本記事は、YouTube動画『四季報から見るここからの日本』の内容を基に構成しています。
2026年前半の日本株市場は、日経平均株価が大きく上昇するなど、非常に強い展開となりました。しかし、株価の上昇が実体経済の改善を正確に反映したものなのか、それとも金融環境や一部の大型株によって押し上げられたものなのかは、慎重に見極める必要があります。
動画では、日本の景気先行指数、住宅着工、機械受注、企業業績、株主還元、円安、原油価格、長期金利など、さまざまな指標を使いながら、ここからの日本株市場を分析しています。
結論から見ると、日本経済や企業業績は全体として悪くありません。2027年3月期に向けた企業業績も増収増益が見込まれており、日本株を支える材料は残っています。
一方で、設備投資や住宅建設には弱さが見られ、株価上昇の一部は金融環境や円安、AI・半導体関連株に依存しています。さらに、株主還元を支えてきたコーポレートガバナンス改革が後退した場合、外国人投資家の日本株に対する評価が大きく変わる可能性もあります。
日本株は全面的に強気とも、すでに上昇相場が終わったとも言い切れない、難しい局面に入っていると考えられます。
日本の景気先行指数は上昇している
まず動画で取り上げられたのが、日本の景気先行指数です。
景気先行指数とは、今後の景気が良くなるのか、それとも悪くなるのかを予測するための指標です。現在の景気を示す一致指数とは異なり、数カ月先の経済活動を先取りする性格があります。
動画によると、日本の景気先行指数は2026年に入ってから上昇しています。
景気先行指数が上がっているということは、基本的には今後の景気改善が期待されているという意味です。日本株が大きく上昇した背景にも、この景気先行指数の改善が影響している可能性があります。
一致指数も上昇しており、雇用環境や鉱工業生産など、現在の経済活動にも改善が見られます。そのため、日本経済全体がすでに深刻な景気後退に入っているという状況ではありません。
ただし、指数の中身を詳しく確認すると、注意すべき点も浮かび上がってきます。
景気改善は金融市場に支えられている面が大きい
動画では、景気先行指数を構成する項目についても詳しく解説しています。
景気先行指数は、おおむね10項目程度の経済指標から構成されています。そのうち、金融市場に関係する項目が約3つ、実体経済に関係する項目が約7つ含まれています。
金融関連の項目としては、主に次のようなものがあります。
- 実質マネーサプライ
- イールドスプレッド
- 株価
マネーサプライとは、世の中にどれくらいのお金が供給されているかを示す指標です。お金の供給量が増えれば、企業や個人がお金を使いやすくなり、経済活動や資産価格を押し上げる要因になります。
イールドスプレッドとは、一般的には長期金利と短期金利の差を指します。将来の景気拡大が期待される局面では長期金利が上がりやすく、金利差が拡大することがあります。
動画では、景気先行指数の上昇に対し、株価やイールドスプレッドといった金融関連項目の寄与が大きいと指摘されています。
つまり、日本の景気先行指数は改善しているものの、実体経済が全面的に力強く回復しているというよりは、株価上昇や金融環境に引っ張られている面が大きいということです。
日本では積極財政への期待が続いているほか、実質的には金融緩和的な環境も残っています。こうした金融面の追い風が、株価や景気指標を押し上げていると考えられます。
実体経済では住宅着工と機械受注が弱い
金融関連の指標が強い一方で、実体経済に関係する項目の中には、明確にマイナスとなっているものがあります。
動画で特に取り上げられたのが、次の2つです。
- 新設住宅着工戸数
- 新規機械受注
この2つは、日本経済の先行きを考えるうえで重要な指標です。
新設住宅着工戸数が減少する理由
新設住宅着工戸数は、新しく建設が始まった住宅の戸数を示します。
住宅建設が増えれば、建設会社だけでなく、住宅設備、木材、鉄鋼、家具、家電、金融など幅広い産業に需要が生まれます。そのため、住宅着工は景気への波及効果が大きい指標です。
しかし、日本では建築資材の価格上昇や人手不足が続いています。
木材、鉄鋼、コンクリート、住宅設備などの価格が上昇し、住宅を建てる費用が高くなっています。さらに、建設現場で働く職人や作業員も不足しており、建てたくても計画通りに工事を進められないケースが増えています。
