本記事は、YouTube動画『【2026年株式投資戦略】日経平均4万円割れも…?/株価暴落を引き起こすトリガーは/AIバブルの崩壊はいつ訪れる?/日銀利上げの株式市場への影響【エミンの月間株式相場見通し12月号 | 松井証券】』の内容を基に構成しています。
導入:2026年の株式市場は「上昇トレンド継続」か「AIバブル崩壊」か
2025年も終盤に差しかかる中で、投資家の関心はすでに2026年の相場に移りつつあります。動画では、エコノミストのエミン・ユルマズ氏が、アメリカと日本の景気・株式市場の現状を整理しつつ、2026年の株式相場の見通しとリスク要因を詳しく解説しています。
結論から整理すると、エミン氏の見立ては次のようになります。
日経平均については、基本的な上昇トレンドは続く可能性が高いものの、どこかのタイミングで日経平均4万1000円前後までの調整は「自然な範囲」として十分あり得る。
一方で、アメリカ株、とくにAI関連ビッグテックに支えられた相場については「バブル的な色彩」が濃くなっており、どこかでAIバブルが崩壊するリスクも無視できない。
そして、そのAIバブル崩壊やアメリカ景気後退、さらには地政学リスク(台湾有事など)が、日本株にとって最大の下落トリガーになる可能性がある、というのが大きなメッセージです。
この記事では、動画の内容をできるだけ削らずに整理しながら、初心者にも分かりやすいように補足を入れつつ、2026年の株式投資戦略を考えるうえで重要なポイントを解説していきます。
アメリカと日本の景気・株式市場の現在地
アメリカ:景気先行指数は2年連続で悪化、消費者マインドは2022年の底と同水準
まずアメリカの景気から見ていきます。エミン氏は、景気の「先行指数」と「一致指数」に注目しながら、現在のアメリカ経済を解説しています。
景気先行指数は、今後の景気を先取りする指標で、ここ2年ほど悪化が続いており、足元でも下落が続いている状況だと指摘します。
一方で、一致指数は「雇用」に強く連動する指標で、現時点では横ばいからやや鈍化気味。しかし、この一致指数がはっきりと下向きに転じたときが、本格的な景気後退入りのサインになると説明しています。
加えて、アメリカの消費者心理を示す「消費者信頼感指数」は、2022年とほぼ同じ水準まで落ち込んでいます。
2022年はインフレ率が9%前後まで跳ね上がり、FRBが急ピッチで利上げを行い、政策金利を一気に5%まで引き上げた年でした。その結果、投資と消費が急速に冷え込み、株式市場もナスダックが約4割、S&P500が2割以上下落する厳しい相場となりました。
現在の株価水準は高いものの、消費者マインドはその2022年とほぼ同じレベルまで悪化している、というギャップが生じている点が重要だとしています。
雇用環境:失業率4%台から5%に達すると「ほぼ手遅れ」
雇用に関しても慎重な見方が示されています。足元の失業率は4%台ですが、もし5%に達するようであれば、その時点ではすでに景気後退が始まっていて「手遅れ」の状態になっている可能性が高いと指摘します。
エミン氏は、Amazon、Microsoft、UPS、Targetといった大手企業でホワイトカラーの人員削減が進んでいることにも触れています。
表向きは「AIによる効率化で人員が不要になった」という説明がなされていますが、実態としては「利益率(マージン)の悪化に対応するためのリストラ」である可能性が高いと見ています。
FRBの役割は「インフレ抑制」と「雇用最大化」の2つであり、その両方のバランスを取る必要があります。利下げを急ぎすぎるとインフレが再燃するリスクが高まり、逆に高金利を長く維持しすぎると、住宅市場をはじめとして景気全体が悪化するリスクが高まります。この難しい綱渡りの中で、アメリカ経済は不安定な局面にあるといえます。
アメリカ株式市場の詳細:AIバブルとビッグテック依存の現実
S&P500は「AI+ビッグテック相場」に完全依存
それでは、こうしたアメリカ景気の中で、株式市場はどのような構図になっているのでしょうか。
エミン氏は、S&P500の中で「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるビッグテック株(AI関連の巨大企業群)が占める比率が、すでに35%を超え、4割近くに達していると指摘します。
この比率が示すのは、アメリカ株式市場全体が、実質的にはAI関連ビッグテックの値動きに大きく依存しているという現状です。
ナスダックとS&P500の動きが最近似通ってきているのも、両者ともにAI関連のビッグテック銘柄に大きく支えられているからだと説明されます。
