本記事は「第129回 【知ると差がつく】2025年10月 学長が選ぶ『お得』『トレンド』お金のニュース Best6」という元動画タイトルを基に作成しています。
結論(まずは要点だけ)
2025年10月の「お金のニュース」は、
- フランス格下げに見る国債・通貨の信認低下リスク
- 日本株で進む株式分割の増加
- 急増するリアルタイム型フィッシング詐欺
- 円運用の新選択肢となる国内MMFの復活
- 金(ゴールド)価格の急騰と小型地金の販売停止
- 「みんなの投資額」から見える行動ギャップ
の6本柱でした。
資産形成の実務としては、長期・分散・低コストの基本を維持しながら、守りの装備(多要素認証、パスワード管理、正規導線の利用)を固め、キャッシュ運用の選択肢(MMF等)を理解し、相場急変時にも振り落とされないルールとマインドを先に用意しておくことが最重要です。
日本は無関係ではない:フランス格下げと「通貨安・金利上昇」の連鎖
何が起きたのか(背景)
2024年、格付け会社がフランス国債の格付けをシングルAへ引き下げました。
政治の不安定化が背景にあり、首相が短期間に交代するなど、財政再建の遅れが懸念されています。財政赤字はGDP比5.8%と、EUルール(3%以内)を大きく超えた状態にあり、対外的な信認が揺らいでいます。
なぜ重要なのか(メカニズム)
格付けが下がると調達金利が上がるため、利払い負担が増え、財政再建がさらに難しくなります。
歴史的には、国債価格の下落(=金利上昇)→通貨安・インフレ加速→債務膨張という順で進行しやすいことが知られています。ここでのポイントは、「最初に起きるのは国債価格の下落」という事実です。
日本への示唆(数字と例)
日本もシングルA圏で、短期的に破綻リスクが高いわけではありません。
それでも、仮に長期的な国債価格の下落が続くなら、金利上昇→円安・インフレ加速という黄色信号です。通貨の目減りから資産を守る必要が生じます。
どう備えるか(行動)
通貨価値の低下局面では、インフレに強い資産(世界株式=オルカン、米国株指数=S&P500 等)が機能しやすいと語られています。
さらに、日本国債ベア型ファンド(例:5倍型)という“保険”の選択肢も頭の片隅に置いておく価値があります。
ただしレバレッジ商品には減価や急変動など固有のリスクがあるため、現時点での推奨ではない点は強調しておきます。基本は現金+株式のシンプルな配分で十分です。
株式分割が12年ぶりの高水準:最低投資額が下がると市場は活性化する
何が増えているのか(事実)
2025年4〜9月の株式分割は124件で、12年ぶりの高水準となりました。
株価上昇に伴い最低投資額が上がると個人が買いづらくなるため、企業は流動性向上を目的に分割へ動きます。
仕組みを「ピザ」で理解する(具体例)
100株単位・1株2万円なら最低投資額は200万円です。これを1→5分割すれば、1株あたりは4,000円となり、最低投資額は40万円に低下します。
ピザを切り分けて買える“切れ端”を増やすイメージです。企業価値は変わらず、取引のしやすさだけが向上します。
背景:東証改革と国際比較
東証は、市場区分再編やPBR・ROE意識の促し、最低投資額の引き下げ要請など、総合的に市場の質を高めています。
米国では1株から買えるのに対し、日本は基本100株単位。分割の増加は、日本市場の参加ハードルを下げる動きの一部です。
投資家の視点(行動)
分割は長期的には中立ですが、需給の改善や投資家層の拡大を通じて出来高・注目度が上がる傾向があります。分割を材料に短期売買を狙うのではなく、事業の質・稼ぐ力(ROE、営業CF)を軸に、保有の意義が高まるかを淡々と検討しましょう。
守りの装備を更新せよ:2段階認証でも破られる「リアルタイム・フィッシング」
何が新しいのか(手口の進化)
従来のフィッシングは、偽サイトに入力されたID・パスワードを“後から”悪用するのが主流でした。
いま増えているのは、入力と同時に犯人側も本物サイトへログインしてしまうリアルタイム型です。ワンタイムパスワードの入力画面まで同時進行で突破されます。
被害が増える背景(数字)
2025年8月の国内フィッシング報告は19万件超と増勢。証券口座を狙う事例も多く、被害は「投資用の大金」に直結します。
何をすべきか(実務)
まず、多要素認証(2段階以上)は引き続き有効です。ただし、メール・SMSに届いたリンクは踏まないこと。必ずブックマークした正規URLまたは公式アプリからアクセスします。さらにGmailの迷惑メールフィルタは高性能で、詐欺メールの受信自体を減らせます。
パスワード管理ソフトは、偽URL(1文字違い等)を自動で判別し、オートフィルを拒否して気づかせてくれます。ウイルス対策ソフトよりもまずは導線・運用ルールの徹底が費用対効果に優れます。
口座・カードを必要最小限に整理しておくと、「持っていない先からの“なりすまし”」に即座に気づけるという副次効果もあります。