不動産価格そのものは上昇していても、新築住宅の供給が大きく増えているとは限りません。
中古住宅や中古マンションの価格が上がったり、既存物件の売買が活発になったりしている一方、新たに住宅を建設する動きには弱さが見られます。
この場合、土地を保有する不動産会社よりも、実際に住宅や建物を造る建設会社の方が、人件費や資材価格の上昇による影響を受けやすくなります。
新規機械受注の減少が示すもの
新規機械受注は、企業が将来の生産に備えて、機械や設備をどれくらい発注しているかを示す指標です。
機械受注が増えている場合、企業は今後の需要拡大を見込み、工場や設備への投資を積極化していると考えられます。
反対に、機械受注が減っている場合は、企業が将来に慎重になり、設備投資を控えている可能性があります。
動画では、設備投資が弱い背景として、地政学リスク、円安、インフレなどが挙げられています。
原材料価格やエネルギー価格が上昇している状況では、新たな工場や設備に大きな資金を投入しても、将来的に十分な利益を得られるか判断しにくくなります。
そのため、足元の業績が良い企業でも、すぐに設備投資を増やすのではなく、しばらく様子を見る姿勢を取ることがあります。
AI・半導体関連でも設備投資には慎重さがある
設備投資に慎重な傾向は、AIや半導体関連企業でも見られると動画では説明されています。
AI関連需要の拡大により、メモリーや半導体の需要は強く、足元の業績が好調な企業もあります。
しかし、業績が良いからといって、すぐに大規模な設備増強に動くとは限りません。
半導体工場やメモリー工場を新設するには、巨額の資金と長い時間が必要です。需要の拡大が一時的なものだった場合、完成した頃には供給過剰になっている可能性もあります。
そのため、企業は現在の好業績を確認しながらも、生産能力の増強については慎重になっています。
AI関連企業の株価が上昇していても、設備投資の動きまで全面的に強くなっているわけではないという点には注意が必要です。
日本経済は悪くないが業種ごとの差が大きい
これらの指標をまとめると、日本経済全体が悪いわけではありません。
製造業、金融、雇用、鉱工業生産、企業利益などには、一定の強さが見られます。
一方で、住宅建設や設備投資には弱さがあります。
日本経済はすべての分野が同じ方向に動いているのではなく、業種ごとの差が大きくなっている状況です。
金融や一部の製造業は好調でも、建設業や設備投資関連企業にとっては、資材高、人件費上昇、金利上昇が重荷になります。
投資家は「日本経済が良いか悪いか」という単純な見方ではなく、どの分野が強く、どの分野に弱さがあるのかを確認する必要があります。
四季報夏号が重要な理由
動画では、ここからの日本株を考えるうえで、会社四季報の夏号が重要になると説明しています。
会社四季報は、国内上場企業の業績、財務、事業内容、株主構成、今後の見通しなどをまとめた資料です。
春号までは、多くの3月期決算企業について、2026年3月期が今期として扱われていました。
しかし、夏号になると、多くの企業の決算発表が反映され、今期が2027年3月期に切り替わります。さらに、2028年3月期の予想数字も新たに掲載されます。
つまり、夏号は企業業績の基準年度が大きく更新されるタイミングです。
投資家にとっては、過去の実績ではなく、これからの企業業績を比較できる重要な号になります。
2027年3月期は増収増益が予想されている
動画で紹介された市場別の業績集計によると、日本企業全体の売上高は、前期から今期にかけて伸びが加速する見通しです。
前期の増収率は約3.8%でしたが、今期は約5.7%の増収が予想されています。来期は約4.3%へやや鈍化するものの、増収そのものは続く予想です。
営業利益についても、前期は約7.2%の増益、今期は約11%の増益、来期は約11.6%の増益が見込まれています。
売上高、営業利益ともに増加が予想されており、企業業績全体は悪くありません。
特に、現在の株式市場が意識するのは、主に2027年3月期の業績です。
来期の数字が多少鈍化していても、現時点ではまだ本格的に2028年3月期の業績を織り込む段階ではありません。