GDPまでAI投資に依存するアメリカ経済
もう1つ重要なのが、実体経済の側面です。エミン氏によると、アメリカのGDPがいまだにプラス成長を維持している主な要因は、データセンター投資を中心としたAI関連投資だと言います。
AI投資は単なるソフトウェア開発ではなく、以下のような「大型投資」を伴います。
- データセンターへの半導体導入
- 電力インフラの確保
- 冷却設備の整備
- 人員の採用・運営コスト など
これらの投資がGDPを押し上げている一方で、裏を返せば「AI投資が止まればGDP成長も鈍化しやすい」という構造的な脆弱性も抱えていることになります。株式市場だけでなく、実体経済までもがAI関連の設備投資に強く依存している状況を、エミン氏は懸念しています。
インフレ期待と「最悪シナリオ」
ミシガン大学の「1年先の期待インフレ率」は、足元で4%台半ばを示しています。
つまり一般の消費者は「1年後もインフレ率が4%台半ばになる」と考えているということです。
エミン氏は「実際にそのような高インフレが続くとは考えていない」としつつも、もし本当に4%台半ばのインフレが定着してしまえば、それはアメリカにとって極めて深刻な事態になると警鐘を鳴らします。
その場合はFRBが再び利上げを強いられ、金利は再度上昇圧力にさらされる可能性が高いからです。
この「インフレ再燃→利上げ再開→景気後退・株価調整」というシナリオは、2026年前後のアメリカ市場にとって大きなリスク要因となり得ます。
日本経済と日経平均の現状:5万円台到達と今後のテクニカルな節目
日本の景気:悪くもなく良くもない「横ばい圏」
次に、日本経済の現状です。2025年7月時点の日本のGDP成長率は前年同期比でマイナス2.3%と悪化しており、その後さらに下方修正されました。一方で、10–12月期の数字では持ち直しの兆しが見られ、全体としては「大きく悪化もしていないが、決して好調ともいえない中庸な状態」にあると説明されています。
景気指標としても、アメリカのように大きな落ち込みが鮮明というわけではなく、全体として安定した横ばい圏にあるという認識です。
日経平均の上昇要因:日銀の「利上げ慎重姿勢」とAI関連の追い風
2025年の日本株の動きに目を向けると、6月までは相場の調子が悪かったものの、6月以降は日経平均が一貫して上昇基調をたどりました。
その背景としてエミン氏が挙げるのは、日銀がなかなか利上げに踏み切らず、市場から「鳩派的(金融緩和寄り)」と見られていたことです。世界的に金利が高止まりする中で、日本だけが相対的な低金利を続けていたことが、株式市場にとって追い風となっていました。
しかし、10月以降は「日銀が利上げに動くのではないか」という観測が高まり始め、それにともなって日経平均も調整局面に入りました。
同時に、テクニカル面でも日経平均は「大きな抵抗帯」に差しかかっているとされます。
テクニカルなゾーン:5万1000円付近が上値のフシ、4万1000円までの調整は自然
エミン氏は、日経平均の「テクニカルステージ」を1万円単位のゾーンでとらえて解説しています。
おおまかに言うと、日経平均は
3万円台、4万円台、5万円台 といった「1万円ごとのゾーン」を行き来しながら、中長期で水準を切り上げてきた、という捉え方です。
現在の日経平均は5万円ゾーンに入り、上値抵抗の目安は5万1000円前後にあると分析しています。
そして「日銀の利上げをある程度織り込んだ水準が5万1000円付近である」とし、この水準まで株価が到達していること自体、日本株の強さを示していると評価しています。
ただし、日経平均は4万円に達してから何度も3万1000円前後まで急落してきた経緯があります。
そのパターンを踏まえれば、今後もどこかの局面で4万1000円程度まで調整が入ることは十分自然な動きであり、「それ自体は過度に恐れる必要はない」と述べています。
一方で、4万1000円よりもさらに大きく割り込むような下落が起きる場合には、その背景に「AIバブルの崩壊」や「金融危機」「大規模な地政学リスク」など、より深刻な要因がある可能性が高いとしています。
世界株のパフォーマンス:2025年は日本株が「米国より強かった」
年初来パフォーマンス:香港、日本、ドイツ、英国が上位
2025年の世界株式市場の年初来パフォーマンスも動画で紹介されています。
おおまかな数字は以下の通りです。
- 香港ハンセン指数:約28%上昇
- 日経平均:約27%上昇
- ドイツ株:約21%上昇
- 英国株:約18%上昇
- ダウ平均:約12%上昇
- S&P500:約20%前後の上昇
