投資に関する誤解や本質を学ぶための一冊として、田渕尚弥氏の著書『12の致命的な誤解』が紹介されている動画の内容を詳しく解説します。本書では、投資の世界で広く信じられている常識に鋭く切り込み、それが本当に正しいのかを検証しています。
投資初心者から中上級者まで楽しめる内容になっており、特に以下のようなテーマが扱われています。
- チャートは本当に役に立つのか?
- 円高・円安は国力を反映するのか?
- プロの経済学者は市場を正確に予測できるのか?
目次
1. ノーベル経済学賞の受賞者が語る市場の本質
2013年のノーベル経済学賞は、全く異なる市場理論を唱える3名に同時に授与されました。
(1) ユージン・ファーマの「効率的市場仮説」
- 市場は常に効率的であり、すべての情報は即座に価格に反映される。
- そのため、どんな情報を持っていても、市場価格はすでに適正価格に修練している。
- 未来の価格の動きは完全にランダムであり、予測することは不可能。
(2) ロバート・シラーの「行動経済学」
- 市場は心理的な要因によって時折非合理的に暴走する。
- ITバブルやリーマンショックを予測したことで有名。
- 市場価格はしばしば実体経済から乖離する。
(3) ラース・ハンセンの視点
- 市場は常に効率的であるとは限らない。
- どちらかというとシラーの考えに近く、行動経済学を支持。
この3人が同時にノーベル賞を受賞したことは、「投資の世界にはまだ決定的な正解が存在しない」ことを示しています。市場を予測するのは極めて難しく、経済学者ですら意見が分かれるのです。
2. 金融知識は未来の予測に役立つのか?
- 金融知識は過去を説明するのには役立つが、未来の予測には役に立たない。
- 予測を試みること自体は無駄ではないが、それに依存すると失敗する可能性が高い。
- 例えば、過去のバブル崩壊を振り返り、「なぜそれが起こったのか」を説明することはできるが、それを基に次のバブルを正確に予測することは難しい。
3. チャート分析はオカルトなのか?
多くのトレーダーが利用するチャート分析ですが、著者は次のような見解を示しています。
- ウォーレン・バフェットのようにチャートを一切見ない投資家もいれば、スタンレー・ドラッケンミラーのように活用する投資家もいる。
- チャート分析の有効性には波があり、流行廃りがある。
- 唯一生き残ったのは「エリオット波動理論」だが、それは後付けで何とでも説明できるから。
- 確証バイアス(自分に都合の良い情報だけを集める心理的傾向)が働きやすい。
では、チャート分析は完全に無意味なのか?
著者は3つの使い方を推奨しています。
(1) 過去の市場動向の理解
- 例えば、小泉政権時代のバブル的な上昇は、衆議院解散と明らかにリンクしている。
- 市場のムードの変化を客観的に捉えるためにチャートは有用。
(2) 投資のアイデアを引き出す
- FRB議長アラン・グリーンスパンは、毎日チャートを確認し、そこから仮説を立てていた。
- チャートの動きから市場の兆候を察知し、ファンダメンタルズ分析で裏付けを取る手法。
(3) 自身の行動をチェックし、規律を保つ
- 感情に流されず、機械的にトレードルールを適用する。
- 損切りや利確を感情ではなくルールで決めるための指標として活用。
4. 円安・円高は国力を反映するのか?
著者は「円安=日本の国力低下」という見方は完全に誤りであると断言します。
- 国力とは何か?
- 軍事力?経済規模?経済成長率?明確な定義がない。
- これらと為替の間に直接的な相関関係はない。
- 通貨の価値は何で決まるのか?
- 短期的には金利差が最も影響を与える。
- 長期的には購買力平価(PPP)が作用する。
- 購買力平価に基づくと、円安は一時的なもので、長期的には修正される可能性が高い。
- 1980年代までは輸入による円安圧力の方が強かったが、近年は金利差の影響が大きい。
- 為替予測は株の予測よりも難しい。
- 予測に頼るのではなく、通貨分散などのリスク管理を行うのが賢明。
まとめ:投資の世界は常に変化する
本書を通じて得られる最大の教訓は、「投資の世界に絶対的な正解はない」ということです。
- 市場は非効率でありながら効率的でもある。
- チャート分析は万能ではないが、適切に活用すれば有用なツールとなる。
- 為替の動きは単純な法則では説明できない。
もし投資初心者なら、まずはインデックス投資を基本にしながら、こうした市場の本質を学ぶのが良いでしょう。本書は、情報に惑わされず自分の投資哲学を確立したい人にとって必読の一冊です。
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