そのため、2027年3月期の増収増益予想は、日本株を支える材料になります。
2026年前半に日本株が大きく上昇した背景には、円安や金融環境だけでなく、企業業績の改善もあったと考えられます。
プライム市場は引き続き安定
東証プライム市場についても、全体と同様に増収増益が予想されています。
プライム市場には、日本を代表する大型企業が多く上場しています。
海外売上高の比率が高い企業も多いため、円安が進むと、海外で得た利益を円に換算した際の金額が増えます。
そのため、自動車、機械、電機、商社などの輸出型企業にとって、円安は業績を押し上げる要因になることがあります。
ただし、原材料やエネルギーを海外から輸入している企業にとっては、円安がコスト増につながります。
同じプライム市場の企業でも、円安が追い風になる企業と逆風になる企業に分かれます。
グロース市場は成長率の鈍化に注意
旧マザーズ市場に相当する東証グロース市場については、今期の成長率は高いものの、来期にかけて増収率や増益率が鈍化する見通しが示されています。
動画で紹介された数字では、前期の増収率は約17.3%、今期は約27.9%まで上昇するものの、来期は大きく低下する予想です。
利益についても、前期は約54.3%の増益、今期は約51.4%の増益、来期は約37.7%の増益と、増益そのものは続くものの、成長率は低下しています。
グロース企業は、現在の利益よりも将来の成長期待によって株価が評価される傾向があります。
そのため、売上高や利益の成長率が鈍化すると、実際には増収増益であっても、株価が下落することがあります。
金利上昇もグロース株には逆風です。
将来得られる利益の現在価値が低く評価されやすくなるため、金利が上がる局面では、高い期待を織り込んでいる成長株ほど売られやすくなります。
次に注目される可能性があるスタンダード市場
動画では、プライム市場の次に注目される可能性がある市場として、東証スタンダード市場が挙げられています。
スタンダード市場の売上高は、前期が約5.2%増、今期が約5.3%増、来期が約4.5%増と、比較的安定しています。
一方、営業利益は、前期が約17%増だったのに対し、今期は約4.1%増まで鈍化し、来期は約10.8%増へ再び回復する予想です。
今期の利益成長は弱いものの、来期の回復期待が強まれば、秋から冬にかけてスタンダード市場の銘柄が物色される可能性があります。
株式市場は、現在の業績だけでなく、半年先や1年先の変化を先取りします。
今期の利益が弱くても、来期に回復する企業は、業績回復期待から早い段階で買われることがあります。
増配と連続増配が日本株を支えている
動画では、四季報に掲載される企業ランキングにも触れています。
上位には、連続増配や増配を行う企業が多く入っていると説明されています。
増配とは、企業が株主に支払う1株当たりの配当金を増やすことです。
連続増配は、複数年にわたって配当金を増やし続けることを意味します。
増配を続けられる企業は、利益やキャッシュフローが安定している可能性が高く、長期投資家から評価されやすくなります。
近年の日本企業は、配当の増額だけでなく、自社株買いも積極化しています。
自社株買いとは、企業が市場から自社の株式を買い戻すことです。発行済み株式数が減ることで、1株当たり利益が増加し、株価を押し上げる要因になる場合があります。
増配や自社株買いなどの株主還元は、日本株市場を支える重要な材料です。
コーポレートガバナンス改革の後退が最大のリスク
動画で強く警戒されていたのが、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの修正です。
コーポレートガバナンスとは、企業経営を監督し、株主や社会に対して適切な経営を行わせる仕組みです。
スチュワードシップ・コードは、機関投資家に対し、投資先企業との対話や議決権行使を通じて、企業価値の向上を促すことを求める原則です。
これらの改革により、日本企業は資本効率、株価、配当、自社株買いなどを以前よりも意識するようになりました。
株価純資産倍率が低い企業に対しては、東京証券取引所から資本コストや株価を意識した経営が求められています。
また、アクティビスト投資家が企業に対し、余剰資金の活用、事業売却、増配、自社株買い、経営改革などを求める動きも活発になっています。
