目次

結論

バフェット流の肝は、優良企業の株式を「前増型のエクイティ・ボンド」として捉え、長期で保有することです。

初期の利回りは債券のように見積もり、そこに売上成長・自社株買い・インフレによる利益成長が積み上がるため、時間とともに保有利回りが右肩上がりになります。

金利水準や妥当な株価倍率を常に意識し、過大評価では一部売却、暴落に備えて現金も厚めに持つのが一連の戦略です。


エクイティ・ボンドとは何か

株式を債券になぞらえて考える発想です。

たとえば、ある企業の株がPER18倍なら、初期の利回りはおおむね5.55%(1÷18)と見積もれます。ここに次の三つが加わることで、実質利回りは年々厚くなります。


1 売上と利益の成長
2 自社株買いによる一株利益の押し上げ
3 インフレによる名目成長

コカ・コーラの実例

1988年に約13億ドル投資
2024年時点の評価額は約244億ドル
36年間で受け取った累計配当は約115億ドル


当初は利回り5.5%相当でも、成長と時間が複利で効いて、配当と評価益が巨大化した典型例です。


バフェットが重視する三つの視点

1、 5年間市場が閉まっても平気か
良い投資なら、明日市場が開かなくても困らないはずだという発想です。企業価値で買えているかの自己テストになります。

2 、変化が少なく、設備投資負担の小さい事業か
コカ・コーラのように、ビジネスの基本構造が長く変わらない企業は、競争に晒される度合いが低く、CAPEXも過大になりにくいです。半導体製造のように技術変化が速く資本負担の大きい分野は好まれにくいです。

3、 価格と金利のバランスは適正か
株価が企業価値に対して割高になれば、いかに優良でも売却の対象になり得ます。判断軸として金利とPERを素直に比べます。


金利とPERで見る「割高・割安」

金利が高いほど、国債など安全資産で十分な利回りが出るため、株の割高感は増します。逆に金利が低いほど、将来の企業収益の現在価値は高くなります。

簡易の見方
想定した一株利益(EPS)から「国債利回りで同額の収益を得るには、いくら必要か」を逆算し、実際の株価と比較します。

表:ある年のアップルのスナップショット(動画の解説より)

指標数値の目安
EPS6.4ドル
米10年国債利回り約4.3%
国債で同額収益を得る必要額約149ドル(6.4÷0.043)
当時の株価約225ドル
実効PER約35倍
バフェットが買い始めた頃のPER約16倍

国債と比べた必要投資額149ドルに対し、市場価格は225ドルまで上昇しており、相対的な割高感が強まったため、一部売却という意思決定につながったと考えられます。


円調達で日本株に投資したロジック

バークシャーが日本の商社株に投資したときの考え方は非常にシンプルです。
1 円建てで平均0.6%程度の低利で資金調達
2 およそ配当利回り2%前後の企業に投資
3 受け取る配当も支払う利息も円建てにそろえ、為替リスクを実務的に封じる
差し引き約1.4%の利鞘をベースに、企業の成長や自社株買いがのれば、総合リターンはさらに厚くなります。


現金は「暴落前に」用意します

現金の厚め保有は、暴落時の買い場にすぐ参加するための弾薬です。暴落が来てから現金化しても手遅れになりがちです。自社株買いなど機動的な資本配分の選択肢を増やす意味でも、キャッシュは戦略資産として扱います。


いますぐ使えるチェックリスト

エクイティ・ボンド視点で銘柄をふるいにかける簡易版です。

1 ビジネスの安定性
過度な技術変化や巨額の継続的CAPEXに依存していませんか。

2 初期の利回り
現在のPERから初期利回り(1÷PER)を概算し、国債利回りと比較して納得できますか。

3 成長ドライバー
売上成長、自社株買い、価格決定力など、保有利回りが増える仕組みは明確ですか。

4 バランスシート
過剰な負債はありませんか。金利上昇局面でも耐えられますか。

5 価格の妥当性
国債利回りとPERのバランスを見て、過大評価に傾いていませんか。

6 現金ポジション
下落相場に備えた現金は十分ですか。買い増し計画は用意できていますか。


まとめ

バフェット流の「エクイティ・ボンド」は、株式を債券のように初期利回りで捉えつつ、時間とともに利回りが増えていく設計を重視します。金利と価格を常に意識し、割安で買い、過大評価ではためらわずに削る。暴落前から現金を備え、長期で複利を効かせる。この一貫した態度が、コカ・コーラやアップル、日本の商社株といった投資の成功に通底しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次