市場が違います。代表例としてバークシャー・ハサウェイは円建て債を発行していますが、それはユーロ市場でのユーロ円債であり、サムライ債ではありません。

簡易比較表

項目サムライ債ユーロ円債
発行市場日本の国内債市場国際市場(日本国外の発行枠組)
典型的投資家日本の機関投資家中心グローバル投資家ベース
ドキュメンテーション国内ルール準拠国際規格ベース
利回り水準国内需給で決定国際需給とベーシスで決定

6. 政策金融機関の保証と例外

侍債には日本の政府系金融機関が保証を付すケースがあります。代表例はJBICの保証スキームで、新興国など信用力が相対的に低い発行体に保証を付けることで、日本の投資家が投資しやすくなります。


コートジボワールの侍債はJBIC保証付きで調達コストを大きく下げました。

一方、韓国政府侍債については、JBIC保証は付いていません。これは発行体の信用力や政策的な位置付けの違いによるものです。

7. 利回りの目安とざっくり試算

動画内の目安
韓国侍債の10年利回りは日本国債よりおおむね0.5%程度高い水準。足元想定で日本の10年金利が1.5%とすると、韓国侍債は約2.0%前後という感覚値になります。

  • 日本10年国債 1.5%
  • 韓国10年侍債 2.0%前後(国債比+0.5%程度)

8. 投資家のチェックポイント

  1. スプレッドの妥当性
    日本国債に対する上乗せ0.5%前後が、発行体の信用力と需給を踏まえて魅力的か。
  2. 通貨スワップ環境
    円金利と自国通貨金利のスワップ条件、クロスカレンシー・ベーシスの変動を確認。
  3. 条件と枠組
    満期年限のバランス(2年、3年、5年、10年など)、日本法準拠、発行額、流動性。
  4. 保有主体の制約
    ALM上のデュレーション適合、会計区分(償却原価かその他包括原価か)、評価損益のボラティリティ。
  5. 政策要因
    日韓関係や国内外政策の変化は発行環境に影響。保証スキームの有無や枠組改定も要注視。

9. まとめ

韓国政府の侍債再発行は、円金利の低さだけでなく、為替ヘッジ込みの総コストが有利かどうかで決まる合理的な調達判断です。買い手は日本の機関投資家で、格付と利回り上乗せ、分散投資の観点から選別します。ユーロ円債との違い、JBIC保証の有無などの制度的背景を押さえると、ニュースの見え方が一段クリアになります。

実務の要点を一言でまとめるなら、サムライ債は日本で発行して円で受け取り、スワップで自国通貨に戻して最終コストを比較し、有利なら成立。


この一文に尽きます。今後も為替・金利・ベーシスの組み合わせ次第で、侍債の発行は増減します。権利の高い年限構成、スプレッド、スワップ環境の3点セットを定点観測しておくと、次のヘッドラインにも落ち着いて対応できるはずです。

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