経営者側から見ると、アクティビスト投資家からの要求は負担になります。
しかし、株式会社では株主が資本の提供者であり、経営者は株主から経営を任されている立場です。
企業価値や株主利益を意識した経営を求めることは、資本主義の基本的な仕組みともいえます。
動画では、企業側の要望を受けてガバナンス改革が後退した場合、日本株市場にとって非常に大きな悪材料になると指摘しています。
特に外国人投資家が「日本は株主重視の経営をやめる」と受け取れば、日本株への資金流入が止まり、海外投資家の売りにつながる可能性があります。
金融緩和だけでなく、企業統治改革や働き方改革も、日本企業や日本株の評価を変えた重要な要素です。
これらが後退するかどうかは、今後の日本株市場を考えるうえで重要なポイントになります。
業績がピークアウトした企業も増えている
四季報春号と夏号を比較すると、業績がピークを打って反落したと判断される企業数が増えていると動画では説明されています。
春号では約72社だったものが、夏号では約186社に増加しています。
背景として考えられるのが、地政学リスクや原油価格、原材料価格の上昇です。
中東情勢が不安定になれば、原油価格や海上輸送費が上昇する可能性があります。
原油価格の上昇は、電力、ガス、物流、化学、航空、運輸、食品など、幅広い業種のコストを押し上げます。
企業が販売価格へ十分に転嫁できなければ、売上高が増えても利益率は低下します。
日本企業全体では増収増益が見込まれていても、個別企業では業績が悪化する銘柄が増えている点には注意が必要です。
ここからの相場では、指数全体よりも企業ごとの業績差が株価に反映されやすくなる可能性があります。
日経平均株価は上値の重さが確認された
動画では、日経平均株価のチャートについても解説しています。
日経平均株価は7万円台まで上昇しましたが、7万3000円手前で強い売りが入り、その後は上値の重い展開になりました。
8万円を目指すシナリオは一度後退し、しばらくは7万円前後の価格帯でもみ合う可能性があるとしています。
動画内では、おおむね6万1000円から7万1000円程度のゾーンが意識されています。
株価が高値を更新した後、上値で強い売りが出た場合、その価格帯には利益確定売りや戻り売りが出やすくなります。
7万円を超える水準では、割高感や過熱感を警戒する投資家も増えたと考えられます。
移動平均線が下値支持として機能
直近の下落局面では、日経平均株価が50日移動平均線を一度割り込んだ後、100日移動平均線付近で下げ止まったと解説されています。
移動平均線は、一定期間の平均株価を線で示したものです。
50日移動平均線は中期的なトレンド、100日移動平均線はより長めのトレンドを確認するために使われます。
株価が移動平均線付近で反発した場合、その水準が投資家から下値支持として意識されている可能性があります。
ただし、移動平均線は必ず株価を止めるものではありません。
今後、100日移動平均線を明確に下回れば、調整が長引く可能性もあります。
上昇後半はAI・半導体株への依存が大きかった
日経平均株価が5万円台にあった頃は、比較的多くの銘柄が指数上昇に貢献していました。
しかし、6万円台から7万円台へ急上昇した局面では、AIや半導体関連の大型株が指数を強く押し上げていたと動画では説明されています。
日経平均株価は、株価の高い銘柄の影響を受けやすい株価平均型の指数です。
そのため、一部の値がさ株が大きく上昇すると、日本株全体が上昇しているように見えることがあります。
AI・半導体関連株の上昇が一服すれば、企業業績全体が悪化していなくても、日経平均株価は下落しやすくなります。
ここから日本株を見る際には、日経平均株価だけでなく、TOPIXや中小型株指数も確認する必要があります。
日経平均は強いが中小型株は弱い
年初来のパフォーマンスでは、日経平均株価が他の主要指数を大きく上回っていると説明されています。
TOPIXや大型株指数は一定の上昇を示しているものの、中小型株は相対的に弱い状況です。
中小型株は大型株に比べて国内景気の影響を受けやすく、資金調達環境や金利上昇にも弱い傾向があります。
海外投資家の資金は、流動性が高く、売買しやすい大型株に入りやすいため、円安や海外資金流入が相場を押し上げる局面では、大型株が優位になりやすくなります。