つまり、S&P500やナスダックを含めても、日経平均の上昇率はアメリカ株を上回っているという結果になっています。
トランプ関税の「影響を受けやすい国」ほど株価が上がった不思議
興味深いのは、トランプ前政権の関税政策(トランプ関税)によって最も悪影響を受けると考えられていたのが中国、日本、ドイツであるにもかかわらず、その3カ国の株価が大きく上昇している点です。
エミン氏は、その理由の1つとして「トランプ政権に対する同盟国の不満」があるとし、資金の一部がアメリカから他国(日本やドイツなど)にシフトしている可能性を指摘しています。
為替レートの面でも、年初に1ドル=158円程度だったドル円は、足元で156円前後と、わずかに円高方向へ戻った程度で「行ってこい」の状態です。
それでもドル建てで見た日経平均のパフォーマンスは、ダウ平均の2倍以上、S&P500やナスダックをも上回っているとされ、日本株の「相対的優位」が2025年は際立つ形となりました。
株式市場は足元だけでなく「1年先、2年先」を織り込む市場であるため、トランプ関税の影響をある程度前倒しで織り込みつつ、来期以降の景気回復期待も同時に反映しているというのが、エミン氏の見立てです。
2026年の日経平均のレンジ感:6万円を目指す前の「揉み合い」と「調整」
しばらくは5万円前後でのレンジ、その後「6万円」を目指す可能性
日経平均の今後の水準感について、エミン氏は「具体的なレンジは出さない」としつつも、おおまかなイメージを語っています。
まず、5万円付近まで到達した後は、半年から1年程度のレンジ相場(揉み合い)になる可能性が高いとしています。
この間に、4万1000円前後までの大きな調整を何度か挟みつつ、下値の堅さを市場に確認させる時間帯が続くという見方です。
そこから、アメリカで大規模な金融危機などが起きない限り、2026年秋以降には再び上昇の勢いがつき、「日経平均6万円」を目指す動きが出てくる可能性は十分にあるとしています。
数字の面から見ると、5万円から6万円への上昇は20%の上昇に相当します。
日経平均は2025年にすでに26%程度上昇しているため、「同じような上昇率をもう一度達成できれば、6万円を超えることも理論上はあり得る」と、エミン氏は説明します。
4万1000円への下落は「自然な押し」、それ以下は「危険なシグナル」
4万1000円までの下落は、過去の動き(4万円到達後に3万1000円を数回試したパターン)を踏まえると、同じゾーン内での自然な値動きと考えられます。
問題は、4万1000円付近のサポートが機能せず、明確に割り込んでしまうようなケースです。
その場合は、単なる自然な調整ではなく、以下のような「より大きなショック」が背景にある可能性が高いと想定されます。
- AIバブルの崩壊(ITバブル崩壊級の下落)
- 世界的な金融危機
- 大規模な地政学リスク(台湾有事など)
このような「構造的ショック」がない限り、4万1000円程度までの調整は「むしろ健全な押し目」と捉えるべきだというのがエミン氏のスタンスです。
下落トリガーとなり得る要因:AIバブル崩壊、アメリカ景気後退、地政学リスク
日本株最大のリスクは「アメリカ発」のショック
来年以降の日本株の最大のリスク要因として、エミン氏は次の2点を挙げています。
- アメリカのAIバブル崩壊
- アメリカの景気後退(リセッション)
重要なのは、「日本の景気悪化」よりも「アメリカ景気後退」の方が日本株にはるかに大きな影響を与えうるという点です。
アメリカ経済とアメリカ株式市場が崩れない限り、日本株は調整を挟みながらも中長期的には上昇トレンドを維持しやすい構図にあります。
しかし、今のS&P500やナスダックの構成を見れば分かるように、株式市場も実体経済もAI関連投資とビッグテックへの依存度が非常に高くなっており、その「一本足打法」のリスクは徐々に高まっています。
トランプのインフレ対策と「バラマキ」の逆効果
もう1つの不確定要素が、トランプ前大統領の政策です。
トランプ氏は、関税収入を財源として「国民1人あたり2000ドルを給付する」といったバラマキ的な案を口にしていると紹介されます。
しかし、これは一時的な人気取りにはなっても、中長期的にはインフレを加速させる可能性が高く、「インフレ対策」としては逆効果になりかねません。
トランプ氏は不動産出身であり、本音としては「金利は低い方が良い」と考えていると推測されていますが、金利を下げるためのバラマキ政策がインフレを再燃させれば、結局はFRBが利上げを再開せざるを得なくなり、景気にも株式市場にもマイナスに働きます。
地政学リスク:台湾有事など
