2027年にiDeCo上限が大幅拡大へ。だが受け取り方を誤ると課税で損をする

目次

結論

2027年にiDeCoの拠出上限が引き上がると、節税余地は大きくなる。

しかしメリットは「拠出時の所得控除」で確定し、デメリットは「受け取り時の課税」で現れる。

収入や退職金の有無、受け取り方法を誤ると、同じ運用成果でもNISAより手取りが減るケースがある。始めるのは待たなくて良いが、受け取り戦略の理解は必須。


何がどう変わるのか。改正の全体像


2027年からiDeCoの月額上限が拡大する。さらに2026年4月には企業型DCの上限が先行して引き上がる。

上限改定まとめ

区分旧上限(月額)新上限(月額)施行時期の目安
自営業(第1号被保険者)68,000円75,000円2027年
会社員(企業年金なし等の一般像)23,000円62,000円2027年
企業型DC(マッチング等の条件により異なる)55,000円62,000円2026年4月先行

ポイント
拡大後を待つ必要はない。今すぐ現行上限で始め、施行時に手続きで上限引き上げが可能。


NISAとiDeCoは何が違うのか。仕組みの整理

共通
運用益は非課税。

相違の核心
NISAは拠出時の所得控除がない。

一方iDeCoは拠出額がそのまま所得控除になり、所得税・住民税の負担が下がる。その代わり、原則60歳まで引き出せず、受け取り時に課税の論点が発生する。


iDeCoは誰に有利か。具体的シミュレーションで理解する

ケース1 会社員・年収600万円・50歳から10年拠出

仮定
所得税率20%、住民税率10%(合計30%)
月額62,000円を10年拠出
運用利回り年5%想定

積み立て総額
62,000円 × 12カ月 × 10年 = 744万円

10年後の評価額(年5%)
約960万円(増加分約220万円)

拠出時の節税効果
年22万円(62,000 × 12 × 30%)が10年で約220万円

受け取り時の税金の一例
退職所得課税の概算が約50万円(動画の説明より)

ネットの効果
節税約220万円 − 受け取り時課税約50万円 = 約170万円のプラス


解釈
高い税率で課税されている現役世代ほど、iDeCoの所得控除メリットが効きやすい。

ケース2 無職・専業・資産生活者が同条件で拠出

仮定
所得税・住民税ともに0%

拠出時の節税効果
0円

評価額は同じく約960万円
受け取り時の退職所得課税の概算が約50万円

ネットの効果
0円 − 約50万円 = 約50万円のマイナス
解釈
課税所得がない層は、拠出時の恩恵がなく受け取り時だけ課税されるため、NISAのほうが有利になりやすい。

比較早見表

属性拠出時の恩恵受け取り時の負担総合評価の傾向
課税所得が高い人ありiDeCo有利になりやすい
課税所得が低い・無い人小〜無ありNISA有利になりやすい
退職金が大きい人合算で課税枠圧迫NISAのシンプルさも検討余地

受け取り方法の要点。一時金か年金かで税制が変わる

一時金で受け取る
退職所得控除が使える。

退職所得控除の目安
積立期間20年以下
40万円 × 積立年数

積立期間20年超
800万円 + 70万円 ×(年数 − 20)


10年積立なら控除は400万円
30年積立なら控除は1500万円

考え方
退職金とiDeCo一時金の合計をこの控除枠に収められれば、課税を大きく抑えられる。

年金で受け取る
公的年金等控除の枠組みではなく、動画の説明では「公的年金+iDeCo年金の合計が110万円を超えると所得税・住民税・社会保険料の論点が出る」点に注意が必要という趣旨。

年金が少ない人ほど、受け取り期間を最長20年に伸ばし、1年当たりの受け取り額を抑えることで課税・負担を軽くしやすい。さらに受け取り中も残高を運用できるため、総受け取り額が増える可能性があるという実務的メリットもある、というのが動画のポイント。

シンプルな戦略の切り口
退職金が少ない人
一時金でも控除枠内に収まりやすい。あるいは年金受け取りで分散も有力。

公的年金が少ない人(自営業・専業の期間が長い等)
20年分割の年金受け取りで年間の課税ラインを意識しつつ、運用しながら取り崩す発想が有効。

退職金が大きい人
退職所得控除枠の圧迫により一時金課税が出やすい。NISAの比重を上げるなどの設計も検討。

注意
受け取り方法は開始時に選び、その後の変更はできない。初回選択が極めて重要。


万一のときはどうなるのか。相続・死亡時の取り扱い

積立中に死亡
その時点の残高が遺族に渡る。死亡退職金扱いとなり、相続税では「500万円 × 法定相続人の人数」が非課税枠として使える。受取人の指定も可能(生命保険に近い運用ができるイメージ)。

年金受け取り中に死亡
残余の一括支払い。こちらは死亡退職金扱いではなく、現金相続同様の扱いになる点が動画での注意点。


いつ始めるべきか。待つ必要はない


2027年の拡大を待たずに開始して良い。現行上限で拠出し、上限拡大後に増額手続きするのが現実的。むしろ拠出と運用の「時間」を早く味方にするほうがメリットは大きい。


初心者がつまずかないための実務チェックリスト

1 まずはNISAかiDeCoかの優先順位
課税所得が高い人はiDeCoの所得控除メリットが大きい。課税所得が低い人はNISA比重を上げる。

2 退職金の見込みを確認
一時金で退職金と合算したとき、退職所得控除の範囲に収まるか必ず概算。

3 受け取り方法の仮設計
一時金と年金の両案で手取りの試算を行う。年金は5・10・15・20年の中から、年間受取額が無理なく課税ラインを越えない年数を選ぶ。

4 受け取り方法は後で決めるがやり直し不可
開始時は未決でよいが、受け取り開始時の選択が固定化されることを念頭にライフプランを更新。

5 相続指定の見直し
受取人指定や家族構成の変化に応じて見直す。


まとめ

2027年の上限引き上げで、iDeCoの節税ポテンシャルは飛躍的に上がる。

だが拠出時の恩恵と受け取り時の課税は表裏一体。

課税所得が高い人ほどiDeCoの旨味が出やすい一方、無収入や低所得の人はNISAのシンプルな非課税のほうが有利になり得る。

受け取りは一時金と年金で税の仕組みが異なり、退職金や公的年金の水準次第で最適解が変わる。始めるのは今で良い。重要なのは、将来の受け取り設計を数字でシミュレーションしておくことだ。

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