一方、中小型株は個人投資家の売買動向に左右されやすい市場です。
動画では、大型IPOへの資金集中によって、中小型株市場から資金が吸収された可能性にも触れています。
時価総額が比較的小さい市場では、数千億円規模の資金移動でも、株価全体に大きな影響が出ることがあります。
中小型株相場が本格的に復活するには、個人投資家の資金回帰や金利上昇の一服、業績回復などが必要になると考えられます。
ドル円は163円台まで円安が進行
日本株と並んで重要なテーマが円安です。
動画では、ドル円相場が1ドル163円台まで上昇した状況を取り上げています。
ドル円が上昇するということは、円の価値がドルに対して下落していることを意味します。
円安には、輸出企業の円換算利益を増やし、株価を押し上げる効果があります。
一方で、原油、天然ガス、食品、原材料、部品などの輸入価格が上昇するため、家計や内需企業にとっては負担になります。
現在の円安には、主に2つの要因があると動画では説明しています。
政府方針への市場解釈が円安を招いた可能性
1つ目の要因は、政府の経済財政運営に対する市場の受け止め方です。
動画では、政府の骨太の方針が、日本銀行に対して追加利上げを抑制するメッセージとして市場に解釈された可能性があるとしています。
実際に政府が利上げを明確に否定したかどうかではなく、市場参加者がどのように受け取ったかが重要です。
市場が「政府はこれ以上の利上げを望んでいない」と判断すれば、日本の金利が大きく上がる可能性は低いと考えます。
一方、米国の金利が高い状態が続けば、投資家は金利の低い円を売り、金利の高いドルを保有しようとします。
この金利差が、円安・ドル高を進める要因になります。
原油価格の上昇も円安要因
2つ目の要因は、原油価格の上昇です。
原油は一般的に米ドルで取引されるため、原油価格が上昇すると、原油輸入国はより多くのドルを必要とします。
日本はエネルギー資源の多くを海外から輸入しているため、原油価格の上昇は貿易収支の悪化につながりやすく、円売り要因になります。
動画では、イランと米国の関係悪化など、中東の地政学リスクにも触れています。
中東情勢が緊迫すれば、原油の供給不安が高まり、価格が上昇する可能性があります。
これまで原油価格を抑えてきた戦略備蓄の放出も、永遠に続けることはできません。
さらに、中国が原油輸入を増やし始めれば、需要面からも原油価格に上昇圧力がかかります。
円安と原油高が同時に進めば、日本にとっては輸入価格の上昇がさらに深刻になります。
為替介入の効果は限定的になる可能性
円安が急速に進んだ場合、政府と日本銀行は為替介入を行うことがあります。
円買い介入では、政府が保有しているドル資産を売り、その代金で円を買います。
一時的には円高方向へ相場を動かせますが、日米金利差や原油高など、円安の根本原因が変わらなければ、効果は長続きしません。
動画では、過去の介入に約11.7兆円から12兆円規模の資金を投入しても、円安の流れを反転できなかったと説明しています。
追加で大規模な介入を行っても、再び円安方向へ戻る可能性があります。
さらに、日本が米国債を売却して介入資金を用意すれば、米国債価格の下落と米国長期金利の上昇につながるおそれがあります。
米国にとっても、日本が大量に米国債を売却することは望ましくありません。
そのため、日本側も米国側も簡単に大規模介入を進められない難しい状況にあります。
日本銀行のQTと長期金利上昇
動画では、日本銀行がバランスシートを縮小するQTを進めていることにも触れています。
QTとは、量的引き締めを意味します。
日本銀行はこれまで大量の国債を購入し、長期金利の上昇を抑えてきました。
しかし、国債の購入量を減らせば、市場における国債の買い手が少なくなります。
国債価格が下落すると、国債利回りは上昇します。
つまり、日本銀行が国債購入を減らすことによって、日本の長期金利が上がりやすくなります。
日本銀行が追加利上げを見送ったとしても、QTを続ければ長期金利は上昇する可能性があります。
一方、QTを完全にやめれば、市場から再び金融緩和に戻ったと受け止められ、円安が加速する可能性があります。
日本銀行は、金利上昇と円安の間で難しい判断を迫られています。
金利上昇は住宅や企業融資に影響