さらに、台湾有事をはじめとする地政学リスクも、2026年前後の相場を左右し得る重要な要因として挙げられています。
最近になって台湾周辺の安全保障環境が一段と注目されており、有事が現実味を帯びて語られる場面も増えてきました。
こうしたリスクが現実化した場合、日本株を含めた世界の株式市場に大きなショックを与える可能性があるため、投資家は相場の上下だけでなく「ニュースや国際情勢」にも目を配る必要があります。
2026年の注目セクター:防衛、食料・水、レアメタル関連
防衛関連は引き続き注目、ただし「ど真ん中」は割高
最後に、2026年の注目セクターについて、エミン氏は「基本的には今年と変わらない」としながら、以下の分野を挙げています。
- 日本の防衛関連
- 食料関連
- 水関連
- レアアース・レアメタル関連
日本の防衛関連銘柄は、防衛費増額や安全保障環境の変化を背景に、今後も資金が入りやすい分野と見られています。
ただし、防衛関連の「ど真ん中」と言える銘柄はすでにかなり割高になっているため、今後はその周辺分野に資金が波及していく可能性があると指摘します。
食料・水・レアメタル:安全保障の観点からも重要性が高まる分野
食料や水は、人間の生活に不可欠なインフラであり、地政学リスクやサプライチェーンの分断が進む中で、より一層戦略的な重要性を増していくと考えられます。
また、中国との対立が深まる中で、レアアースやレアメタルの供給リスクも意識されるようになってきました。
その結果、日本の鉱山会社や資源関連企業が注目され、資金が向かう可能性があるとエミン氏は述べています。
これらのセクターは短期的なテーマ性だけでなく、中長期の安全保障・サプライチェーン戦略という観点からも重要性が高い分野であり、2026年に向けても引き続きウォッチしておきたい領域です。
追加解説:個人投資家が意識すべき2026年の投資スタンス
ここからは、動画内容を踏まえて、個人投資家が2026年にどのようなスタンスで相場と向き合うべきかを整理します。
1万円ごとの「ゾーン」を意識しながら長期目線で構える
エミン氏の指摘する「日経平均は1万円ごとのゾーンで動く」という考え方は、個人投資家にとっても分かりやすいフレームワークです。
3万円ゾーン
4万円ゾーン
5万円ゾーン
という水準を意識しつつ、「一度ゾーンの上限に到達すると、その後は何度か下限に近い水準を試しに行く」というパターンを念頭に置いておくと、急落局面でも過度に慌てずに済みます。
4万1000円までの下落は「自然な押し目」である可能性が高いという視点を持つことで、むしろ長期投資家にとっては「質の良い買い場」となる場面も多くなります。
AIバブル崩壊の可能性を前提に「集中しすぎない」
一方で、アメリカ株と日本株の双方にとって共通する最大のテーマは「AIバブルがどこまで続くのか」です。
現在の株価水準を見ると、AI関連ビッグテックに資金が集中しすぎており、S&P500やナスダック全体がその値動きに大きく左右されています。
この構造を前提にすれば、AI関連への比重を高める戦略は短期的には効果的かもしれませんが、中長期ではリスクも同時に高まることを意識しておく必要があります。
AI関連銘柄だけに極端に集中せず、景気後退局面でも需要が落ちにくい分野や、安全保障・インフラ・資源といった「構造的テーマ」にも分散することが、2026年の投資戦略として重要になります。
政治・地政学のニュースにも目を向ける
2026年はトランプ前大統領をめぐる政治動向や、中間選挙に向けた政策、台湾情勢をはじめとする地政学リスクが、株式市場にとって大きな材料となる可能性があります。
従来のように「経済指標と決算だけを見ていればよい」という時代ではなくなりつつあり、政治や安全保障のニュースが株価に直結する局面が増えています。
とくに、日本株は「アメリカ発のショック」の影響を強く受ける構造にあるため、アメリカのインフレ動向、FRBの政策、トランプ氏の発言・政策提案などにも注意を払うことが、2026年以降の投資判断では欠かせません。
まとめ:2026年株式投資で押さえておきたいポイント
2026年の株式相場は、AIバブルの行方とアメリカの金融・財政政策、そして地政学リスクの動向によって、大きく姿を変える可能性があります。
短期的な値動きに振り回されるのではなく、景気指標・金融政策・国際情勢を総合的に捉えながら、「どの水準ならリスクに見合うリターンが期待できるか」を冷静に考えることが、これからの時代の投資家に求められていると言えます。


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