2023年は前年を上回る武力紛争が発生しており、これらの紛争には大国間の政治的な駆け引きなども関わっており、国際政治や経済の変動に大きな影響を与えています。
シリア紛争
シリア紛争は2011年に始まったアサド政権への抗議行動をきっかけに現在も続いている内戦です。
2023年時点ではアサド大統領がイランとロシア軍の支援を背景に国土の大部分を支配しています。シリア政府はロシアとイランから、反体制派は米国とその同盟国から支援を受けているため、紛争は長期化しています。
さらに、シリアの経済は紛争と経済制裁の影響で大きく苦しんでおり、主要な収入源の一つが麻薬の販売になっている状況です。
シリア軍は「貧者のコカイン」と呼ばれるアンフェタミンを生産・輸出しており、その収入は年間570億ドルでシリアの外貨収入の9割を占め、これはメキシコの麻薬カルテルの収入の3倍に達します。
シリアからの麻薬は中東全域に広がっており、特にサウジアラビアをはじめとする湾岸諸国で大きな問題となっています。シリア政府はキャプタゴンを戦略的な兵器として利用し、近隣諸国に対する圧力手段として用いています。
例えば、シリア政府は麻薬の流入を減少させることを交渉材料に使い、サウジアラビアなどの国々との関係を操作しようとしています。
メキシコのカルテル問題
メキシコではカルテルによる暴力問題が深刻です。
2018年以降、カルテルの暴力で毎年約3万人の死者が出ており、メキシコ政府もカルテルとの戦いで人権侵害に関与しています。
また、2023年には米国とメキシコの国境で250万件もの移民の遭遇が記録され、歴史的な最高数を更新しました。
さらに、2022年8月にはメキシコ議会が軍が国内の法執行を行うことを認める改革案を可決し、軍が法執行を担当することで市民の権利が制限されるリスクが高まっています。
ハイチの政情不安
ハイチでは2021年にギャングの集団が大統領を暗殺したことで政府の基本機能が停止し、ギャングの暴力が蔓延しています。
ギャングはハイチの6割を支配しており、国の支配権をめぐって激しく対立しています。
2023年には国連安全保障理事会がケニア人主導の他国籍治安部隊をハイチ警察を支援するために派遣することを承認しました。
ソマリアの混乱
ソマリアは深刻な飢饉に直面しており、約700万人が食料不足に苦しんでいます。
また、100万人以上が干ばつにより避難を余儀なくされている状況です。ソマリアにはアルシャバブというテロ集団が存在し、彼らはソマリアで勢力を拡大してきました。
サヘル地域
サヘル地域の多くの国々は政治的不安定や紛争に直面しています。
特に、武装勢力やテロリストグループの活動が活発化しており、治安が悪化しています。
例として、マリ、ブルキナファソ、ニジェールでは、イスラム過激派のテロリストグループによる攻撃が頻発しています。
ヨーロッパ連合(EU)やアメリカなどの国々も、サヘル地域の安定と発展を支援するために資金援助や技術支援を提供しています。
インドとカナダの緊張
2023年、インドは安全保障上の脅威を理由にカナダへのビザ発給を停止しました。
これはカナダのジャスティン・トルドー首相がインド政府を非難したことへの反応です。
具体的には、トルドー首相はインド政府がカナダ国内でシーク教徒の指導者を暗殺したと主張しています。
ミャンマー
ミャンマーは1941年以降、世界で最も長く続いている武力紛争を経験しています。安定した政府の支配が全土に及んだことはなく、様々な民族間の対立や政治的な動揺が続いています。
2021年2月、ミャンマーで軍部がクーデターを起こし、民主的に選出された政府を追放しました。
これ以降、反政府勢力が結集し、特に民主化推進派のゲリラグループが目立っています。クーデター以降の反政府勢力の動きは、ミャンマーの政治的な変化の兆しを示していますが、国内の紛争が簡単に解決されるわけではありません。
ミャンマーの紛争には中国との関係が大きく影響しています。中国はミャンマーに対して大規模な経済的、戦略的投資を行っており、特に石油輸入の脆弱性を抑えるためのインフラプロジェクトに投資しています。
ミャンマーは経済的に不安定な状況が続いており、政府の統制が弱まる中で空爆が増加しています。2023年には民間人の死者が激増し、紛争の過程で推定8万6400人が命を落としたとされています。このことが政権に対する反発をさらに強め、新たな反政府勢力の戦闘員を引きつけています。
ミャンマーには3同胞同盟と呼ばれる3つの著名な反政府勢力がありますが、これは39の異なる反政府勢力の一部に過ぎません。この多様性はシリアやニューギニアの氾濫と似ており、異なるグループがそれぞれの思惑を持っているため、政権を打ち倒してもミャンマーが完全な安定を得るのは難しい状況です。
アゼルバイジャン
2023年9月19日、アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフへの大規模な軍事攻撃を開始しました。この攻撃により、アゼルバイジャンは多くの軍事拠点を選挙し、地域を掌握しました。
ロシアの介入により停戦協定が結ばれ、アゼルバイジャンはナゴルノ・カラバフ地域を完全に掌握しました。これにより、約10万人のアルメニア系住民が避難を余儀なくされました。
アゼルバイジャンは石油やガスなどの資源を背景に経済力を強化しており、これが軍事力の増強にもつながっています。特に、BPなどの国際企業との協力により、アゼルバイジャンの経済は大きく成長しています。
インドネシア
インドネシアでの西パプアでは独立を求める運動が続いています。
西パプア民族解放軍がインドネシア政府に対して独立を求めており、2023年2月にはニュージーランド出身のパイロット、フィリップ・マルティネスが反乱グループに待ち伏せされて人質に取られる事件が発生しました。
インドネシア政府は西パプアの独立運動を強く抑圧しており、自由パプア運動の旗を掲げるだけで長期の懲役刑に処されることもあります。このような政府の抑圧は反政府勢力に新たな支持者をもたらし、紛争を長引かせる要因となっています。
ウクライナ
2023年に入ってもウクライナ戦争は続いており、双方ともに大きな領土の獲得はありません。しかし、ロシアはわずかに領土を拡大しており、年初から188平方マイル多い領土を支配しています。
一方で、ウクライナは143平方マイルの領土を失いました。現在、ロシアはウクライナ領土の18%を支配しています。
ニューヨーク・タイムズによれば、戦争の死者数は双方合わせて50万人に迫っているとされています。
ウクライナのゼレンスキー大統領は国内の全ての人々に新しい防衛線の建設に協力するよう呼びかけています。これはロシアの進行を止めるための重要な措置です。
西側諸国はウクライナへの軍事支援や経済支援を続けていますが、その支援が鈍化すればウクライナにとってさらに厳しい状況になる可能性があります。
イスラエルとハマスの紛争
2023年10月7日に始まったイスラエルとハマスの紛争では、1330人以上のイスラエル人が亡くなり、10月28日からはイスラエルがガザ地区への地上作戦を開始しました。
イスラエルがガザの北半分を確保し、ハマスの戦闘員を南へ押し下げることによって、人道的な問題が悪化しています。ガザのパレスチナ人は戦争から逃れる方法が限られており、厳しい状況に置かれています。
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