長期金利が上昇すると、さまざまな借入金利に影響します。
住宅ローン金利が上がれば、住宅購入者の返済負担が増えます。
企業向け融資や商業用不動産ローンの金利も上昇し、企業の設備投資や不動産投資を抑える要因になります。
住宅着工や機械受注が弱い背景には、資材高や人手不足だけでなく、金利上昇への警戒もあると考えられます。
一方、銀行にとっては、貸出金利の上昇によって利ざやが改善する可能性があります。
動画では、三菱UFJフィナンシャル・グループなど銀行株の時価総額が大きくなっていることを挙げ、日本が金利上昇局面に入ったことを象徴していると説明しています。
金利上昇は、銀行には追い風となる一方、住宅、不動産、建設、グロース株には逆風になりやすいという特徴があります。
GPIFの資産配分変更が米国金利に影響する可能性
日本の長期金利上昇を抑えるため、年金積立金管理運用独立行政法人であるGPIFなどの機関投資家に、日本国債の購入を増やすよう求める可能性についても動画では触れています。
GPIFが日本国債の保有比率を増やす場合、資産全体の配分を維持するため、外国債券や外国株式の比率を下げる必要が出てきます。
仮に米国債の購入を減らしたり、保有している米国債を売却したりすれば、米国債価格の下落と米国長期金利の上昇につながる可能性があります。
米国長期金利が上昇すると、NASDAQ市場のAI株やグロース株には大きな逆風になります。
日本国内の金利を安定させるための政策が、米国市場に影響を及ぼす可能性があるということです。
日本と米国の金融市場は、国債、為替、株式を通じて密接につながっています。
単純に日本国内だけを見て政策を決めることが難しくなっています。
1ドル160円の防衛ラインは突破された
動画では、1ドル160円が重要な防衛ラインだったという見方についても説明しています。
日本政府や日本銀行は、160円を超える円安を防ぐため、利上げや為替介入を行ったものの、結果的に円安の流れを止められなかったとしています。
重要なのは、「160円が防衛ラインではなかった」のではなく、「防衛しようとしたが守れなかった」という点です。
金利差、原油価格、財政政策、市場の期待など、複数の円安要因が強すぎたため、政策対応の効果が限定的だったと考えられます。
今後も円安が続く場合、政府や日本銀行に残された政策手段は限られます。
利上げを急げば、住宅ローンや企業融資、国債費への負担が増えます。
為替介入を拡大すれば、米国債市場への悪影響が懸念されます。
金融緩和を続ければ、円安や物価高が進む可能性があります。
どの選択肢にも大きな副作用があります。
円相場のニューノーマルが切り上がる可能性
動画では、円相場の長期的な水準が変化している可能性についても言及しています。
これまでは1ドル150円を中心に、上下10円程度の範囲で動くことが新しい通常状態、いわゆるニューノーマルだと考えられていました。
しかし、現在は中心水準が160円へ切り上がり、1ドル150円から170円程度の範囲で動く可能性があるとしています。
さらに、長期的には中心水準が170円、180円へと段階的に円安方向へ移動し、10年後には1ドル200円が珍しくない世界になる可能性も示されています。
これはあくまで動画内で示された長期シナリオであり、必ず実現する予測ではありません。
為替相場は、日米金利差、物価、貿易収支、財政政策、景気、地政学リスクなど、多数の要因で変動します。
ただし、過去のような1ドル100円前後を当然とする感覚から、日本企業や家計が転換を迫られていることは確かです。
円安は日本株にとって本当にプラスなのか
円安は、海外売上高の大きい輸出企業にはプラスになりやすい一方、日本経済全体にとって無条件の好材料ではありません。
輸入物価が上昇すれば、家計の実質購買力が低下します。
食品、電気、ガス、ガソリン、日用品などの価格が上がり、消費者が自由に使えるお金が減ります。
国内消費が弱くなれば、小売、外食、サービス業などの業績に影響します。
企業側も原材料費や物流費、人件費の上昇に直面します。
販売価格へ転嫁できる企業は利益を維持できますが、価格競争が激しい業界では利益率が悪化します。
株価指数が上昇していても、国民生活が豊かになっているとは限りません。
