本記事は、YouTube動画
『【朗報?悲報?】高齢者の金融所得が保険料に反映へ。資産形成への影響と対策を解説【リベ大公式切り抜き】』
の内容を基に構成しています。
報でもあり悲報でもあるニュースの正体
政府が、高齢者の金融所得を医療保険料や医療機関の窓口負担に反映させる方針を固めた、というニュースが話題になっています。
これは一見すると専門的で難しい制度変更のようですが、実は現役世代の将来や、これから資産形成に取り組む人にとっても無関係ではありません。
このニュースは、立場によって「朗報」にも「悲報」にもなります。本記事では、何が変わるのか、なぜ議論になっているのか、そして個人としてどのような対応が考えられるのかを、初心者にも分かるように整理して解説します。
高齢者医療制度の仕組みと問題点
後期高齢者医療制度とは何か
日本では、75歳以上になると「後期高齢者医療制度」に移行します。この制度では、以下のようなルールで医療費負担が決まっています。
保険料は主に給与や年金などの収入を基準に決定されます。
また、病院の窓口負担は原則1割ですが、一定以上の所得がある場合は2割または3割負担になります。
ここで重要なのは、「収入」を基準にしている点です。
起きていた“歪み”
この制度のもとでは、次のような状況が発生していました。
例えば、資産が1億円あり、年間500万円の配当金を受け取っている人でも、給与や年金収入が少なければ「低所得者」と見なされます。その結果、保険料は安く、医療費の窓口負担も1割で済む、というケースです。
一方で、同じ500万円の配当を受け取っていても、確定申告の方法によっては「所得」として扱われ、保険料や窓口負担が大きく増える人もいます。
ここに制度上の不公平がありました。
何がどう変わるのか
配当金の申告方法と保険料の関係
上場株式の配当金には、主に2つの申告方法があります。
1つは「申告分離課税」を選び、確定申告をしない方法です。
もう1つは、確定申告を行い、所得として申告する方法です。
多くの人が利用している特定口座(源泉徴収あり)の場合、配当金を受け取る際に約20%の税金が自動的に引かれ、それで課税関係は完結します。この場合、確定申告は不要です。
これまでの制度では、確定申告をしなかった配当金は、医療保険料や窓口負担の算定に含まれていませんでした。
ところが、確定申告をした場合は、配当金が給与や年金と同じ「所得」として扱われ、保険料や窓口負担が増えてしまいます。
同じ配当金なのに、申告の有無で負担が大きく変わる。これが「不公平」だとされてきたポイントです。
政府の方針転換
この不公平を是正するため、政府は今後、確定申告をしていない場合でも、配当金や利子といった金融所得を保険料や窓口負担に反映させる方針を固めました。
導入時期は、2020年代後半を目途とされています。
誰にとって朗報で、誰にとって悲報か
朗報となるのは現役世代
この制度変更がプラスに働くのは、主に現役世代です。
金融所得を多く持つ高齢者が、これまで以上に保険料や医療費を負担することで、医療保険制度の財政に余裕が生まれます。その結果、現役世代への負担増を抑える効果が期待されます。
このまま制度改正が行われなければ、「医療制度を維持するために現役世代の負担をさらに増やす」という選択肢しか残らなかった可能性もあります。その意味では、現役世代にとっては朗報と言えます。
悲報となるのは金融所得のある高齢者
一方で、金融所得を持つ高齢者世帯にとっては、明確な負担増です。
実際に動画では、次のような具体例が示されています。
75歳以上で、年500万円の配当金がある人の場合、確定申告をしなければ医療保険料は年間約1万5000円で済みます。
しかし、確定申告をすると保険料は約52万円、約35倍に跳ね上がります。窓口負担も1割から3割になります。
これは家計にとって非常に大きな影響です。
将来の現役世代も他人事ではない
さらに重要なのは、今の現役世代も将来的には「悲報側」に回る可能性がある点です。
長い時間をかけて資産形成を行い、老後に金融所得を得られる状態になったとしても、その結果、保険料や医療費負担が増えるのであれば、「頑張った分だけ手取りが減る」構造になってしまいます。
今回の制度改正は、まず高齢者が対象ですが、将来的に現役世代の金融所得にも保険料が課される可能性は否定できません。国民健康保険や介護保険への反映も検討されているためです。
追加解説|資産形成への影響と考えられる対策
NISA口座や会社員の健康保険はどうなるのか
動画内では、NISA口座は対象外、会社員が加入する健康保険も当面は対象外とされています。ただし、制度は時代とともに変わるため、今後の動向は注意深く見ていく必要があります。
有効な考え方として提示された「逃げ道」
動画で示されている現実的な対応策は、金融所得の「形」を見直すことです。
具体的には、高配当株や債券のように「配当」や「利息」として定期的な金融所得が発生する投資を減らし、無分配のインデックスファンドのように「含み益」を育てる投資の比率を高めるという考え方です。
無分配型のインデックスファンドであれば、保有しているだけでは金融所得が発生しません。そのため、保険料の算定対象にもなりにくいという特徴があります。
仮に資産が大きく増えても、売却しない限りは低所得者扱いが続くため、保険料や窓口負担は低いまま維持されます。
含み益に課税するハードルの高さ
含み益に対して税金や社会保険料を課すことは、制度設計上のハードルが非常に高いとされています。そのため、短期的には「含み益を育てる投資」が最も効率的な節税手段である、という整理になります。
もちろん、このニュースだけを理由に、すぐに資産運用方針を大転換する必要はありません。
ただし、どの投資が相対的に有利になり、どの投資が不利になっていくのか、その方向性を理解しておくことは、長期的な資産形成において重要です。
まとめ|制度変更を正しく理解し、冷静に対応する
政府は、高齢者の金融所得を医療保険料や窓口負担に反映させる方針を固め、2020年代後半の導入を目指しています。
この制度改正は、現役世代にとっては医療制度維持の観点から朗報である一方、金融所得を持つ高齢者、そして将来の現役世代にとっては負担増につながる可能性があります。
対策としては、配当や利息といった金融所得を生む投資の比率を下げ、無分配のインデックスファンドのように含み益を育てる投資を活用するという考え方が示されました。
結論として、現行制度下では「含み益を育てること」が、税金や社会保険料の観点から最も効率的な資産形成手段であると言えます。
制度は今後も変わり続けます。今回のニュースをきっかけに、投資や制度についてアップデートを重ね、冷静に判断していくことが、長期的には大きな差につながっていくでしょう


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