円の置き場が広がる:国内MMF(マネー・マーケット・ファンド)9年ぶり復活
そもそもMMFとは(定義)
元本保証ではないものの、極めて低リスクの短期金融商品に分散投資し、預金よりやや高い利回りを狙う投資信託です。投資対象は国債・地方債・社債・CP等が中心で、株式は基本組み入れません。
歴史と数字(なぜ今なのか)
2000年前後には運用残高が20兆円超まで拡大しましたが、超低金利で魅力が薄れ、2016年の政策で販売停止が拡大。いまは金利のある世界が戻り、2026年前半にも主要機関が再開する見込みが語られています。
預金とのちがい(要点)
MMFは、解約が自由で流動性は高い一方、信託報酬や信託財産留保額など保有・解約コストが発生する場合があります。元本割れの可能性もゼロではありません。プラス面は、預金より高めの利回りが期待できることです。
重要なのは、「預金の完全上位互換ではない」という理解です。リターンには必ず何らかのリスク・コストの対価が伴います。
使いどころ(行動)
短期〜中期の円資金に、普通預金より効率よく“待機”させたい局面で候補になります。NISA等の株式インデックス投資の“核”は崩さず、余剰の円キャッシュの置き場として仕組みを理解しておく姿勢が妥当です。
金(ゴールド)高騰と小型地金の販売一時停止:今、買うべきか?
何が起きたのか(事実)
田中貴金属などで小型地金(5g, 10g, 20g, 50g)の販売が一時停止されるなど、現物需要が殺到しました。国内円建て価格は2020年10月の約7,100円/g → 2025年10月に約21,800円/gへと、5年で3倍超に上昇しました。
なぜここまで上がったのか(要因)
インフレ進行、財政不安、各国中銀の買い、地政学リスク、円安が複合的に作用しました。特に日本の投資家には為替(円安)の影響が上乗せされ、ドル建て以上に値上がりが体感されます。
それでも万能ではない(データ)
金は「安全資産」と言われますが、年次リターンの振れ幅は大きく、-20〜-30%級の下落も珍しくありません。
上がる時は上がり続け、下がる時は下がり続ける性質があり、投機と資産防衛の境界が曖昧になりやすい商品です。
小型が売れる理由(実務)
購入金額の小回しが利くことに加えて、売却時に使える譲渡所得の特別控除(50万円)を小口分割で活かしやすい点、運搬・保管・贈与のしやすさなど、利便性が支持されています。コインより地金の方が割安になりやすいというコスパ面もあります。
結論と行動
「値上がりしているから買う」は禁物です。
長期ポートフォリオに組み入れるなら、総資産の5〜10%程度を“世界秩序変化への保険”として持つのがバランスです。主役はあくまで生産性のある資産(株式)であり、金は補助的に考えるのが合理的です。
みんなはいくら投資している?月10万円以上が多数派という事実と「行動ギャップ」
調査の輪郭(数字)
日経電子版読者1,934人への調査では、投資実施者の多くが毎月10万円以上投資し、30〜40代は半数超が10万円以上、月30万円以上が約2割という結果でした。新NISA開始や株高が投資額の押し上げに影響しています。
真に怖いもの(データが示す行動)
S&P500の指数そのものの30年平均リターンが約11%の一方で、投信保有者の平均は約3.7%に留まったという有名な統計があります。差を生んだのは投資家の行動、すなわち高く買って安く売るという感情に駆動された売買です。
暴落時に売らない・積み立てを止めないという“当たり前”が、誰にも簡単ではないからこそ差がつきます。
どうすれば振り落とされないか(行動)
平時から、最大ドローダウンを想定し、自分が動揺しない株式比率を決めておきます。相場が好調な時ほど、積立額を増やし過ぎないブレーキも有効です。暴落が来たら、ルール通りに積み立てを続け、“売らない”という最強の行動を淡々と遂行します。
他人の投資額に焦点を当てず、自分の家計・性格・目標に合った最適解を守り抜くことが、長期の複利を守る唯一の近道です。
補足:今日からできる「守る力」と「増やす力」の両立フレーム
守る力(セキュリティ・資金管理)
日常の導線を公式アプリ/ブックマークに固定し、メール・SMSのリンクは踏まないルールを家族含めて共有します。Gmailに一本化し、パスワード管理ソフトと2段階以上の認証を標準装備にします。不要口座・カードを整理し、“知らない先”からの通知に即気づける体制を作ります。
増やす力(配置と設計)
主役は世界株式(オルカン)/S&P500の積立。現金クッションや短期の円資金は個人向け国債やMMFなど「目的別の置き場」へ整理します。金は保険的比率に限定し、レバレッジ商品は仕組みとリスクを完全に理解できる範囲でのみ“点”として活用します。


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