日本株を評価する際には、円安による企業利益の増加だけでなく、国内消費や実質賃金への影響も見る必要があります。
ここからの日本株は銘柄選別が重要になる
動画全体の内容を整理すると、日本株市場は業績面では一定の強さを保っています。
2027年3月期は増収増益が予想されており、増配や自社株買いなどの株主還元も続いています。
円安は輸出企業の業績を押し上げる可能性があり、銀行株には金利上昇が追い風になります。
一方で、住宅着工や設備投資は弱く、建設、不動産、グロース株には逆風が残ります。
日経平均株価の上昇も、すべての銘柄が均等に上がった結果ではなく、AI・半導体関連の大型株に支えられた面が大きい状況です。
今後は、指数を買えば幅広い銘柄が上昇する全面高相場よりも、業績、株主還元、価格転嫁力、財務体質などによって企業ごとの差が広がる可能性があります。
特に確認したいのは、次のような点です。
- 円安が利益増加につながる企業か
- 原材料高を販売価格へ転嫁できるか
- 借入金が多く金利上昇に弱くないか
- 増配や自社株買いを継続できるか
- 設備投資を回収できるだけの需要があるか
- 来期の利益成長が見込まれているか
株価が上昇しているという理由だけで買うのではなく、その上昇を支える業績や財務を確認することが重要です。
今後の日本株を見るうえで重要なポイント
ここから日本株を判断する際には、主に4つのポイントが重要になります。
企業業績が予想通り伸びるか
現在は増収増益が予想されていますが、原油高、円安、金利上昇、地政学リスクによって業績予想が下方修正される可能性があります。
特に、売上高が増えていても、原材料費や人件費の上昇によって利益率が低下していないかを確認する必要があります。
株主還元が続くか
増配や自社株買いは、日本株を支える大きな材料です。
企業が現金をため込むのではなく、株主へ還元する姿勢を続けるかが重要です。
同時に、コーポレートガバナンス改革が後退しないかも注目されます。
円安と原油高がどこまで進むか
円安は輸出企業の利益を押し上げますが、輸入物価を上昇させます。
原油高が重なれば、家計や内需企業への負担はさらに大きくなります。
円安による利益増加と、物価高による消費減少のどちらが強く出るかを見極める必要があります。
金利上昇が企業や家計に与える影響
銀行には追い風でも、住宅、不動産、建設、グロース企業には逆風になります。
日本銀行の利上げだけでなく、国債購入減額による長期金利上昇にも注意が必要です。
まとめ
動画『四季報から見るここからの日本』では、景気先行指数、四季報の業績予想、株主還元、円安、原油価格、長期金利などを通じて、今後の日本株市場を分析しています。
日本の景気先行指数は上昇しており、雇用や鉱工業生産にも一定の改善が見られます。
ただし、先行指数の上昇は株価やイールドスプレッドなど、金融関連項目に支えられている面が大きく、実体経済が全面的に強いわけではありません。
住宅着工と機械受注は弱く、資材高、人手不足、円安、インフレ、地政学リスクによって、住宅建設や設備投資が抑えられています。
一方、四季報の業績予想では、2027年3月期の日本企業は増収増益が見込まれています。
増配や自社株買いも続いており、企業業績と株主還元は日本株を支える重要な材料です。
ただし、コーポレートガバナンス改革が後退すれば、外国人投資家の日本株に対する評価が変わる可能性があります。
日経平均株価は7万円台まで上昇したものの、7万3000円手前では強い売りが入りました。
上昇後半はAI・半導体関連の大型株に依存しており、中小型株は相対的に弱い状況です。
ドル円相場は163円台まで円安が進み、政府方針への市場の解釈、日米金利差、原油高、中東情勢などが円安要因になっています。
為替介入や利上げにも大きな副作用があり、政府と日本銀行が円安を簡単に止めることは難しい状況です。
今後の日本株は、指数全体が一方向に上昇する相場ではなく、業績や財務、株主還元、円安耐性、価格転嫁力によって銘柄ごとの差が広がる可能性があります。
日本株全体が増収増益だから安心と考えるのではなく、どの企業が円安や金利上昇の恩恵を受け、どの企業がコスト増の影響を受けるのかを丁寧に見極めることが重要です。


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